雪が恋しいわけじゃない
工場はもう雪がこいを立てた。
毎年、雪が降らないうちから雪の準備をするので、少し違和感のような、マネーゲームをしてるみたいな虚ろな印象を受ける。
でもそれは、俺がまだ雪国の人間になりきっていないせいだろう。
1ヶ月後には、この雪がこいにも似つかわしい白さが浮いているハズだ。
最近は忙しくもなく今シーズンの仕事終了を待っている有様なので、
今日はちょっと異音を出していたベルコン用モーターのベアリングを換えているところだ。
初めてバラす機械は、中の構造がよくわかって楽しい。
鉄の加工品には、木とはまた別の引力を感じる。
思えば人間の歴史は、素材との付き合いの歴史でもあるんだな。
お、そんなことを言ってるヒマがあったら、組み上げたモーターを設置するとしようか。
いやその前に、おやつに買ってきたシュークリームを食ってから。
と思ったら、ヨッシーがカエルを見せにわざわざ持ってきたので食欲が失せた。
腹が立ったので、
「それは貴様のおばあちゃんの生まれ変わりに違いない。」
そう言ってやった。