5月31日 嵐を追う男

 
イメージ 1
 
野宿場所から最初のガソスタで朝食&ホットコーヒー休憩中。
朝だけは少し冷えるので、大容量のホットがうまい。
 
昨夜は良い寝床がみつからず、広大な原っぱの隅っこにテントを張って寝た。
どこかでずっと吠えまくる犬がうるさくてよく眠れず、
おまけに早朝5時頃にテントを撤収していたら、少し離れた家の人にみつかってしまう。
 
まだ暗い朝5時から家の人が活動しているとは!
幸いにも彼らはいい人だったようで、通報されることもなく、
「何か食べ物はいるかー?」なんて聞いてくれたりもする。
貧乏バックパッカーとでも思ってくれたのだろう。そのとおりだ。
 
申し出はありがたいが食べ物は特に必要ないので、これ以上目立つ前に速攻で出発。
それにしても、野宿シーンを人にみつかってしまうとは。俺もヤキが回ったか。
西部に比べて寝床を見つけにくくなっているのは確かなので、
今後はより慎重に寝床を探すか、モーテルを活用していかないと。
 
イメージ 2
 
さてと、もうこんな走りにくい道は脱出しよう。
路肩が皆無の状況は今後もずっと続くだろうし、その上この道はクルマが多すぎる。
この交差点で左折し、75から68という細めの道を経由してジョージア州まで脱出作戦だ。
 
 
イメージ 3
 
曲がってすぐの75号線。
アラバマ初の広い路肩があって喜んだが、これもあっという間になくなってしまう。
フッ…。
やはりアラバマ州とは縁がないようだ。
 
イメージ 4
 
今日も暑くなってきたのでガソスタで日陰休憩。
豪快にトラクターが突っこんできて、普通に給油している。
個人的には北海道でも見たことがない光景だ。
のどかだねぇ。
 
イメージ 22
 
アメリカにも自動販売機はごくたまにあって、
それも動いてるのかいないのかよくわからないものが多いのだが、これは生きていた。
 
自販機を活用できれば重たい水分を背負うことなく酷暑の中を進める。
お釣りでもらったはいいがほとんど使いどころのない1ドル札を使ういい機会でもある。
しかしこの機械、たいがい1ドル札しか入らないから他の札や硬貨は減らないんだけどな。
 
イメージ 5
 
75号はすぐに終わって、今度は68号線。
アラバマ名物路肩のガタガタが颯爽と復活。
スパニッシュっぽい気のいい兄ちゃんが、
 
「クルマに乗っていきなよ!」
 
と言ってくれるがここは走る。路肩のガタガタを指さし、
 
「こいつのせいで困ってるんだよ!」
 
イメージ 6
 
クルマの流れに合わせて乗ったり降りたりを繰り返しつつ、裏道街道をゆっくりと進む。
明日にはアラバマを出てジョージア州に入れるだろうか。
ジョージアに行っても状況は同じかもしれないが、その時はそれであきらめもつく。
 
今日は土曜だからか、爆音バイク集団が多い。
爆音が好きで群れるような連中は自分を大きく見せたいんだろうな、といつもと同じようなことを考える。
しかしその行為は逆効果だ。少なくとも俺には。
 
イメージ 7
  
コリンズビルという、小ぎれいな町に着いた。
しかし今日はよく照る。
腕、とくに右腕の水ぶくれがひどい。
もはや火傷。ヒリヒリ痛いのなんの。
こうなるからTシャツは極力避けたかったんだよ。
 
町の入口で3人組に話しかけられ、お馴染みの旅の理由を聞かれ、答えるのが面倒なのでカードを渡す。
このやり取りには大した感慨もなし。
同じことの繰り返しで感情が薄れてきたのだろうか。
 
この町でも自販機でジュースを買う。マウンテン・デューは日本でもアメリカでも同じ味。
12オンス、355mlのジュースは自販機で75セントが相場のようだ。
ガソスタで買うより安くていいのだが、ムダにコインが増えるので1ドルのほうがマシな気もする。
 
イメージ 23
 
本日のテント・寝袋・カッパの乾燥風景。
 
誰にも話しかけられないところをみると、
通りがかるクルマのドライバーには一種異様な光景なのかもしれない。
 
イメージ 8
 
道路沿いの木陰で休ませてもらっていたら、その家の人が帰ってきた。
 
「さっき歩いてるところを見たよ。ゆっくりしていきなさい。」
 
いい人で良かった。
今日の日射しはまさに殺人的だが、このあたりには日光を遮るものがほとんどない。
木陰は貴重だ!
 
イメージ 9
 
別の木陰で休んでいたら、今度は心優しき青年が冷たい水を2本もくれる。
俺が一輪車で旅をしていることは知らずにただ親切で水をくれたようだ。
腕の水ぶくれも心配してくれて、なんていい人。
きっと天国に行けるタイプ。
 
イメージ 10
 
次の町はセンターという変わった名前。
CENTREとイギリス式表記なところにこだわりと歴史を感じる。
GAとあるのはジョージア州のこと。まだ遠いが、先は見えてきた。
 
イメージ 24
 
ドライバーの視点を想像してみた。
 
イメージ 11
 
センターの町を通過しようとするが、急速に雲行きが怪しくなる。
偶然みつけたモーテルの前でしばし待機していたら、やはり雨が降り出した。
これはモーテル泊が吉かな。
とりあえず受付で値段を聞いてみよう。
受付の彼は最初、
 
「安い部屋はもう塞がっているのだが…。」
 
と申し訳なさそうに言うので焦り、
 
「Too bad room(ひどすぎる部屋) ならあるんだが…。」
 
と続けるのでさらに焦る。
しかしよく聞くとこれは、too bad ではなく two bed の間違いだった。
しかも2ベッドの部屋でも値段は一泊35ドル。
安い!即決!
それにしても、too bad と two bed を聞き間違えるのはさすがにひどい。
南部訛りのせいなのか、俺の耳がおかしいのか、もはやわからなくなってきた。
 
イメージ 12
 
事務所の前に止まっているのが、なにやらカッコいいクルマ。
さっきの受付の兄ちゃんが出てきて一言。
 
「俺はストームチェイサーなんだよ!」
 
イメージ 13
 
ある時はモーテルの受付、しかし正体はストームチェイサーの彼。
 
嵐が近付くと雨雲を追跡していって調査するとかなんとか、そういう仕事らしい。
よくわからんが相当にアツい。
今まさに巨大な黒雲が接近し、彼の持つ無線がガーガーとやかましく鳴りまくっているというのに、
彼は俺が今まで泊まってきたモーテルの中でも一番バカ丁寧にモーテルの設備を説明してくれるのであった。
俺のことなんかいいって!テレビなんか見ないし!
それよりも早くストームをチェイスしに行ってくれ!!
 
イメージ 21
 
うむ、たしかに2ベッドの部屋である。
俺にはオーバースペックの部屋ではあるが、これで35ドルなのだから何も不満はない。
 
それにしてもモーテルの値段というのは必ずしも部屋の質に比例しないのが不思議だ。
ひとごとながら、こんな値段で経営が成り立っているのだろうか?
ほかのボロいのに50ドル以上取るようなところがぼったくってるだけなのかな。
 
イメージ 14
 
うまい具合に本日の寝床も決まったので、悠々とお買い物に来た。
雨は止むのかこれから降るのかハッキリしないがもはや屋根を確保したのでどうでもよい。
虹を堪能できるのも気持ちに余裕があるからに他ならない。
 
イメージ 15
 
テネシーやアラバマでよく見かけるスーパー、ピグリーウィグリー。
なんとなくお気に入りの店だが、
陽気そうなブタのマークの店で大量の豚肉が売られているのはアメリカンジョークに違いない。
 
イメージ 16
 
ところで、このAのマークはこのあたりのクルマによく貼られているもの。
これが何なのか以前からちょっと気になっていたが、ようやく判明した。
 
イメージ 17
 
これだな。
アラバマ・クリムゾンタイド。
何かのスポーツチームなのかと思ったら、これはアラバマ大学のスポーツチームの総称であるらしい。
 
他の州でもそれぞれこの手のステッカーを作ってあちこちにベタベタ貼っていたのを見た。
アメリカでは大学スポーツがとても盛んで、プロリーグ並に盛り上がるようだ。
地元愛を大学で表現するというのが日本人にはちょっとわかりにくいかな。
 
イメージ 18
 
雨が降る直前、本当にたまたま目の前にあった、センターモーテル。
たぶんこの町で唯一のモーテルだろう。
 
イメージ 19
 
夕暮れ時で、晴れているのに雨は降るという妙な天気。
こりゃ今日のストームチェイサー出動は不発に終わったかな。
 
残念なことに室内だとWIFIが入らないので、ネット関係はこうして部屋の外でゴソゴソやるしかない。
安いので文句も言わないけどね。
  
イメージ 20
 
ピグリーウィグリーで気負いこんで買ってきたハンバーガーの3コセット。
さすがにちょっと多かった。
たまに宿に泊まると調子に乗ってつい食べ過ぎる。
 
今日の走行は68キロ。
メインストリートをパスしたので幾分はユニサイクリングができた結果だ。
明日にはジョージア州!だといいが。