5月12日(水)その2 ダートと町と間欠泉

地図的には15キロほど続くらしいダートロードが今、始まった。

困難な道のりが予想されたが…あれ?ここ、意外と走りやすい。
ダートはダートなんだが固くしまっていて、石も少ない。
今はちょうど下り坂だし、これはひょっとして、このまま走って行けちゃうかも?

おぉ、思わぬところですっかり忘れかけていたマウンテンユニサイクリングが!!

こっちが軽快かつ細心の注意を払ってマウンテンユニサイクリングに没頭しているのに、
そんな時にも関わらずクルマで併走して話しかけてくる男が!

「おいおい、すごいな。クルマに乗って行かなくて大丈夫か?」

「大丈夫!調子いいから!」(ごめん、できれば今は話しかけないでー!!)

別のクルマには家族が乗っていたようだが、後部座席から俺の姿を目撃した少年の目がまさに点。
フハハハ、見たか少年よ!これがマウンテンユニサイクリングだ!
でもちょっと危ないからお父さん、早く追い抜いてー!!

ふぅ。
疲れるけど楽しい。

おもむろに舗装路が復活したかと思えば、

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斜度14%の下り坂。
おぉ、14%!アイスランドの自己新記録かも知れん。

下りながら動画を撮ろうと思ったが、ムリ!効きの甘いブレーキがまったく通用しねぇ!
モモが…モモがパンパンになるっ!!

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思わず下から見上げるの図。
凄い坂だった…。
この坂だけが舗装されている意味が、実際に走ってみてよくわかったよ。

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地形が下り坂から平面になっても、まだまだ続く固くしまったダート。

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これぐらい平らなダートなら、荷物が重くても気持ちよく乗れる。
一口にダートロードと言ってもいろいろあるもんだ。



にわかにテンションが高まって撮った動画。でも携帯を取りに戻って来るのがつらい。

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おや、こんなダートの上で1500キロ達成。
今回の旅はアイスランド一周1500キロを走るというのが目的だったような気もするが、
この分だともうちょっと伸びそうである。

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果てしねー。
全然関係ないのになぜかどうしてもアンデスに続く道を行くマルコの気分になってしまうから不思議だ。

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おぉっ、長い下り坂の先に、湖と町らしきものがある。
あれがロウガルバトンに違いない。
そうとなれば、この坂道は一気下りあるのみ!

最後までダートだった坂道をハイペースで下り、
観光バスの客たちに拍手されながらさらに突き進む。
そしてその勢いのまま、ロウガルバトンの町に到着!

あぁ、今までで最高クラスの爽やかな到着ぶり!

そしてまずはやっぱり店に寄る。
最近連敗中の営業時間は…なんと、閉店15分前!!
おぉ、ギリギリで開いてるなんて!むしろ信じられない!

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18時。閉店と同時に店を出る。
テンションが高かったせいか、変な色のドリンクを買ってしまった。

ここでサンドイッチを食いつつ軽く日記を書いていると、
店じまいをしていたオーナーらしきオッチャンが話しかけてきた。
ユニサイクルなんかで旅ができるというのが信じられないらしく、

「アメイジング!」

と言ってしきりに感心している。

思えば今まで、いろんなことを言われてきたものだ。
クレイジー、アンビリーバボー、オウサム、グレート、クール、ブリリアント…。
一番多かったのはクレイジー。
でも、『オマエは狂ってる!』って言われても正直いい気はしない。
そして今回初登場、アメイジング!
これはなかなかイイね。気に入ったよ。ありがとう。

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そして店のおばさん(奥さん?)と一緒に写真を撮る。
和やかないいムードだ。

メシも食い終わったので走り去ろうとしたらオッチャンがもう1度現れ、
俺が走って行く様を写真に撮っていた。
ロウガルバトンは小さな町だが、俺はここがすっかり気に入ってしまった。

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とは言え。まだ18時だ。
ロウガルバトンで泊まることも一瞬考えたが、やはりもう少し走ることにしよう。
明後日が雨予報なら、今はできるだけ進んでおきたい。

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20時。
もういい加減疲れているのだが、淡々と、本当に淡々と走り続ける。

この夕暮れの時間帯の光、風、空気は、なぜこうも俺を揺り動かすのだろう。
同じようなことがアイスランドで何度もあった。これはきっと、偶然じゃない。

あらあら。
通り過ぎたクルマのドライバー、また俺を隠し撮りして行ったよ。
若い女の子だったが、カメラで撮ってサッと隠し、そのまま無表情な顔でスイーッと。

俺が気づかなった分も含めると、もう何十回とこんなことがあったんだろうな。
いくらアイスランド人がシャイだからとは言え、笑顔ぐらいくれてもいいのに。
無表情で写真撮られるって、結構怖いよ。

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20時半。
馬、羊、牛。アイスランドには無数の牧場がある。

4月の寒い頃はあまり気がつかなかったが、
最近はよく見ると、お母さんにくっついた子どもが元気よく走り回っている。
人間に警戒しまくりのお母さんのお陰であまり写真は撮らせてもらえないけどな。

ハプンでヴァレリオが、「これからは再生産の季節だ。」と言っていたのを思い出した。
オーロラが見えた頃から比べれば、本当にあったかくなったものだ。

時間はいつしか21時を過ぎ、俺はまだ淡々と走っている。
太陽が山に隠れてあたりが暗くなり始めるとようやく焦りだすが、
だからと言ってこんな中途半端なところで止まれない。
なぜなら、ゲイシールはもうすぐ近くなのだから。

そろそろ22時という頃。
あたりは闇に薄く覆われている、そんな時間に。

着いた。着いたよ…。
ゲイシール。

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どっぱーん、とゲイシール。

数分おきに熱水が吹き上がる間欠泉だ。
なかなか凄い音と水しぶきではある。
でも…思ったよりは迫力がないな。

ゲイシールに来たら、ぜひとも間欠泉の前でユニサイクルに乗ってる写真が撮りたかった。
でも…これがまた、思ったよりも難しい。
いつドッパーンと来るかが素人にはわかりにくいのだ。
忘れた頃に、油断した頃にバシューと来るところがまた許せない。
こんな調子じゃとても一人でセルフタイマーを使って撮影できるとは思えん。

本当は明日の朝早くに起きて他の観光客が居ないところでジックリ撮ってやろうと思っていたが、
なんかもう今撮った写真でいいような気がしてきたなぁ。

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22時過ぎ。
ゲイシール脇のキャンプ場で速やかにテントを張る。
遠くの煙みたいなのは、24時間ひたすらバシュバシュやり続けてるゲイシール。
お疲れさんと言ってやりたい。

あーあ。
朝は雨であんなにブルーだったのに、
まさか夜にはゲイシールに着いて写真まで撮ってるとは思わなかった。
一日を通してずっと追い風が吹いてくれていたおかげだ。

今日の走行は92キロ。
明日はグトルフォスに行くぜ。