5月5日(水)その2 上質


峠にさしかかると、雨はやんだようだ。
ありがたい。

なんせ、

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雪に変わったからなぁ。

この期に及んでまだ降るか!!

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雪とは言ってもみぞれに近い。
だから服が濡れる。
ハプンで買った防寒着の防水性が試される時がついに来たのだ!

18時半。
みぞれに当たりながら坂道をのぼりつつ、なぜか、

『上質の変態』

という言葉が脳裏に焼きついてしょうがなかった。
まったくゲンナリである。
たぶん俺は今、アボガドの腐ったような目をしている。

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そろそろ峠の頂上付近のハズだが…。
あれ、避難小屋がみつからない。おかしいな。
雪が降ってる上に霧が濃いのでわかりにくいのかも知れない。

そんな時、背後から来たクルマが止まってくれた。
子持ちの若いお母さんだ。

「えぇ!?こんなところで何をしているの?乗って行きなさいよ!」

「大丈夫。この近くに避難小屋があるからね。」

「じゃあ、その小屋まででも乗せてってあげるわよ。」

「いや、この近くのハズなんだ。きっともうすぐだから。ありがとう!」

彼女は苦笑しつつ、いかにも『上質の変態を見た』という顔をして去っていった。

それにしても、クルマで止まってくれる人って、子連れのお母さんと熟女が多いよなぁ。
これはもしかしてアレか、母性本能ってヤツか!?
凄いと言わざるをえない。俺ならこんなヤツはたぶんいやきっと乗せないだけに。

ところで。
避難小屋がない。

峠道はもう上りから下りに移行してしばらくたつ。
このままだと峠が終わってしまうような勢いだ。
しまった、見逃したかな…。

もうこの際、下山するか。
標高が下がったせいか、みぞれは雨に戻り、あたりはすっかり霧に包まれている。

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ここはもう焦ってもしょうがない。
霧雨のなか、水でも汲んで一休みだ。

服の防水性は予想以上に素晴らしく、服を着ている上半身だけはほとんど浸水がない。
よくわからないけどさすがはAQUATEXって書いてるだけのことはあるな!

ここでもう一度地図をよく見てみたが、
どうもやっぱり避難小屋は見逃して通り過ぎてしまったようだ。

アテにしてない時は偶然みつけて救われ、アテにしてる時はみつからない。
そんなもんかもな。

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道は下りなので、雨でもなんでもとにかくユニサイクルで一気に走る。
途中でスキンヘッドのドライバーが何か咆えながらガッツポーズで写真を撮って走り去っていった。
人が大変な思いをしてる時にこいつは!
続いて別の男がクルマを止めて待っているので仕方なく止まって少し話をしたら、
結局ヤツはただ単に「クレイジー!」と言いたいだけだった。
そんなことを言うためにわざわざクルマ止めて待つな!!

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しかし、下りは速い!
なんだか途中からテンションが上がってきて、霧雨の峠をひたすら走り下りる。

今日は避難小屋で一泊して明日の朝に爽やかに峠を下ろういう計画だったのだが、
繰り上げだ繰り上げ!
今もまぁ、ある意味爽やかな気分やし!!

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峠、終わっちゃった…。

とりあえずビスケットを食う。
喫煙者はこういう時にタバコを吸いたくなるのであろう。きっと。

雨はひょっとしたらこのままやんでくれるのかも知れない。
もう20時なのだが、濡れてる地面の上にテントを張るのもイヤだし、
このままもう少し、行けるとこまで行ってみるとしようか。

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22時。
雨はすっかりやんでくれた。

いい風だ…。

もうこんな時間なのに、テントを張る気にもならず、ずっと走ってる。

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22時半。
あたりはまだ、ほの明るい。

水の音、鳥の声、そして不思議な風。

心地のいい時間。

どこまででも行けるような。何もかも優しく停止しているような。

俺は今、解放されている。

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えーっと、23時前。あと13キロぐらい?
毎度のことながら、ここからが長い!

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0時41分、ヴァルマリーズに到着。

おいおい、結局100キロ走って町に着いてしまったよ。
今朝にはアークレイリに居たハズなのに、俺はもう次の町に居るのか。
実感に乏しい。
避難小屋がみつからなかったというだけで、他に特に意味はないのだが…。

ところで。
一輪車を降りてしばらくすると、とっても寒いことに気がつく。

うわー寒っ。
熱血ハイパーモードは終わって正気に戻った時がつらいぜ!

キャンプ場を探してみたが、町はずれは真っ暗で何も見えない。
もう1時を過ぎてるし、要は朝を待てばいいだけのことだな!
よし、じゃあこのツーリストセンターの前のベンチで寝っころがろう!

ツーリストセンターさん、たびたび野宿してごめんなさい!