4月11日(日) 生きて走る

ものすごく抽象的…哲学的な本を読まされていたような夢を見た。
それに、なぜか桜の苗を探していたような気がする。

…目が覚めると、なぜかしんどい。
コテージの中がひどく乾燥している。温水暖房をかけ過ぎたようだ。

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コテージを出て、3日連続の定点観測。
重たげな曇り空ではあるが、今のところ雨はやんでいる。
今日は出発できるかな。

とりあえず、朝食だ。

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今朝もバイキング。昨日と似たようなもん。
もはやベテランの俺は手際よく、好物ばっかり盛り合わせ。
ライバルのメガネおばさんは居ないようなので、ゆっくり落ち着いて食えそうだ。

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なかなか素敵なレストラン棟。農家の宿とは思えない。

でも昨夜からなぜかパソコンでインターネットが繋がらず、
今日の天気予報がわからないのが少々気がかりだ。
でも全体の流れとしては回復傾向らしいので、やはりこれから出発しようと思う。

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すっかり慣れ親しんだコテージに戻り、出発の準備をする。

そんな頃、実家からメールが来た。

叔父が、亡くなった。

突然の話。
俺が生まれた時からずっと可愛がってもらった叔父。
なんで、今。

旅を中断して日本に帰ろうかと、一瞬思う。
でもそれは不思議と一瞬だけで、
やはりこのままアイスランドの旅を続けよう、とすぐに思い直し、もう変わらない。

予定を変更して帰国後にそのまま実家に寄ると伝え、
俺は再び、出発の準備を始めた。

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犬に見送られ、宿を出る。

本当にいいゲストハウスだった。
一昨日、ここに転がりこんでいなかったら、今頃どうしていたかしれない。

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宿からダートを3キロ歩いて、2日ぶりに町に戻ってきた。

何度か耳にもしたハズだが、この町の名前だけはどうしても発音できない。
ややこしい上に長いのがいけない。
そのうち機会があれば、アイスランド人にゆっくりと発音してもらうとしよう。

それはいいとして、この店、平気な顔して閉まってるよ。
あ、今日は日曜か…、しまった。
アイスランドの店は基本的に日曜は休み、土曜も休みか半日営業だったりする。
曜日感覚がなくなっていたのですっかり忘れていた。

これから長い道のりなのに、しょっぱなから食料を買えないとは…。
まぁ温存しといた手持ちがまだいくらかはあるので、それでしのぐしかないな。

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はーい、次の町まで201キロ。
やったネ!!

次の町までがこれほど長いのは自己新記録だ。
だがヴィークで出会ったグーナさんの情報が確かならば、
途中で1ヶ所だけ、ガソリンスタンド兼用の店があるという。
この町で食料が買えなかった今、その店をアテにするより他はない。
まぁ水はともかく、食料だったら1日2日は食べなくてもなんとかなるけどな。

さぁ、出発!!

ってところで、まさかの雨…。
町で少し雨宿りして、よっしゃ止んだ!と思って走り始めると、やっぱり雨…。

なんなんだ!いいかげんにしてくれ!!
ようやく全ての装備を乾かし、宿を出たところであっという間に濡れネズミに逆戻りかよ!

またしても町に戻ろうかとも思ったが、
路肩にしゃがみこみ、カッパをかぶってしばらく耐えてみることにした。

ダメだ。このカッパ、やっぱり全然使えない。
そこで今度は、ホームセンターで買ったデカい防水シートを引っ張り出し、それで荷物と全身を覆う。
即席簡易テントみたいなもん?とりあえず、濡れはしない。

雨は意外としつこく降る。シートの下でひたすら耐える。
やっぱり、とにかく、雨だけには気をつけねばならない!!

今日から雨も上がるんじゃなかったのか…。
この間、数分だったかも知れないが、数時間にも思えた。

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ふぅ、どうにか、やり過ごしたか。
虹が見えるよ。…綺麗だ。

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それからは、雲の流れを見上げながら走る。
雨雲っぽいのが近づいてきたら、軒先を借りられそうな農家の近くでやり過ごす。
あの黒い雲を待ってから…今のうちに一気に…とか、そんな感じ。

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途中にあった滝と、それを見物中の観光カー。
俺はあいかわらず国道から眺めるだけ。

アイスランドは滝が多い。
台形をした山にたまった雨水や雪解け水が落ちてくるトコ=滝なので、多いのも頷ける。

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この辺の地形の特徴だろうか。
天然の城のように台形をした山や岩が多い。
なんだかアメリカあたりの別の国にいるような感じがする。
アメリカ、行ったことないけど。

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いつしか雨はすっかり止んでくれた。
そして今度は、追い風が強い。
一輪車に乗って適当に漕いでいるだけで、グングン進む。と言うか、進まされる。

ガンガン走ってるのに、遠くのあの岩山は一向に近づいてこないという不思議。
ムダに広い…。

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遠くに見えるあの白いのは、氷河だろう。
アイスランドは国土の12%が氷河らしいので、あれも上から見ると相当デカいものと思われる。


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あの氷河のあたりから溶けてきた水が、こうやって大河になるわけだ。
そんな氷河も温暖化で年々後退していってるらしい。

それにしてもこの橋…長い上に走りにくいよ!!

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ほとんど休憩もせず、歩きもせず、ひたすら一輪車に乗って走ってる。
これぞまさに、ユニサイクルツーリング。
追い風ってすごい。
一輪車ぐらいのスピードで、風向きがこんなに影響するとは思わなかった。

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疲れもあまり感じない。
今日はできる限り、ずっと走っていたい。

生老病死、愛別離苦。

そんな言葉が脳裏に浮かぶ。

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20時。国道沿いの休憩スペースで、テントを張る。
まだギリギリ明るい。
少し腹が減った気がするのは、
この時間が昨日まで2日連続で『本日のスープとパン』を食べてた時間だからだろうか。
悪いな、今夜からは『本日のクッキーとビスケット』に逆戻りだ。

背後にあるゴッツイ物体は、
1996年に火山噴火で氷河が溶けて洪水が押し寄せた時の鉄橋の残骸だそうだ。
またモノ凄いオブジェですこと。
火山の噴火も充分怖いが、それによって氷河が溶けて洪水が押し寄せるなんてとんでもない話だな。

今日は宿からの出発準備や雨の影響もあって、
昼過ぎからようやく本格始動したのに、終わってみれば走行70キロ。
追い風とはいえ、延々ひたすらよく走ったものだ。
サイクルコンピューターが示す平均時速9.8キロは、
おそらくアイスランドに来てからの新記録だろう。

ともあれ、200キロの旅、初日の終了だ。

明日はどうなるかな…。