4月21日(水)その2 雪氷峠

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目の前に、山が。

上に向かって伸びていく道は、途中から見えなくなっている。
どこに行き着くのかまったく不明だ。
この山の裏側で下り坂になっているのか。
それともまだずっと登りが続くのか。

もう19時を過ぎている。暗くなるのは21時ぐらいだ。
あと2時間しかない。

よし、とりあえずもう少しだけ登ってみて、
ダメそうならキッパリと引き返そう。
そして山の麓のあたりでテントを張って野宿しよう。

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20時前。
まだ峠の頂上は見えてこない。
道は少し凍りかけている。
坂がキツイ。

どうする。
もう少し、行ってみるか。
引き返すならそろそろ潮時っぽいが…。

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今まで通ってきた道を見下ろす。
と言っても真っ白なだけでよくわからない。

今さっき、前からクルマが下りて来た。
クルマを見たのはもうずいぶん久しぶりだ。
呼び止める間もなく下って行ってしまったが、
ああやってまだ向こうからクルマが来るということは、
この先の山道はそんなに長く続かないということだろうか。
まぁ少なくとも、クルマが通れるぐらいの道ではあるいうことだろう。

こうなったら、峠の頂上を目指すしかないか。
そんなに遠くはないハズだ。

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つづら折れの坂を登る。
おいおい…もうすでに結構な標高なんじゃないか。

もう20時だし、あたりはすっかり冬山だ。

引き返すタイミングを間違えて、俺は今、遭難へとまっしぐらなんじゃないのか…。

頂上はまだか!!

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うわああああ。
ついに完璧な雪道!!
これはもう、さすがにこのあたりが頂上なんじゃないの!?

そろそろ頂上を抜けて下り始めないと、本気で時間がヤバいんだ。
この直線を抜けたら、向こう側は下りのハズ!!

…と思ったのに。

まだ、登りが続いてるよ…。

マズい、本当にマズい。
この段階で先が見えないのなら、ここからでも引き返すべきなんじゃないのか!?

どうする!どうする!

そんな時、遠くに何か赤いモノを見つけた。

なんだろうあれは。

………。

ここで。

まさかの。

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避難小屋発見!!

うおぉぉぉぉ!!避難小屋!!

さっそく近寄り、ドアをチェック。
よし、開く!!

荷物を持って、中に入る!!

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避難小屋の中。
寝台には毛布もある。

助かった…………。

もう今夜はここで寝るしかない。

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今まで坂を登り続けて来たおかげで、寒さを感じることはなかった。

だが、避難小屋の中でしばらくじっとしていると、だんだん身体が冷えてくる。
こういう時こそインスタントヌードル!!
そう思ってリュックに括りつけていたペットボトルを取り出すと、水がなかば凍っている。
リュックに背負って常に揺れていたハズなのに、凍っている…。
どうやらあたりは、俺が感じていた以上に低い気温であるらしい。

危ないところだった。
ここに避難小屋があって本当に良かった。
気温が低いとは言え、小屋の中は風が入ってこない。
ここで寝袋に入り、さらに毛布にくるまれば、どうにか寒い思いをせずに寝ることができるだろう。

21時を過ぎて、あたりが暗くなりつつある。
避難小屋がなければ、今頃は峠を下りているところだろうか。

強風の次は、雪山か…。
まったく、人をビビらせる工夫が随所に施されているな、アイスランド。

今日は町を出たのが11時過ぎだったとは言え、たった38キロしか進めなかった。
しかし、今までで最も疲れた。
一日中強い向かい風で、最後が雪の峠。そりゃあ疲れる。

防寒着とバーナー、食料と水があったからこそ、あの時間から峠に挑む気にもなった。
しかし、やはり峠の手前で一泊しておいたほうがよかったのかもしれない。
結果的には偶然に避難小屋を見つけたのでなんとかなっているというだけだ。
頂上付近で雪に阻まれた時はさすがに焦った…。

ともあれ、今夜は寝よう。

すべては明日考えればいいことだ。

疲れた……。