4月3日(土) 今、コペンハーゲンが広い

成田空港近くのネットカフェで朝。

寝坊が気になるのと海外脱出前日で気が昂ぶっているのとで、
ちゃんと眠れたのかどうかよくわからない。
これから10時間以上飛行機に縛りつけられるのだから、
睡眠不足はむしろ歓迎ということにしとこう。

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ネットカフェから最寄の駅まで歩いて向かう途中。
朝っぱらから箱がデカく、重く、そして不審だ。
旅上手さんの計画的スマートな旅立ちには程遠いような気配がしてしょうがない。

アイスランド滞在は何事もなければ4月4日から5月25日までの予定。
今年の桜はこれで見納め、かな。

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はい、成田空港。
大変早く着いたので大変手持ち無沙汰である。
でも、この箱を飛行機に載せるまでは安心できないのだ。
人間よりも荷物のほうが心配な旅はこれが初めてである。

やっぱりムリですなんて言われたらどうしよう。
その時はその場で箱とユニサイクルを解体し、よりコンパクトな梱包にして提出するしかないかなぁ。
それかあれだ、ジャパニーズ土下座かなぁ。

…と言う持ち主の心配をヨソに、
巨大箱は実にアッサリと受け取ってもらえた。
さすがは国際線。懐が広い。

でも自転車は一律1万円ほどの超過料金が掛かると言われたので、それは払う。
一瞬『一輪車は自転車なのか』と言う、
一見複雑だが一般的にどうでもいい問題も心に浮かぶには浮かぶが、
もはや載せてもらえるだけでありがたい気持ちでいっぱいなのでヨシとする。

実はこの時、スカンジナビア航空の美人受付お姉さんに、

「この箱の中身はなんですか?」

と聞かれ、

「一輪車です!」

と元気に答えたら彼女の営業スマイルがしばし固まっていた。

元気よく一輪車と宣言すれば自転車料金を払わなくていいかもと打算したのだが甘かった。


ともかく。
不思議と、乗れた。
飛行機に乗ってしまえばこっちのもんだ。

やったぜ、ユニサイクルと共に国外脱出成功!
後は知らん。

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なんとなく機内食。
微妙な日本食がもうなんかすでにサラバ日本的な雰囲気を醸し出している。

さて、これからコペンハーゲンまで11時間のカンヅメだ。
海外旅行の何がツライってコレよな。

でも今回のスカンジナビア航空、意外にもなかなか快適である。

客数は満員の半分ぐらいで隣の席が空いてて広いし、
トイレも5つぐらいあって安心この上ないし、
機内食のほかにもやたらしょっちゅう飲み物だのなんだのをくれて至れり尽くせり。

機内がちょっと冷えすぎてる感じもするが、俺はこんなこともあろうかと、
周囲の視線に臆することなく防寒ツナギを着っぱなしなのでまぁ耐えられる。
それにしても近くに座ってるあの白人の男、なんでTシャツ一枚で平気なんだ。
彼はきっと白クマの化身で、俺はたぶん熱帯魚の生まれ変わりなのだろうということで手を打つ。

そのうち個人用のテレビで映画も観られるらしいと知り、
このところ話題になっていた『アバター』てのを観る。
俺の周囲でも何人かがそこそこ面白いって言ってたような気がする。

字幕もない英語版だったのでほとんど聞き取れず雰囲気だけだったが、それで充分。

いつものハリウッド映画的価値観でウンザリした。

主人公が途中で正義に目覚め、そして(さっきまで同僚だった)敵をブチ殺す。
いったん『悪』と認定したらドシドシ殺してよし。
戦いのなかで主人公以外の仲間もカッコ良く死んだりするのだが、
そんなことは大して引きずらず大変アッサリしており、
最後はなんといっても大爆発。

とにかく物理的・視覚的に戦争や破壊や殺し合いなどの強力なインパクトが無いことには、
いっさい何も進まないという感じ。
どうも考え方が俺とは根深く違う気がするなぁ。

大自然の力に目覚めたような主人公だが、
それでも結局はバイオレンスなやり方から脱却できていない。
とにかくなんでも善と悪に分けて、力で解決する。

個人的には、ハリウッド映画にありがちなこの手のストーリー展開は実に苦手だ。

でもこの映画は日本でも人気だったハズなので、
俺の感じ方はアメリカはおろか日本でも少数派なのかもしれない。
うむ、ヒマな飛行機の中で考えるにはなかなかいいテーマだ。
とか言いつつほとんどは寝て過ごす。
やはり11時間というのは長い。
このまま30時間ぐらいかけて地球一周してまた成田に着陸するようなフライトに需要はあるだろうか。
それだったら真上に宇宙まで上がって地球が一周してくるのを待って、
真下に下りたほうが安上がりだったりしないだろうか。
結局ボンヤリと考えるのはそんなしょーもないことばかりである。

今はロシア上空あたりにいるらしいが、飛行機ではどうも実感がわかないもんだ。
この飛行機の外が空の上で浮いてて…なんてことが今は普通なのだから、
そのうち宇宙旅行もワープも普通にやってそうな気がするな。
それにしても機内食のザルソバにワサビが付いてきた。
あのたっぷりのワサビを何も知らない外国人客がいかにして食い、
そして何を体験するのかと思うと気が気でならない。がんばってくれ。

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はい、コペンハーゲン着。

実はこれから、
乗り継ぎの都合によりこのデンマークの首都コペンハーゲンで一泊しなければならないのだ。

でもデカ箱と重リュックの2点セットはアイスランドまで自動的に載せ換えて運んでくれるらしいので、
コペンハーゲンでの1日はウエストバッグ1つの超身軽状態でラクラク徒歩観光だぜ。
あの巨大荷物群のことをしばらく忘れていられるのは心身の健康上とてもよろしい。

ところで空港の税関の人、俺がいくら軽装とはいえ一体何を見てるんだか、
なーんにも聞かずにハンコをポンと押して終了。そのままあっさりデンマーク入国。
地元の駅の改札を抜けるかのような超ザルな入国である。

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何この不気味な像。
とにかくコペンハーゲン。
これから約24時間はココに居なければならない。

まずは空港から1時間半ぐらい歩いて市街地まで行く。
コペンハーゲンは普通に小奇麗な街で、なぜかあまり外国という気もしない。

空港を出た時の感触も大して違和感がなく、
あの一歩出た瞬間にやっちゃった感が充満していた某南の島とは趣が根本的に異なる。

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コペンハーゲン市街の観光地っぽい街並み。
ほほぅ。
観光客がいっぱいだ。

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教会だの像だのがたくさんあって、古ーい歴史は感じる。

が。
俺はこの1日だけ滞在するコペンハーゲンという街についての前情報はほとんどなく、
唯一わかっていることといえば、
コペンハーゲン名物ということで有名らしい人魚の像が、
今ちょうど上海万博に持っていかれて不在であるということだけだ。

歴史的建造物に大して興味はないが、
珍しく人魚のいない人魚台座というのはちょっと見てみたい。

というわけで、人魚台座を求めて歩き回るも、これがなかなか見つからない。

コペンハーゲンの街中には地図が少なく、
たまにあってもデンマーク語一辺倒であってどこに人魚があるのやらよくわからない。
観光的配慮よりも雰囲気を重視しているのかもしれないが、
なーんの資料も持ってないボーッとした俺には意外に困難なミッションとなりそうだ。
3時間歩き回っても発見できないとは!

結局、街中のわかりにくーい地図を見てうなっているところで声をかけてくれた、
優しくて可愛い女の子が教えてくれた場所はだいぶ間違っており(それでもコペンっ子か!!)、
ようやく見つけたのは、

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ただの石だった。

想像より海岸に近く、小さく、ありふれた、ただの石。

こんなモンわかるか!!

近くで写真撮ってた金髪のお姉さんが、

「コレよ。コレが人魚なのよ。」

とクールに教えてくれなければ一生認識できなかったような物体。

これが…。

どうりでな…。ここ、何回も通ったのに…。


えーさて。
コペンハーゲン唯一の目的である人魚石をついに発見した俺。
しかし、時間はまだまだある。
しょうがないのでひたすら歩く。
散々迷いつつ、数人の人に道を聞きつつ、
ようやくコペンハーゲンの中央駅とチボリ(遊園地?)に着いたのが22時過ぎ。
困ったことに、脚が痛い。
まだアイスランドに立ってもいないのに、すでに疲労困憊。
さらに夜も更け、昼間は暖かかった気温がグッと下がってきた。
かといって宿に泊まる気は全然ないし、
かといってテントやシュラフは空港のどっかに置き去り。

こんなに気温が下がるなんてさすがは北欧、
しかし雨が降ってないのは幸いであるなんて思いつつベンチに寝転がるとうわー冷え切ってる。
ここで朝を待つのはちょっと厳しいぞ…。

よし、ここはダメモトで、空港まで戻ってみよう。
成田空港は夜間に閉鎖するらしいのだが、ひょっとしたらココは開いてるかもしれない。
たとえ閉まっていても市街で野宿するよりはマシかもしれないし、
どうせ明日には空港に戻らんといかんわけだ。
そう思い、痛む脚を引きずって深夜1時過ぎに空港に帰還。

あ、開いてる。
中で寝てる人も何人かいる!

これはラッキーだ。空港内のあったかいこと。やっぱりぬくいっていいなー。

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ちょっとミステリアスかつハードボイルドなこんな場所で仮眠を取って朝を待つとしよう。

いやー、しかし散々なコペンハーゲン観光であった。
何から何まで自分のせいではあるが。

それにしても脚が痛い。軽装で30キロぐらいしか歩いてないにもかかわらず。
運動不足にもほどがあるな。

こんなんで明日からのアイスランドは大丈夫かねぇ…。