6月17日 日曜の太陽

いやー、蚊に咬まれながらもよく寝たな。
やはりベッドはいい。たとえここがラブホであったとしてもだ。
 
無一文で旅をしても楽しいわけがない。
大金があれば豪華に行けるし、それなりにしかなくてもこうやってなんとか楽しめる。
ここは野宿がしづらい国なのだ。
 
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カルロ宅の裏庭にある離れのさらに裏庭に生えてた謎の植物。
なんだこれ、うまいのか?

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カルロに朝食は要らないと言っておいたが、
代わりにヨーグルトを飲むかと聞かれたので、興味を覚えて頼んでみた。
あー、まぁ、ヨーグルトだわな。ラッシーと言えなくもない。

ちなみに宿代は10CUCで、昨夜のディナーは5CUC、ヨーグルトは1CUCだった。
予想外の出費ではあるが、旅先ではモノのおよその価値を知るのは重要なことだ。
何より昨夜のディナーは本当にうまかった。
 
えーさて。
昨日から散々あやしいあやしいと言い続けているカルロとの記念写真を披露しよう。
シロかクロかは各自で判断してくれ。
 
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カルロ!
ありがとう。格安の料金、いい経験、うまいメシ、親切でキャラの立ったオーナー。
ここに来られて良かった。

家を出る前に、ずっと気になっていたことを尋ねてみる。
 
「ペソクワーノって、どこなら使えるの?」
 
「それなら、町にあるピザ屋がいい。この近所の店ならピザ1枚で5ペソクワーノだよ。」
 
ピザが5ペソクワーノ!?
CUCに直すと0.2CUC、約20円ってことになる。さすがは庶民の通貨。えらい安いな。
機会があれば狙ってみよう。
この暑い島ではノドは乾いても食欲はあんまりないけどな。

それじゃあカルロ、俺は行くよ!
さらば!
アディオス!
じゃなくて、アリョースって言わないとここでは通じない!

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なんだか色々あった小さな町、カスカハルを出る。
今日も暑い。雲ひとつない空。
こりゃサンタクララでは確実にサングラスを買わないとな。

あ、カルロ宅にタオルを忘れてきたっぽい。タオルがないとあふれ出る汗を拭けないじゃないか。
こんなこともあろうかと予備があるからまだいいけどな。

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ふむ、サンタクララまでは65キロ。
夕方にはたどり着けるであろう距離ではある。
しかし今日の直射日光は尋常ではないな。休憩を多く取らねばなるまい。 

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ただでさえ隠れるところの少ないキューバ。
何かの陰があれば、そこは即席の休憩場となる。
旅人というよりは陰を伝ってコソコソ進んでいる不審人物だという自覚がある。むしろ忍者?
いやもう、それぐらいに暑いのだ。
 
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なんせ、これだからなぁ。
さすがにこの直線はビジュアル的にちょっと鬼気迫るモノがある。
今日の気温もだろうけど、紫外線の浴びっぷりもまたキューバに来て最高レベルに違いない。

呆然としている俺をよそに、カッコよくて速そうな高級セダン型レンタカーが俺の横をブチ抜き、
…そして、止まった?
なんで!?
 
運転席から青年実業家みたいな人物が顔を出し、
 
「こんなトコロで何をしてるんだ?乗ってけよ!」
 
そう声をかけてくれる。
俺は「ノープロブレマ!(大丈夫!)」と言うのだが、彼はなかなか強引で、さあ乗れ乗れと誘ってくれる。
助手席には若い女性、後部座席にはおばさまが乗っていて、彼女たちも笑顔で歓迎ムードだ。
スペイン語で気の利いた断り方もできないし、この際乗せてもらうことに。
何もない炎天下の道のりにくたびれ、クルマに乗って一気にワープしてしまいたかったことも否定できない。

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なんと、普通に、しかも高性能に動くクルマ!
キューバでクルマに乗るのは空港からのタクシーとホセのボロ車以来だが、
これだけ滑らかに動くクルマはもはや別の乗り物としか思えない。

同乗者の女性たちは、どうやら彼の家族ではないみたいだ。どういう関係なのだろう。
急ブレーキ急加速の荒い運転。障害物が少ないからいいようなもんの。
でも、ああ、車内はクーラーが効いていて涼しい。
とにかく涼しい。

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よそ見しながら馬車を追い抜くのはやめてー!

それはそうと、俺はどこまで連れてかれるのだろう。
車内BGMの大音量マンボがうるさくて、聞くに聞けない。
うっかり目的地のサンタクララまで行ってくれると嬉しいような気もしたり…。

そんなスケベ心を出したのもつかの間、クルマはマナカという町で止まる。
乗せてもらってから13キロほどだ。
思いのほか短いクーラー、いやドライブだった。

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とにかくありがとう!助かったよ!
どうやら中国メーカーの車みたいだけど、乗り心地はよかった。
これは日本もウカウカしていられないな。
ところで彼はいかにもキューバ人っぽいのに、なんでレンタカーなのだろう。
後部座席のおばさまはこの町でサラッとクルマを下りてどこかに行ってしまうし。一体なんなの。
彼は善意とついでで色んな人を乗せてってあげているのだろうか?
うーん謎である。

さて、地図にも載っていないようなマナカの町だ。
なんとまあ、日曜なのに開いている店があり、コーラを買えてしまう。

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今日はロクに買物もできまいと思って大量の水を積んでいるのだが、意外にもあっさりと買えてしまった。

しかも、初ペソクワーノのご利用だ!!

コーラ1本、10ペソ。CUCだと0.4CUC、約40円。
これだとCUCで買ってもペソクワーノで買ってもあまり価値が変わらないな。
でも初めてペソクワーノを使えたのでかなり嬉しい。

しかしこの店、なんで日曜なのに営業してるんだろう。

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ヒントはここにあるに違いないと店の看板を辞書で解読してみたが、営業時間しか書いてなかった。
ちなみに店の名前はラ・ソルプレサ?『驚き』?
日本で言えば『びっくりドンキー』みたいな命名センスなのだろうか。
そりゃ日曜に営業してるのは驚きではある。

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さあ、日曜だからと言って店がまったく閉まるわけでもないらしいし、元気に行くかな。
とりあえずは、8キロ先のサントドミンゴへ。

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おやこの町、ジョージ・ワシントンですってよ。
アメリカと仲悪いハズなのにねぇ。
かつてはスペイン、そのあとはアメリカに支配されていたキューバの複雑な歴史を象徴しておりますな。 

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少ない陰を伝いながら、どうにかサントドミンゴまで来たよ。
ちなみにスペイン語でドミンゴは『日曜日』。
日曜日にサントドミンゴにやって来たわけだ俺は。

ここでもやはり、開いている店はある。
なんだ。キューバでは思ったより土日問題について心配しなくていいのかもな。

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ここはCUC払いの店のようだ。ペソクワーノ払いの店との違いは何なのだろう。
ともかく店でコーラを買い、ベンチに座って黙々と飲む。
しかしずっと黙々とはさせてもらえない。
日曜でヒマなのか、それともいつもヒマなのか、おっちゃん達が集まってきて一輪車について質問攻め。
俺のたどたどしい答えにウンウンとうなづきつつ、何やら真剣そうに議論している。
 
町は店もあり日陰もあるのはいいけど、やはり人に囲まれてしまうのがちょっとなぁ。
どうせならあの店のお姉さんとお話したいところだが、残念ながら彼女は忙しそうである。

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その代わりというか、やたらいい表情のおっちゃん達が撮れたからよしとしとくわ。
浅黒い左端のオヤジが、中央の真っ黒なオヤジの肩を叩きつつ、
 
「コイツは真っ黒だろう?アフリカンだよ!」

なんて笑顔で話す。
言われたほうも気にする様子もなく豪快に笑っている。
黒人差別の根強い国ならとんでもないことになりそうな会話なのだが。
屈託がない、のかな?
いろいろ考える間もなく、今度は微妙に英語がわかるという合気道好きの兄ちゃんに、

「君は何を求めているのか?」

などと聞かれる。
何その抽象的&ロマンチックな質問!?
とっさにいいコトバが浮かばず、
 
「アドベンチャー。」
 
と答えた。
この発言はきっとすぐさまスペイン語に翻訳され、町の皆さまに周知されるのだろうねぇ。
まあいいよ。間違いではないと思う。

みんなの話に付き合って、ずいぶんと長居してしまった。
それでいてあまり休憩できたような気もしない。心まで暑気あたりか?
でも、フフ、サントドミンゴ。
変な町。そして、おもしろい町だったよ。

やっとこ町を出ると、前方に真っ赤な真新しいレンタカーが止まっている。
またレンタカーかと思ったが、追い抜くときも特に反応なし。
しかしそのあと、追い抜き際ではやはり俺の写真だか動画だかを撮っていたようだ。

はぁ。またかよ。

今度はキューバ人と違い、外国人旅行家族か何かだろう。
国に帰ってFacebookだかYouTubeだかでアップするのか?勝手にしろ。
クルマから出ない旅と、一輪車の旅。
それは安全性を考慮した結果でもあるだろう。否定はしない。

ただ結局、おまえらの見たキューバと俺が見るキューバは、別なものになるというだけのことだ。