4月7日(水)その2 同類

走るか、歩くか、座って休憩するか。
このシンプルな3種類しかやることがないんだよ。

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また休憩。
重いリュックを下ろし、路肩の斜面に座りこむ。
ふーー。

あれ…? 
俺が来た方向から、何か細いモノが近づいてくる。

あぁ、自転車だ。

チャリダー…か。

その自転車乗りは、路肩に座り込んでいる俺のほうに笑顔で近づいてきて、

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自転車を倒し、止まった。
アイスランドの道の上で、初めて旅人に出会ったよ。

彼はラッツィ。ハンガリー人。
アイスランドに来て4ヶ月で、今はレイキャヴィークの学校に短期留学している最中らしい。
お互い、このオフシーズンに珍しいモノを見たという気持ちがあふれ、その場で盛り上がる。

彼は噴火した山を見るために、レイキャヴィークからわざわざ自転車で来たらしい。

「噴火ってどこでしてるの?」

「スコーガフォスのあたりだよ。ホラあそこ、遠くに白い噴煙が見えるだろう?」

指さされてみると、そういえば小さくそれっぽいものが見えなくもない。
よし、じゃあ噴煙をバックに2人で写真撮ろうぜ!

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噴煙、写ってないよ…。

しばらく話をしたのち、じゃあそろそろ行くかと言って出発。

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併走しながらラッツィが撮ってくれたやつ。
こうして見ると確かにちょっと異様だ。

そうして彼は、スコーガフォスに向かって走り去って行った。
…チャリ、速っ。

それにしても、アイスランドでハンガリー人に会うとはなぁ。
先日クルマに乗せてくれた人はドイツ人だったし、アイスランドってわりと外国人が多いよなぁ。

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やがて、クヴォルスバトルの町に着いた。
さっきのヘトラと同じく小さな町だが、ここを過ぎると今度は80キロぐらい次の町がない。
なので、今日はここで一泊するか?と一瞬考えるも、時間はまだ昼の3時だ。
疲れてはいるが、やはり天気のいいうちにもう少し距離を稼いでおきたい。
実際、一輪車で走ること以外、他にやることもないしなぁ。

店で水と食料を買い込んで、再び出発。

おっと、町の周囲ではやはり一時的にクルマの数が増える。
今までどおりに左側を走ってたらちょっと危ない目に遭った。
気をつけよう。

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ラッツィと会った時よりもう15キロぐらい進んだので、
ようやく噴煙が写真に写るぐらいにまでなってきた。

写真といえば、そういやさっき、
クルマで俺と併走しながら嬉々として動画撮ってたヤツいたなぁ。
別にいいけど、危ないぞ。
クルマでスレ違いざまに俺に向かってクラクション鳴らして大騒ぎしてた女の子たちもいたわ。
なんだか知らんが、危ないぞ。

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ずーっと噴煙を見ながら走る。
あの白い山々の向こう側あたりに火山があるらしい。

元々はマイナーなアイスランドを人知れずひっそりと走ろうと思っていたのに、
俺が出発する数日前にいきなり噴火して世界的なニュースになってしまったのだ。
まいったねぇ。
今じゃさっきのラッツィみたいに、火山見物ツアーが大人気だとか。
アイスランド人もなかなか商魂たくましいねぇ。

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午後6時。クヴォルスバトルの町を出てそろそろ3時間か。
少し離れた場所に大きな滝があるけど、寄り道はしんどいのでしないのだ。

この間、ただひたすら走っていた。

あたりには、雲以外に動くものがない。

無音。

自分が出す音と、自然が放つ微かな囁き以外、なんの音もしない。

余計なものがないんだ。

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そこから少し行ったところに、ちょっとしたパーキングスペースを見つけた。
今夜は泊まることにした。
観光案内板の裏に鮮やかな手つきでテントを設営。我ながらシブい位置取りだ。


時間はまだ6時過ぎで明るい。
寝るには早い気もするが、次の街のヴィークまではあと60キロもあるし、
これ以上ムリをすることもあるまい。
今日は71キロも走って疲れた。まぁいいでしょ。休養も大事だ。

あーあ、明日も晴れるといいんだが。