5月25日(火) 日本

4時にちゃんと目が覚めた。

やはり少し眠い。
でもそれぐらいのほうが、これからの長いフライトにはちょうどいいだろう。

ニューミはクルマで送ってくれると言っていたが、
やはり最後はこのマウンテンユニサイクルで走りたい。
大体、ニューミは思いっきり寝てるし。酒も飲んでるし。

書き置きをして、そっと家を出る。
なんか俺、アイスランドで何回も書き置きしてるような気がするな。

書き置きの最後には、『ノープロブレム!ドントウォーリー、ビーハッピー!』と書いておいた。

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4時21分。
ニューミ宅を出る。
少し冷える。
ここから空港までは5キロぐらいかな。まず間に合うだろう。

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長い坂をのぼりきって、もう1度だけケプラヴィークの街を振り返る。

タクシー会社の事務所の前を通りがかった時、
先日少しだけ話をしたタクシードライバーのおっちゃんのクルマとすれ違った。
彼は挨拶をしてくれたので、たぶん覚えてくれてたんだろう。
俺が早朝にここを通ったことを、後でラッキに伝えてくれるに違いない。

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4時41分。
さすがにこの時間だとクルマもほとんどいない。
昨日は意外と31キロも走っていたが、今日はもう、空港に着いたらそれで終わりだ。

今度こそ、ラストラン。

これといった高揚もなく、感慨もなく、ただ静かに走る。

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4時56分。

アイスランドを一輪車で一周する旅は、今、終わった。

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よっしゃー、さっそく分解!そして荷造り!

分解と言ってもペダルをはずすだけ。
輪行バッグにユニサイクルとその他モロモロを突っ込む。
時間的には充分間にあうとは思うんだが、なんとなく焦る!!

ほどなくしてチェックインが始まる。
何食わーぬ顔をして異様に重い輪行バッグを差し出したら、
なんとあっさりと受け取ってもらえた。

成田空港では徴収された自転車用の追加料金1万円を取られることもなく、
そもそもこの中に何が入っているのかすら聞かれなかった。
なんじゃそりゃ…。
ともかく、アイスランドエアー最高!!

出国審査と税関をくぐれば、そこには広大な免税店コーナーが出現。
なんだ、これならケプラヴィークで苦心して土産を探すこともなかったなぁ。

土産といってもやっぱりアイスランドっぽいモノは大してみつけられなかったが、
噴火した火山の火山灰というヤツをみつけたのでこれは買っておいた。
さすがは火山ツアーで儲けているアイスランド人。意外と商魂たくましいところが素敵。

ちなみに今回は、自分には何も買わなくてもいい。もう充分だ。

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これからアイスランドを飛び立つ。

今回ほど、やり残したことがないと感じる旅も珍しい。
あの、来た初日に帰りたくなったパプアニューギニアですら、最後にはちょっとは名残惜しい気がしたものだが。

ま、それはいいことだ。
後はとにかく、落ちないでね。

飛行機は無事に離陸し、眼下にはしばらくアイスランドの湖や山が見えた。
あのあたりを、俺はちっぽけに走ってヒーヒー言ってたに違いない。

2時間40分後にコペンハーゲンに到着。
帰路では空港を出ることなく、そのまま乗り継ぎで成田行きだ。

コペンハーゲン空港の売店は、売っているモノがアカぬけている。

乗り継ぎ便には日本人がたくさんいて、久しぶりなのにいきなり大量の日本語を聞いてしまう。
アジア系の顔をした人々がペラペラと早口でしゃべる言語を、
何も考えなくてもちゃんと理解している自分がちょっと気持ち悪い。

コペンハーゲンから成田までの10時間は、長いようで短かった。
機内のモニターで『上海』というパズルゲームに熱中しているうちに着いてしまった。
しかも一回も勝てなかった。

日が変わって26日の9時35分。
飛行機はちゃんと成田空港に着いた。

日本の空港はさすがである。
職員はキッチリと働いているし、しかも親切で丁寧。彼らは最高だと思う。

税関でビールを6缶持っていると言うと、それには税金がかかりますと言われた。100円だった。

5月末の日本はとても蒸し暑い。
羽田空港まで安く行くために普通列車に乗っていると、俺はとても浮いている。

でも、俺はこの国で生きていくための感覚を、早くも取り戻しはじめていた。



--おわり--