お婆さんを待つ。
自分でも予想外だ。
四国なんぞに来てしまった。
…雨なのに…。
でもね、来ちゃったもんはしょうがないよね。
なんというか、妙にふっ切れた気分だ。
徳島港から徳島駅前をへて、
鳴戸、さぬき市と来て、
香川県の高松まで一気に走る。
雨がちの土曜日に遠出する人は少ないのか、
海岸沿いを走る国道11号は空いている。
流れにのってフワフワと、
波に乗るようにしてバイクは進む。
あ、さぬき市でセルフうどん屋に寄ったのは言うまでもない。
グルメ紀行に興味のない俺を毎回必ず引き寄せる讃岐のうどんは本当に素晴らしい。
セルフのかけうどん大315円が、
よそで食うどのうどんよりうまいとは…。
うどんを語ると長いので割愛し、高松。
高松という街は、駅前こそ寂しいもんだが、
駅からちょっと離れた位置に、
やたら長くて、ムダに分岐の多い、
街の規模からして不可解なレベルの大アーケード街が存在するのであった。
その異常に長いアーケードを歩き回ること1時間あまり、
ついに、Tシャツを広げられそうな場所をみつけた。
ここは背後が閉店した店ではなく駐輪場なので、
公の機関以外からクレームが来る可能性は低い。
ここなら雨もしのげるし、もうやるしか!!
…と思って広げてみるも、
現実はなかなか厳しい。
そういえばもう3日間Tシャツが売れてないので、
売れる時がどんな感じなのかすら忘れつつある。
まぁ、それでもたまに引き合いはある。
値段は時々聞かれるし、
絶対買わないだろうなというおじさんはちょくちょくのぞいていくし、
今度は妙なおばさんが現れて勝手に営業もしてくれる。
いかにも水商売っぽいこのおばさん。
どう考えても逆効果ですよ…。
ああそうだ、
「この絵を見ただけで元気が出たわ。ありがとう。」
そう言ってくれたおばさんもいた。
あれは嬉しかったなあ。
…そんなこんなで時は過ぎ。
夕方なんだが雨なのでただ蒸し暑い。
そこに、ひょっこりと一人のお婆さんが現れた。
ダイソーで買ったビスケットを食ってた俺だったが、
そのお婆さんがあまりにTシャツをジッと見ているので、
ビスケットはコソコソとしまう。
お婆さんは、
俺が一昨日東大寺で描いたTシャツが、
非常に気に入ったようなのだ。
とにかくこれはいい、とやたら褒めてくれる。
ハッキリ言って、自分のTシャツをここまで褒められたのは初めてだ。
彼女はもう80に手が届くという年齢らしいが非常にキビキビとしていて、
歳は取ってもモウロクしているような感じがない。
大体、そんな歳の人が、
一般人でもあまり見向きもしないTシャツ売りに目を向けてくれるとは。
彼女はこのTシャツを非常に気に入ってくれているが、
残念ながら今は持ち合わせがないという。
自分のTシャツをここまで気に入ってもらって、
ここで安くしなけりゃ人間終了だ。
すかさず2500円に値下げするも、
彼女はどうやら本当に持ち合わせがないらしい。
「家が近くだから、一旦帰ってお金を探してみるわ。
もし戻ってこなかったら、
その時はごめんなさい。」
お婆さんはそう言い残して、
少し太った身体をユラユラと揺らしつつこの場を去っていった。
俺は、彼女を待ってみることにした。
金はともかく、
この絵をそこまで気に入ってもらえたのなら、
やはりこのTシャツは、彼女の元に渡ってほしい。
今日は他には売れそうもないしな。
…30分後ぐらいだろうか。
彼女は、戻ってきた。
印象に残るいい笑顔で。
2500円を頂き、Tシャツを渡す。
彼女は本当に喜んでくれている。
「若い人に元気をもらっちゃったわ。」
などと言いつつ。
そうそう、この80間近の彼女、
始めからこのTシャツを着るつもりで選んでいたところがすごい。
今まで買ってくれた人には家に飾ると言ってくれた人が多かったのだが。
服のコーディネートまで考えて俺のTシャツを買うなんて、
彼女は80間近でもやはり、
女であるらしい。
あー。
よかったよ。
この四国で、高松で、
俺のTシャツを、いい人に買ってもらえた。
来た意味があったってもんだ…。
四国なんぞに来てしまった。
…雨なのに…。
でもね、来ちゃったもんはしょうがないよね。
なんというか、妙にふっ切れた気分だ。
徳島港から徳島駅前をへて、
鳴戸、さぬき市と来て、
香川県の高松まで一気に走る。
雨がちの土曜日に遠出する人は少ないのか、
海岸沿いを走る国道11号は空いている。
流れにのってフワフワと、
波に乗るようにしてバイクは進む。
あ、さぬき市でセルフうどん屋に寄ったのは言うまでもない。
グルメ紀行に興味のない俺を毎回必ず引き寄せる讃岐のうどんは本当に素晴らしい。
セルフのかけうどん大315円が、
よそで食うどのうどんよりうまいとは…。
うどんを語ると長いので割愛し、高松。
高松という街は、駅前こそ寂しいもんだが、
駅からちょっと離れた位置に、
やたら長くて、ムダに分岐の多い、
街の規模からして不可解なレベルの大アーケード街が存在するのであった。
その異常に長いアーケードを歩き回ること1時間あまり、
ついに、Tシャツを広げられそうな場所をみつけた。
ここは背後が閉店した店ではなく駐輪場なので、
公の機関以外からクレームが来る可能性は低い。
ここなら雨もしのげるし、もうやるしか!!
…と思って広げてみるも、
現実はなかなか厳しい。
そういえばもう3日間Tシャツが売れてないので、
売れる時がどんな感じなのかすら忘れつつある。
まぁ、それでもたまに引き合いはある。
値段は時々聞かれるし、
絶対買わないだろうなというおじさんはちょくちょくのぞいていくし、
今度は妙なおばさんが現れて勝手に営業もしてくれる。
いかにも水商売っぽいこのおばさん。
どう考えても逆効果ですよ…。
ああそうだ、
「この絵を見ただけで元気が出たわ。ありがとう。」
そう言ってくれたおばさんもいた。
あれは嬉しかったなあ。
…そんなこんなで時は過ぎ。
夕方なんだが雨なのでただ蒸し暑い。
そこに、ひょっこりと一人のお婆さんが現れた。
ダイソーで買ったビスケットを食ってた俺だったが、
そのお婆さんがあまりにTシャツをジッと見ているので、
ビスケットはコソコソとしまう。
お婆さんは、
俺が一昨日東大寺で描いたTシャツが、
非常に気に入ったようなのだ。
とにかくこれはいい、とやたら褒めてくれる。
ハッキリ言って、自分のTシャツをここまで褒められたのは初めてだ。
彼女はもう80に手が届くという年齢らしいが非常にキビキビとしていて、
歳は取ってもモウロクしているような感じがない。
大体、そんな歳の人が、
一般人でもあまり見向きもしないTシャツ売りに目を向けてくれるとは。
彼女はこのTシャツを非常に気に入ってくれているが、
残念ながら今は持ち合わせがないという。
自分のTシャツをここまで気に入ってもらって、
ここで安くしなけりゃ人間終了だ。
すかさず2500円に値下げするも、
彼女はどうやら本当に持ち合わせがないらしい。
「家が近くだから、一旦帰ってお金を探してみるわ。
もし戻ってこなかったら、
その時はごめんなさい。」
お婆さんはそう言い残して、
少し太った身体をユラユラと揺らしつつこの場を去っていった。
俺は、彼女を待ってみることにした。
金はともかく、
この絵をそこまで気に入ってもらえたのなら、
やはりこのTシャツは、彼女の元に渡ってほしい。
今日は他には売れそうもないしな。
…30分後ぐらいだろうか。
彼女は、戻ってきた。
印象に残るいい笑顔で。
2500円を頂き、Tシャツを渡す。
彼女は本当に喜んでくれている。
「若い人に元気をもらっちゃったわ。」
などと言いつつ。
そうそう、この80間近の彼女、
始めからこのTシャツを着るつもりで選んでいたところがすごい。
今まで買ってくれた人には家に飾ると言ってくれた人が多かったのだが。
服のコーディネートまで考えて俺のTシャツを買うなんて、
彼女は80間近でもやはり、
女であるらしい。
あー。
よかったよ。
この四国で、高松で、
俺のTシャツを、いい人に買ってもらえた。
来た意味があったってもんだ…。