トドのつまり、関の山

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鈴鹿峠の滋賀県側の麓にある、道の駅あいの里に到着。
時間は16時前、走行距離はたったの15キロ。
まだ走れなくはないんだが、もう走りたくはない…。

道の駅に着くと同時に、そこで働くおばさまと、ただのお客さんらしいおばさまの2人から同時に質問責めに遭う。
この即席タッグの絶妙なコンビネーション、さすがに関西に来たと思わせるに充分だ。

北海道ではあまり関西弁が出ないのでエセ関西人呼ばわりされることすらある俺も、相手が関西弁だと自動的に関西弁対応に切り替わる。
コトバというのは、その内容以外の情報をも無数に含むものなんだなぁと、あらためて思う。
そういえば、生まれ育った関西以外をほとんど知らずに始めた最初の日本一周の旅日記は、モロに関西言語で書かれたものだった。

道の駅で無料のお茶などをガブ飲みしつつ、峠越えの疲れを癒す。
この道の駅、周囲にもこれといって何もない。
今日ばかりは人の写真も撮らず、コンビニすら見ないうちに一日を終えられるかもしれない。
おぉ、日記がラクじゃないか!

それでも、人の気も知らずに体力は勝手に回復するもので。
またこの道の駅の人々が親切で、外でじっとしていた俺に、
建物の中のほうが涼しいからどうぞ、などと声をかけてくれるのだ。
こうなると、実は野宿するために時間稼いでます、なんてとても言いにくい。いやもうお見通しだろうが。

16時半か…。
ここから30キロぐらい走れば、栗東に道の駅がある。
短くはないが、行けない距離でもない。
ここで念のために天気予報をチェックしてみる。
今日は大丈夫、でも明後日ぐらいからがダメそうだ。
ならば今日のうちに進んでおく意味もあるだろう。
よし、出発だな。

一度は生えかけた根を引き剥がし、再びユニサイクルに跨がる。
国道1号をほぼまっすぐに進んで、夕方から栗東市を目指すぜ!

鈴鹿峠から琵琶湖へと至るこの道、おそらく延々と緩やかな下りが続くだろう。
一輪車の旅では、地形のわずかな傾斜をも敏感に感じ取れる。いや、感じ取ってしまうのだ。
いいぞ、これは久々のワープゾーンだっ!!

って、ええ!?おもむろに歩道終了!?
しかも、突然の雨、それも、ゲリラ?ゴリラ?とにかく豪雨だ!!

手近にあった閉店したリサイクルショップもどきの軒先で、緊急に雨をしのがせてもらう。
短期集中的なモノスゴイ雨だ。
日本が熱帯化してきてるってのは本当かもな。

雨が止むまで小一時間ほど、この広くもない場所で足止めを食う。
道の駅の到着が遅れるな…。
もう30分ほど早く降ってくれれば、安心して前の道の駅でのんびりしてたのに。
まぁ、事前に天気予報まで確認してこれだから、自分の行動に対しては納得もいく。

さて、雨は止んだが道はプール状態、オマケにちょうど歩道がなくなった。
トラックの跳ね上げる豪快な水しぶきを紙一重でかわしつつ、少しずつ歩いて進むしかない。
歩道は一瞬復活したかと思えば、またすぐに消える。
そんな調子で、水口、甲賀、甲西と、時間とともに地名だけが、いつのまにか変わっていく。

やはり、途中で夜になった。雨宿りが響いたなぁ。
しかし暗くなってもそこはクルマの多い国道1号線、安定した歩道さえあれば、まだ走ることもできる。
歩道さえ、あれば。
国道1号線、鈴鹿峠から栗東までのこの区間、歩道の設置状況は、お粗末と言わざるをえない。
あるところはあるが、いきなりブッツリ切れる。
幅もクルマが通れそうなものから、歩行者のすれ違いも難しいものまで千変万化。
いかにも付け足し、その場しのぎで、計画性のある道づくりには程遠い。
「そのうちやりまーす!」ってな雰囲気ではあるのだが。
歩道を求めて国道の右に左に、アミダクジみたいな進行が続く。
頼むよ滋賀県…。
もしや、琵琶湖東岸のサイクリングロードを整備したあたりで力尽きてしまったのか!?

国道1号線の整備状況について、県や自治体に文句を言うのはあるいは筋違いなのかもしれない。責任の所在がよくわからん。
ただ、国道の走りやすさが県によって明らかに違うのは、自身の体験によって確実だと思う。
予算とか方針とかいろいろあるんだろうから、個人的には完璧に整備してくれ!とも言わないが、とりあえず通ってみた感想だけは残しておくよ。

ガソリンスタンドから出ようとした、黒い軽のワンボックス。
中には若者たち。一輪車にピカピカライトで走る俺を目撃して、驚いている様子。

「どこまで行くの!?」

「沖縄ッ!」

そう言って走り過ぎる。悪いが立ち止まっているヒマはない。
しかし、彼らは俺に並走し、なおも話しかけてくるのである。

歩道上とはいえ夜中に一輪車で走っている俺も非常識だが、
そいつに並走して話しかける君たちもなかなかのモンだな。これぞ関西文化圏。

「どこからどこまで行くの!?」

「北海道から、沖縄ッ!」

「マジで!?北海道からここまで来たの!?」

「来たよ!2000キロ!」

「ウゲェーーッ!!がんばってねッ!!」

「ありがとう!」

見たものに敏感に反応し、食いつき、素直に驚く。
彼らはしなやかだ。
そして、夜中の歩道をしゃべりながら疾走するのは、意外とむずかしい。

うはーっ、着いた。栗東の道の駅。
今日は…47キロか。21時半、思ったよりは早く着いたな。
コンパクトにまとまった良さげな道の駅ではあるが、治安はあまりよろしくない気配がする。
都市に近い郊外だからな、ノーガードというわけにはいくまい。
なんだかわからない集団の話し声を聞きながら、ナイスな場所で寝る。

よーし、朝になって日記も書いたし、あとは次に新幹線が通る写真でも撮ったら、出発するかな。

結果。
よくわからん写真になってしまった。