5月1日(土) 居候、漂う

朝帰り後、少し寝て、11時には目が覚めた。
昨夜はビールを3杯ほどしか飲まなかったので、酒も残っていない。

あぁ、今日から5月かぁ。

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もう1度ブレーキの修理にとりかかってみる。

うん、少しはマシになったような気がするな。
ひょっとすると直ったかもしれない。
これで直るのなら、やっぱり自転車屋なんか行かなくてもよかった。

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しかしとにかくどこにでも犬か猫がいるよなこの家は…。

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部屋でゴロゴロ。
昨日会ったカレの妹はカトリンだが、ここはもう1人の妹エルダの部屋であった。
ドアに写真が貼ってある可愛らしい女の子がたぶんそのエルダ。
で、彼女は今ではカトリン以上にビッグであるとグンラは語る。

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前からやろうと思っていた服の修繕をおもむろに始める。
なんせ服に替えがないので、それを脱いで縫うような機会がなかなかないのだ。

あの小型犬はパメラ。
見かけによらず、グンラ家では『狂犬』と呼ばれている激しいヤツだ。
普段なら知らない客に対して吠えまくるらしいのだが、俺にはそうでもないと皆が不思議がる。

「同じ獣の臭いがするからだろう。」

そう解説しておいた。

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天気がいいのも今日までということで、
リンダがクルマでアークレイリの周辺をドライブしてくれることに。

アークレイリの街の背後にそびえる山をずーっと登っていくと、

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スキー場がある。
街のすぐ近くにこんなに広いスキー場があるとは、なんていい環境なんだ。
しかもここのリフト、ちゃんとイスがある!
よかった、アイスランドにもちゃんとイスつきのリフト、あったんだな…。感無量。

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アークレイリをバックに、リンダとグンラの親子ショット。

もう5月なのにこの雪。
こんな環境だとスキーやボードにさぞかし凄い選手が生まれそうな気がするんだが。
うーん、でも人口が少ないからなぁ。

ちなみにアークレイリの人口は9000人だそうな。アイスランド第2の街にしては意外と少ない。

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雪山を降りて、今度は森へ。
森…まぁ、林ぐらいではある。

これでもきっとコツコツと植林したのだろう。
アイスランドにはとにかく木がないことを本人達も自覚しているらしく、
あちこちで植林の試みはなされているようだ。
でも今だに森と呼べそうなものは見たことがない。
長い時間がかかるのだろう。

さて次は、カトリンの卒業制作の展示を観に行くことに。
ほーぅ、アートを学んでいるというカトリンがどんな作品を作ったのか、ちょっと興味がある。

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これか。
自分で自分にタトゥーをしている絵らしい。

うーん、この絵より昨夜のゲイシャルックの方がよほどインパクトがあった。
今日は普通の服を着ていてるのがもはや物足りないぐらいだ。

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グンラ宅に戻って昼寝。
カップまで猫…。

睡眠不足のせいか、とても眠い。

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今日の夕食は唐揚げ。なんの肉だか聞くの忘れた。
とにかくこの量!!
毎日こんなの食ってたら、そりゃあ巨大化するわな…。

ライスはひょっとすると俺のために炊いてくれたのだろうか。
やはり米はいい。
夕飯を食べに現れたカレが、タイの甘辛いソースを出してくれる。写真後ろのやつ。
これはこれでうまい。
ちなみにカレの奥さんはタイ人。そして現在別居中。

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グンラは一日の大半をこの場所で過ごしているようだ。
テレビを観たり、編み物をしたり。
ちょっとわかりにくいが手前にあるのは編みかけのセーターで、
これを店におろしていくらか稼いでいるらしい。
テレビと編み物と犬&猫たちの相手をしていれば、毎日そんなに退屈はしないのだろうか。

カレが「今夜もバールに行くか?」と聞いてくる。

「いや、さすがにうるさい場所はもういいよ。静かな店なら行ってみたいけど。」

「そういう店もあるよ。オトナが集まるような店だ。バンドの生演奏もあったハズだ。」

「ふーん、それなら行ってみてもいいかな。」

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そんなわけで、またしても夜のアークレイリに出没ですよ。
5月のアイスランドは、23時を過ぎるとさすがに暗い。

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この店らしい。
中にはバーがあって女性のバーテンダーが控えている。確かにオトナな雰囲気だ。
いやーいいじゃないですか。

カレとビールを飲んでいると、客がだんだん増えてきた。
どうやらこの店の客層は、オトナというかもはや中高年である。た、たしかにオトナだが…。

そのうち、ステージにバンドが入った。
ギター、ベース、ドラムのシンプルな3人組だ。

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よくわからんけど、雰囲気で。

演奏はよかった。ギター兼ボーカルがなかなか聴かせる。
曲目は欧米の懐メロのたぐいのようだ。
ここでも興が乗った中高年のお客さんたちが踊っている。
人生楽しんでるなぁ。

なるほど、ここがオトナのバールね。堪能したよ。
アイスランドのまた別の面を見ることができた。

それにしてもカレ、昨日は10代の子どもたちが集まるディスコで、
今日は中高年の人々が楽しむバールだ。
中間はないのか、中間は。

今日も昨日みたいに朝の4時まで起きているのはつらい。
カレに言って、早めに店を出る。午前2時ぐらいかな。

カレはまたしても携帯でリンダを呼ぼうとするので、

「おっと、リンダには電話しなくてもいいよ。歩いて帰れるから。
 あとは家のカギをどうにかして開けてくれれば、誰も起こさずに家に入れる。
 せっかく寝ているリンダを起こしたくないんだ。」

「そうか、それじゃあボクの家に来るかい?ウチで寝ればいい。」

「あぁ、それは助かるよ。そうさせてもらおう。」

そうして、カレのアパートへ。

リビングのソファーで寝かせてもらおうと思っていたのに、
なぜかカレがソファーで寝ると言って譲らず、
俺はカレの部屋のベッドで寝ることになってしまった。

はぁ、夜遊びはもういいな。

なんにもないところを一輪車で走ってるほうが俺には向いてるのかも知れない。
でも昨日今日を通じて、カレと色んなことを話せたのはよかった。

彼は両腕にタトゥーの入った一見ヤバそうな男だが、
実はもの静かで思慮深く、笑う時には照れ笑いが多い。
そしてグンラ家の中ではなぜか彼だけが細身である。

この家のリビングにはタイ人の奥さんが持ってきた仏像が置いてあって、
カレはわけもわからず、奥さんに言われるまま、毎朝お供えの水を換えている。
別居中なのに律儀なヤツなのだ。

今日もたくさんの新しい人たちを見た。
知り合った人も何人かいた。
カレのイトコのクリスティアンや、元職場のアル中の同僚などなど。
ユニサイクルがらみでやっぱり握手もされた。

でも、どうやら、俺の気分が高揚するのは、この場所ではないようだ。

雨雲が去って、先に進める時を、静かに待つ。