5月24日(月)その2 延長戦…
そして、空港の中。
今の時間帯は飛行機の離発着もないらしく、ガラガラである。
空港内は暑くも寒くもなく、コンビニもあって快適だ。
でもなぁ…。
どうしたもんか。ヒマすぎる。
さらに困ったことに、空港内を散歩していると、
『空港敷地内での野宿は禁止』という注意書きを発見。
えー、ダメなの?
それなら早朝のフライトなんか設定するなよ!!
『空港敷地内での野宿は禁止』という注意書きを発見。
えー、ダメなの?
それなら早朝のフライトなんか設定するなよ!!
えー、さてさて。
ここにいてもヒマだし、寝ることもできない。
今は19時前。アイスランドはまだまだ明るいぞ。
うーん…。
そういうことなら、しょうがない。
ここにいてもヒマだし、寝ることもできない。
今は19時前。アイスランドはまだまだ明るいぞ。
うーん…。
そういうことなら、しょうがない。
また街に戻るかぁ。
あのラストランはなんだったのか。
またしても、ケプラヴィークの街に戻ってきてしまいました。
もう20時になるけど、あたりは憎たらしいほど明るい。
旅はもう終わったと思ったのに。
ここからは、ちょっとした延長戦だねぇ。
ここからは、ちょっとした延長戦だねぇ。
街に戻ってくれば何かあるかなと思ったけど、何もない。
バーにでも入ってみようかと思ってウロついてみたものの、コレという感じがしなくてやっぱりやめた。
今までは、ほとんど毎日のように意外な出来事や衝撃的な出会いがあったのにな。
芝生のベンチから街の様子を眺めていると、俺もアイスランド人も、ただ淡々と生活している。
芝生のベンチから街の様子を眺めていると、俺もアイスランド人も、ただ淡々と生活している。
こういう最終日ってのも、アリかも知れない。
むしろこれが普通なんだ。これまでが色々あり過ぎたんだ。
むしろこれが普通なんだ。これまでが色々あり過ぎたんだ。
今この時になって、疲れを感じる。
片手では持てないほどの荷物をずっと背負い続けてきた背中が重い。
気持ちがハリを失いつつあるのだろうか。
さっき空港でヒゲを剃っていたら、白いヒゲを2本みつけた。
そっか。俺も確実に老化しているらしい。
そっか。俺も確実に老化しているらしい。
21時半。
やっと太陽が傾きはじめた。
ヌードルを作りつつ、ヴァイキングビールを飲む。
数え切れないほど水を入れ替えて使ったこの1.5リットルのペットボトルは、
4月の半ばにハプンでヴァレリオが買ってくれたミネラルウォーターのものだ。
他の500ミリのペットボトルは度々代替わりしたけど、これはなぜか今だに愛用している。
4月の半ばにハプンでヴァレリオが買ってくれたミネラルウォーターのものだ。
他の500ミリのペットボトルは度々代替わりしたけど、これはなぜか今だに愛用している。
雲が流れて、鳥が弧を描いて…今は何もない。
風景も気分も俺自身も、変わっていく。
すべては変わり続ける。
アイスランドの旅で気づいたことは、結局それなのかも知れない。
すべては変わり続ける。
アイスランドの旅で気づいたことは、結局それなのかも知れない。
23時。
寒くなってきた。
熱いコーヒーを作って、粉を全部使い切る。
あとはガスバーナーの火をつけっぱなしにして、ガスがなくなるのを待つ。
ガス缶に穴を開けて一気に空にしてもいいのだが、そんなに急ぐ理由もないんだ。
そのうちガスがなくなって、火が消えたら動き出そう。
もうこの島に未練はない。
あとはガスバーナーの火をつけっぱなしにして、ガスがなくなるのを待つ。
ガス缶に穴を開けて一気に空にしてもいいのだが、そんなに急ぐ理由もないんだ。
そのうちガスがなくなって、火が消えたら動き出そう。
もうこの島に未練はない。
……。
バーナーの青い炎をぼんやりと眺めていたので、
背後から人が現れたことに気がつかなかった。
背後から人が現れたことに気がつかなかった。
そこにはパイプをくわえた熟年の男性がいた。
「ユニサイクルの旅は、もう終わったのかな。」
「ええ、もうほとんど。明日の朝の飛行機で帰ります。」
「そうか。それはおめでとう。
君さえよければ、今夜は私の家に泊まっていけばいいよ。」
君さえよければ、今夜は私の家に泊まっていけばいいよ。」
あぁ。
やっぱり、最終日にもちゃんと何か起こるんだな…。
やっぱり、最終日にもちゃんと何か起こるんだな…。
ガスの火を消し、そのへんのとがった石で缶にバスッと穴を開け、
柔らかく微笑む彼と共に歩き出す。
柔らかく微笑む彼と共に歩き出す。
彼はこの街に住むニューミという人。
この街に住むどころか、かつてこの街を設計したエンジニアでもあるらしい。
この街に住むどころか、かつてこの街を設計したエンジニアでもあるらしい。
ダンディなヒゲにシブいパイプというその格好からして性格もダンディなのだろうと思っていたが、
どうも少し酒が入っているらしく、
しばらく喋っているうちに、彼は単なる陽気な57歳のおじさんであることがわかってきた。
どうも少し酒が入っているらしく、
しばらく喋っているうちに、彼は単なる陽気な57歳のおじさんであることがわかってきた。
ニューミの家は、街の奥まったところにある一軒屋の2階部分だ。
中に通されると、そこには1匹の犬と、ギターが。
中に通されると、そこには1匹の犬と、ギターが。
見た目はとてもシブいニューミ。
でも俺のために即興で作って歌ってくれた『日本から来たユニサイクリストの歌』というのがまた…。
なんで動画で撮らなかったのか悔やまれてならないというぐらいの珍妙な歌であった。
なんで動画で撮らなかったのか悔やまれてならないというぐらいの珍妙な歌であった。
この家には普通のギターの他にも12弦ギターやスティールギターがあって、俺としては実に興味深い。
ニューミは高そうなオーディオセットで彼の好きなフォークやポップスを次々とかけてくれる。
知らない曲ばかりだが、その曲に2人で適当にギターで合わせてみたりしていると、とても楽しい。
ニューミは高そうなオーディオセットで彼の好きなフォークやポップスを次々とかけてくれる。
知らない曲ばかりだが、その曲に2人で適当にギターで合わせてみたりしていると、とても楽しい。
さらに、なぜか庭に案内されると庭の隅で隠れてウサギを飼っていたり、
物置兼作業小屋で大昔の彼の写真を見せてもらったり、
本当かどうか知らないが、スペインにいるらしい情熱的な彼女の話を聞かされたりする。
物置兼作業小屋で大昔の彼の写真を見せてもらったり、
本当かどうか知らないが、スペインにいるらしい情熱的な彼女の話を聞かされたりする。
ついには0時を過ぎているにもかかわらず階下の住人の部屋に俺を連れて遊びに行き、
そこで酔っ払い度合いに拍車をかけて、ロレツの怪しい言葉でしゃべりまくりつつ、必ず最後はこうシメる。
そこで酔っ払い度合いに拍車をかけて、ロレツの怪しい言葉でしゃべりまくりつつ、必ず最後はこうシメる。
「ノープロブレム!ドントウォーリー、ビーハッピー!」
これは彼の口グセらしい。さっきから脈絡もなく何回連呼していることやら。
そんなニューミの記憶はだんだんあやふやになりつつあるし、
飼い犬のノイは他人の家でお漏らしするしで、もう大変である。
そんなニューミの記憶はだんだんあやふやになりつつあるし、
飼い犬のノイは他人の家でお漏らしするしで、もう大変である。
そして最後は部屋に戻ってきて、
「明日はクルマで送ってあげよう。ではおやすみ!」
そう言って寝てしまった。
ニューミ…おもしろいよ。
いつのまにか1時半だ。
5時には空港に着きたいと思ったら、もうほとんど寝てる時間はないな。
でもさすがに眠いので、少しだけ仮眠を取らせてもらうとしよう。
最終日に短時間とはいえ、人の家に泊めてもらうことになるとはな。
正直、嬉しいよ。
正直、嬉しいよ。
よし、ちょっとだけでも寝よう。
でもさっきオーディオで聴かされた、『ケプラヴィークの歌』がアタマから離れないのが困る。
でもさっきオーディオで聴かされた、『ケプラヴィークの歌』がアタマから離れないのが困る。
歌詞はアイスランド語でサッパリわからないくせに、
サビの「オー、ケプラヴィーク!ケプラヴィーーーーーク!!」のトコだけがムダに印象的なのがムカつく!!
サビの「オー、ケプラヴィーク!ケプラヴィーーーーーク!!」のトコだけがムダに印象的なのがムカつく!!