それぞれの選択

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小中学時代の同級生たちが、
今やそれぞれの道を歩いているのは当たり前のことではある。

俺は今まで、そいつらのことにたいして関心がなかったのか、
ほとんど行方を知りもしなかった。
でも今は、いろんなヤツらに会って、話を聞いてみたいのだ。

地元で西川がやっている居酒屋で、タッキンと飲む。
この西川の店は小さいが、
いつ来てもわりと繁盛している。
中学の頃はちょいと不良の道に足を突っ込みかけてたくせに、
今となってはどっしりとした居酒屋の大将だ。

こいつの店では何度かメシを食ったことがあるが、
今回に至ってはじめて、
俺はこいつの料理がかなりうまいことを知った。
いや、今までもうまいとは思ってたハズなんだが、
なぜか今回は、特にそう感じる。
よくわからんが、肉や野菜なんかのいい素材を、
シンプルに味つけするのがこいつのセンスというか腕前っぽいのだ。
俺は今まで何を食って、
何を味わってたんだろうと、不思議に思う。

タッキンのほうは相変わらずのアホっぷりかと思いきや、
安定している今のバイク屋の営業を辞め、
東京に打って出る気があると聞き驚く。
案の定女がらみのようだが、
俺はこいつのことを走るのをやめると死ぬタイプだと思っているので、
かなり無責任に東京進出を応援しておいた。

翌日の昼には、
同じく同級生の桜井と会う。
こいつとは数年前、
タッキンと3人で謎の東北ツーリングをして以来だったろうか。
今では結婚して娘がおり、
言語聴覚師というやりがいのある職を得ている。

こいつは家族を本当に愛していて、
今では家族のいない時代の自分などがもうまったく信じられんぐらいであるらしい。
こいつにとっては、
家族の存在こそが自分の全てなのだった。
まったくその家族というものは、
ヤツにとって絶対必要だからこそ形成されたのだろう。
話を聞いていると、そう思わずにはいられない。
今の俺には正直かなり理解不能な世界ではあるが、
こいつにとって、その世界はとても似合っているな、とは思う。

親子Tシャツを描いてくれというので、
後日の宿題にすることにした。
代金は、異例の自由金額方式。
こいつと俺との間では、
それが1番自然であるような気もする。
そのうち送りつけるから、
なんとなく待つように。

その後、時間があったので、
思い出したように神戸で出店する。
売るのはわりとどうでもよくて、
久しぶりにTシャツを描きたかったんだ。
負け惜しみではない。

そしてTシャツは描けたんだが、
これがもう、ヤケに疲れた。
絵に体力を吸い取られたみたいで、
ちょっと立てないぐらいにしんどかったのには驚いた。
なんだってんだ。
そのかわり、
俺のこの10年、ヘタすりゃ30年を混ぜ込み、
さらに煮込んだような濃密なTシャツを描けたように思う。
とにかく疲れたけどな…。

夕方になって西宮に移動し、
以前から連絡をくれていた松村さんに会う。

彼とは数年前にオフロードバイクレースでなぜかコンビを組んだことがあり、
その後街で偶然会った時にはなぜか脚を骨折していた。
関係としてはまぁそれぐらいだったのだが、
久々に会って焼鳥屋で話をしていると、
やはり彼の身にも、様々な驚くべきことが起きていたことを知る。

そう、人が生きていれば、
色んなことがあるのは当たり前なんだった。
俺は今回、色々な人物と話をする機会を得て、
そのそれぞれが、物凄いと言っていい特異な人生を歩んでいることを知ったように思う。
平凡な人間なんて、
実はいないのではなかろうか。

今夜は松村さんの家に泊めてもらっている。
写真の妙な模様のTシャツは、確か四国の高松で描いた。
バイクで鉄橋の上を走ってた時に思いついたもんだが、
そんなのは見てもわかるハズがない。
そんな不可思議なTシャツを、
意外なことに松村さんが気に入ってくれたようなので、
ああなるほどと思い、ひょいと進呈した。
これは一宿一飯の恩義なのです。

神戸に来てから、
たくさんの懐かしい顔に会った。
人付き合いがめんどくさくてしょうがなかった俺にしちゃあ、
なかなかの行動力を発揮したもんだ。
それぞれの人間に興味がないとできないことだったと、思う。

この神戸で、
どうしても会っておきたい人は、
あと一人。

明日。