きゅーきょくに、地味
そもそも数年前、俺が一輪車に乗ってみようと思い立った理由。
それは、自分の身体の明らかに崩れている左右バランスが、
一輪車に乗れば自然に修正されるかな?と思ったからである。
だが、練習してとりあえず乗れるようになり、延々と長距離を走れるようになったところで、
問題の身体の歪みというのは、実はほとんどまったく治らなかった。
サドルがあることによって、身体を歪めたままでもいくらでも誤魔化して乗れてしまったのである。
なんという誤算。そして本末転倒。
そんなわけで、俺の一輪車に対する情熱は、旅に使う用途以外にはほぼ沈静化してしまった。
そして先日。
バイクでツーリングをした途中、東京のユニサイクリストたちと遊んだのだが。
ユニトライアルテク、カッコよかったねぇ。バンバン跳んだり技をキメたり。
あの大道芸人御用達の長いキリン号もおもしろかったな。あれは目立つわ。
いやー、一輪車も久々に乗るとちょっと楽しい!
ところが俺自身は、ああいうハデなテクニックや目立つパフォーマンスをやってみようという気が、あまり起きない。
地味なのだ。
昔からマシン好きな男たちの間で熱く交わされる、最高速自慢やスペック合戦にもまったく興味がなかったクチである。
俺は一人でモクモクと、気分よく前に走っていられればそれでいい。
やっぱり、地味なのだ。
なーんて思いつつ、ふと思い出して一輪車専門サイトunicycle.comなどを眺めていたらだ。
あれ、なんか買っちゃったよ。
あぁ、はるばる届きました。
Nimbus Ultimate Wheel 24インチ。
アルティメットホイール、つまり、『究極車輪』。
見てのとおりサドルが無いが、これで完全体。完成品。
さっそくちょっと公園で試乗してきたけど、もうこれなに、全然乗れないわ。
サドルが無いだけで、難易度が普通の一輪車とケタ違い。
まさに究極!
練習風景も究極に地味でしかも近寄りがたく、たぶん誰も話しかけてこないだろう。
これは気長に楽しめるオモチャになりそうだ。なんせすぐに乗れる気がまったくしない。
でも前に進むだけなら、いつかは乗れるようになると思う。
ところでこのアルティメットホイール、数年前に初めて動画で観た時は、凄まじかった。
たしか一輪車の世界大会で、アルティメットホイールでスピードを競うクラスってのがあったんだよ。
5人ぐらいが並んで100メートル程度を走るわけだが、
そのレースの優勝者はなんと、一番速かったのではなく、アルティメットに唯一乗れた人だったのだ。
マトモに乗れるだけで世界一!
どんな乗り物だよ。まさに究極!
…ってその時は思って俺が乗ってみる気なんかはサラサラなかったのだが。
時の流れというのは怖ろしい。
あれから数年で、ここまで乗れるヤツが出てきていた。
彼はあまりにも簡単に乗っているように見えるので、
ユニサイクリスト以外にはむしろ難易度が伝わらないかもしれない。
そしてそんなにハイレベルなことをしているのに、なんとも地味だ。
自分で紹介した動画のくせに長くて途中で飽きてくるぐらいの地味さ。
あれ、ひょっとして俺向き?
そう思って買った…ような気がする。
ああ、ちなみに。
世界のちょっと変わった人たちが集うユニサイクル界には、
究極ホイールと双璧をなす、もう1つの一輪車があるのですよ。
Impossible Wheel
インポッシブルホイール、つまり、『不可能車輪』。
こんなもんどこのアホが乗るのかと思うが、ちゃんと乗り回してるヤツもいて不気味である。
この人が一体何を思ってこれに乗っているのか。はたして楽しいのか。
俺にもわからん。聞かないで。
さて、深遠なるユニサイクルの世界がまた一段と、あまり意味もなく広がってしまいましたね。
究極と不可能。
興味のある人、どっちかいかが。
どうなってもしらんけど。