鈴鹿峠、ぬめる。

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唸りながら旅日記を書き、12時を過ぎてから関宿の道の駅を出立だ。
このぶんでは、今日はあまり進めまい。
特にこの先、鈴鹿の峠越えがあるのだから。

まずは、道の駅の近くにある関宿の古い町並みに立ち寄る。
昨夜も来た場所だが、日中に見るとまた趣が違う。
無料休憩所として開放されている古民家で一人、
縁側に座り、木の柱の感触をじっくりとなぞる。
うーむ、非常に満足だ。

関宿を抜けると町もなくなる。
じょじょに斜度が高まりつつある国道を進み、
歩道がなくなったのを機に、またしても旧東海道に入り込む。
東海道の宿場町で言えば、関宿の次に来る坂下宿。
ここで通算2000キロだ。

稚内から鹿児島までが大体3000キロらしいので、
実家のある神戸より手前で2000キロになるのは少し意外だ。
あまり寄り道もしてないんだがなぁ。
そして今日は7月1日。
5月20日に宗谷岬を出発して、約40日。
1日の平均走行距離は、やはりちょうど50キロぐらいになるようだ。

三重県で2000キロなのはいいとして、もう7月になってしまったんだな…。
さぁ、どうしよう。

以前にも少し書いたが、実は仕事の都合で7月の半ばぐらいには北海道に戻らねばならない。
元々は4月1日のエイプリルフールあたりから始めて一気に日本縦断するつもりだった今回の旅は、
震災の発生によって、計画そのものが消えかけた。
いや、やはりやる!と決めるまでに、それから一ヶ月半以上もかかったことになる。
おかげで慢性向かい風だの梅雨だの猛暑だのというあんまりな時期に走るハメにもなったが、それは特に問題ではない。

問題は、旅を二部構成にするか、それとも一気に走ってしまうか。

ここ数日、ずっとそのことを考えていた。
ギリギリ7月20日ぐらいまで走りまくって飛行機でドガッ!と北海道に帰れば、
沖縄はともかく、おそらく鹿児島までは行けるだろう。
でもそれは気の焦る日程になるだろうし、何より楽しくなさそうだ。

…よし、やっぱり、実家のある神戸で一旦区切るとするか。
始めた旅を一気に終えられないのは宿題を残すようでもどかしいが、
たまにはこういう旅もいいのかもしれない。

国道から逸れて旧東海道を進んでいたおかげで、
そのまま自動的に鈴鹿峠の旧道に突撃しそうな勢いになってきた。
なんとか国道に戻ることも可能ではあるが、まぁいい、このまま行ってみるか。

実はここに来るまで知らなかった。
ここ鈴鹿峠は東海道において、あの箱根と並ぶ難所と言われた場所らしい。
箱根では旧道ではなく国道1号線にこだわったので、今回は趣向を変えて旧道に遊んでみるのもいいだろう。

…などと、なぜ俺は考えてしまったのか。
いよいよ鈴鹿峠にさしかかるというところで、道の様相がいきなり50年ぐらい巻き戻る。
不安になりつつ薄暗い森の中を進んで行くと、ついさっきまで舗装されていた道は、
さらにもう50年ぐらいタイムスリップした山道に変わり果ててしままった。
なんて、急な斜度。
しかも沢蟹が道のまんなかを歩くような湿った山道を、マウンテンユニサイクルを押して上るのだ。
これが結構、キツい。

俺はこれまで、人力で東海道を進むことで、古代の人々と同じような感触を体験しているものだと思っていた。
甘かった。チョコレートカレーなみだ。
江戸時代、さらにはもっと古代より存在したこの道は、現代的に整備された国道とは比較にならない険しさだったのだ。
まさに、こんな感じで!
かつてここを通った無数の人々は、俺よりよほど健脚だったに違いない。それも、老若男女を問わず。

思わず古代人の意識に吸い込まれそうなほどキツい区間であったが、距離的にはさほどでもなかった。
急な山道を上りきれば、ちゃんと国道に合流。
このまま国道の歩道(あるじゃないか!)を進んでトンネルをくぐれば、滋賀県に入るハズだ。

でもなぁ。
鈴鹿峠はコッチ、という古くて小さな看板があってね…。

どうせここまで来たんなら、古代のロマンが垂れ流し状態の鈴鹿峠を、正攻法で越えてみたいじゃないか。
こんなトコ、人力ではもう二度と、絶対、確実に来ないんだからな!

それにしても…。
こんな山道を歩いて越えまくっていた古代人も凄いが、
こんなところに陸橋をかけまくって車道を造ってしまった現代人もまた凄まじい。
もちろん生活のためなのだろうが、人間はわりと、どうしても外の世界を目指したい生き物なのかもしれない。

爽やかな国道とトンネルを諦め、またしても薄暗い森の中に消えていく俺。
ぐぇぇ、しんどい。
一輪車は抱えねばならず、日頃はあまり気にならない15キロのザックの重さも、山道となると異様な存在感を発揮する。
こんな時、登山家は大したもんだといつも思う。とてもマネできん。
人間、好きなことのためなら苦労が苦労にならないんだな。

せっかく汗だくで鈴鹿峠の頂上を極めたのに、頂上にはこれといって何もなく。
しばらくへたりこみ、看板に書かれた山賊伝説などを読みつつ体力の回復を待つ。

さぁ、短いとは言え、あんなイカれた山道を上ってきたんだ。
ここからはそう、やはりアレが来るか!
幹線国道の旅にもかかわらず、リアルマウンテンユニサイクリングの世界が!!

頂上を過ぎて滋賀県に入ると、いきなり舗装されてました…。
これが三重県と滋賀県の、考え方の違いと言うものでしょうか。
いや、いいんだけどね。フフ…。

リアルマウンテンユニサイクリングの話は無かったことになりまして、
鈴鹿峠の下りは快速ノーマルユニサイクリング。
ここから数キロも行くと、あいの里という道の駅がある。
これはいい。
ムダな峠越えでムダに疲れた俺にとっては、願ってもないベストなポジショニングだ!