4月6日(火) セルフォスの嵐

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ようやく外が明るくなってきた。
しかし、嵐か台風並みの凄まじい風は、落ち着く気配がまるでない。

次の町まで35kmほどあるらしいが、
これほどの強風と寒さでは、一輪車はおろか自転車やバイクですらとても走る気がしない。
そもそもこんな荒れ狂う風の中でテントの撤収なんかしたくない。

先を急ぎたい気持ちはあるが、
今日のところは休養日と割り切って、橋の下のテントで休むしかないかな。
意外としつこいヒザの痛みも一日休めば少しは和らぐかも知れないし。
時期を待つ…。

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テントから外に出ると強風でテントが歪んでいる。
中に何もなければ2秒でフッ飛んでるところだが、
こんな時に限り、重い荷物は役に立つ。
もし昨夜、なんにもない荒野でキャンプしてたら、随分おもしろいことになっていただろう。

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街はうっすらと雪に覆われている。
気温は2度。でも風が強いせいで異様に寒く感じる。

誰だ、アイスランドと北海道が似たような気温だとか言ったヤツは!
こっちのほうが断然寒いわ!!

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寒いけどヒマなので、テントを出たり入ったり。

セルフォスの街に2つあるはずのゲストハウスは、なぜかやはり見つからない。
ホテルセルフォスは病気にでもならない限り入る気がおきないリッパな建物だし、
こりゃやっぱり今夜もテント泊になるんだろうか。
また長い夜を耐えることになりそうだ。

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完全図解・橋の下。
左下あたりにマイホームがある。
偶然みつけたとはいえ、この非常時に備えるにはナイスな場所だと言わざるをえない。
時々、橋の近くを通りがかったアイスランド人がテントを見つけてギョッとする。

雪の舞う中、またしても街へ。
テント生活はヒマだし寒い。
一応持ってきたアイスランド語の本を今さら読んでみるが、大して役に立たない。
タック(ありがとう)だけ言えればなんとかなりそうな気がする。
さて、もう何度目かになるスーパーマーケットの中で暖をとることにしよう。

やはり店の中は暖かい。
中でも一番暖かいのは、グリルした肉類などを並べているあたりだ。

でもなぁ。そこなぁ。

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コレがあるんよなぁ。

アイスランド名物・羊の頭。

なんでもアイスランドの伝統的な料理らしい。
料理って言うか…ただの焼いた羊の首…。
しかもそんなものをスーパーにずらっと並べるのはどうかと…。

しかしこれ、一体どこをどのようにして食べるんだろう。
とりあえず虚ろな目でこっちを見るのはやめてくださいね。

あぁ、冷えと寝不足と疲れで身体が粘土のように重い。

どうせ今夜もテント泊になるのなら、
今のうちだけでもどこか暖かいところで温かいものを飲み食いしたいところだ。
でもこの辺のスーパーやファーストフード店には決まって冷たいコーラしか無く、
今飲みたくてたまらないホットコーヒーにありつくためには、
カフェかレストランのような場所に入るしかない感じだ。
小さな店内にアイスからホットからなんでも置いてある日本のコンビニはやはりスゴいと思う。

しょうがない、カフェにでも入るか…と思ってセルフォスの街並みを歩いていると、
すでに何度か前を通った自転車屋が目についた。
ひょっとしたら、今のよりはもう少し乗りやすいタイヤがあるかもしれない。
マイナーな24インチだからまず無いとは思うが、
どうせヒマだし、見てみよう。こんな機会は今しかない。

そして入店。
まだ若い感じの店主が気さくに対応してくれるが、
置いていた24インチのタイヤは細すぎてダメだった。
残念だがしょうがない、あのタイヤでずっと走るしかなさそうだ。

店を去り際、なにげなく、
「セルフォスにゲストハウスってあるかな?」と聞いてみると、
「あるよ。」とあっさり。
地図を描いて教えてくれるが、
MENAM?あのあたりにそんなゲストハウスあったっけ?と悩む俺。

すると自転車屋の店主は携帯を取り出し(待ち受け画面は赤ちゃんだ!)、
そのゲストハウスに電話をかけてくれた。

「営業してるらしいよ。今からクルマで連れて行ってあげよう。」

そう言って、おもむろに店じまいの準備を始める彼。
いや大丈夫、一人で探すからと言っても、「気にするな!」と取り合わない。
結局彼は本当に店を閉め、俺をクルマに乗せてゲストハウスまで乗せて行ってくれた。
店から300mぐらいしかないんだが…。

そのゲストハウスというのは、ホテルセルフォスの隣にあるレストランの2階だった。
外からいくら見ても『ゲストハウス』とは書いてない。こんなもんわかるか!!

「昨夜は橋の下のテントで寝たんだ。寒くてしょうがなかったよ。」

と言うと、「アンビリーバボー!!」とまさしく驚愕の表情で答えてくれた彼。

「今夜はあったかいところで眠れそうでよかったね。」

そう言い残してクルマで去っていった。

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レストラン、メナム。
2階がゲストハウス。

1階のレストランでチェックインを済ませ、
大急ぎで橋の下のテントを撤収し、大荷物を抱えて部屋に持ち込む。

アイスランドに来て、初の有料宿泊だ。
一泊7900IK(アイスランドクローナ)。
レートはコロコロ変わるが、
今のところ大体0.8を掛けると日本円になるっぽいので約6300円ぐらいか。
痛い出費ではあるが、寒さと疲労とを考えれば妥当な線だ。
何より有料宿泊嫌いの俺がここに泊まることを決めた時点で、
もういいとこボーダーラインだったのだろう。

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部屋は個室でキレイで快適。
何より暖かいのが本当に素晴らしい。
当たり前だがシャワーもトイレもあるのが嬉しい。
ちなみに日本を出て初のシャワーである。

談話室にはテレビがあって、少し観てみると、
アメリカのドラマがアイスランド語字幕付きで放映されていた。
なるほど、アイスランド人が英語を話せるのはこのせいかと思う。
字幕付きのドラマや映画って、英語の教材としても優秀だ。
本人が興味を持って観るのでなおさら効果が高い。

日本でも吹き替えをせずに全部字幕にしたら、
みんな勝手に英語を覚えてしまうんじゃなかろうか。
まぁ日本には国産ドラマが大量にあるからさほど意味はないかな。

こんな風にテレビのことなんかをのんびり考えられるのも、
今いる環境が暖かいおかげだ。
窓から外を見ると、依然として風が強くて大変寒そうである。
気温が変わるだけで、こうまで心境が変わる。

自転車屋の彼のおかげで、助かった。
今日は快適な部屋で、何も考えずに深く眠れそうだ。

それにしても、なんで仏陀が…。