4月30日(金)その2 ナイトライフ…

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長い散歩を切り上げて家に戻ると、ほどなくして夕食。

グンラとリンダが腕を振るってくれたこの料理は、ええと…。
ミートソースに米が混じってて、それをパンに乗せて食うという、何か斬新な…そんな料理。

米とパンを一緒に食うという発想に驚きはしたが、食べるとおいしい。
しかしグンラ婆さんに勧められるまま食い続けると、満腹では済まなくなる。

『この料理はとてもおいしい。そして俺は少食なんだ。』

一見矛盾するようなこの事実を、どうやったらグンラに理解してもらえるのだろうか…。

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食後。さらにビールまで振舞われている俺。

ここでリンダが、家に一人の男を連れてきた。
シャレではないが彼はカレと言って、リンダの息子だ。

カレはリンダやグンラよりは英語がわかるようでありがたい。
俺と熟女たちとの間の通訳もしてくれるし、俺も聞きたかったことを色々と聞ける。
そうやって少し打ち解けてきた頃、カレが言う。

「これからバールに行かないか?」

バールはバー、いわゆる飲み屋?
ちょっと楽しそうなので、二つ返事で同意する。

カレは右脚が悪く、歩くのも大変そうだ。
かつて船乗りとして働いていた時に、脚が何か重いモノの下敷きになってしまったらしい。
そんなわけで、どこかに移動する時は必ずリンダがクルマで連れて行くそうだ。

リンダカーに乗って、まずはアークレイリの別の場所にあるカレのアパートへ。
そこからリンダは帰っていき、俺はカレのアパートにお邪魔する。
バールの開店は23時かららしいので、少しここで待つというプランのようだ。

リビングでテレビを観つつカレと話していると、誰かが家に入ってきた。
やたらと屈強でケンカの強そうな男だ。
彼はオスカー。カレの妹の彼氏だそうな。
どうやらこのアパートには、カレの他に妹のカップルも同居しているようだ。

オスカーは見た目はゴツいが陽気な性格らしく、内心ホッとする。
だがホッとしていたのも束の間、また誰かが家に入ってきた。
今度は…うわっ、なんかスゴイ格好のデカイ女が!!

ハデな柄で真っ赤な生地の着物?のようなモノを着て、
アタマにカンザシ?のようなモノを挿した、壮大なスケールの金髪女性。
ひょっとして彼女が、カレの妹のカトリンか!?

「ハーイ!あなたは日本人ね?ホラ見て、ゲイシャよ!」

ゲイシャ…?
ごめん、それ力士。

どうやらカトリンさん、少し酔っぱらっているようだ。
なんでも今日は高校の卒業パーティだそうで。
オスカーが俺の耳元でつぶやく。

「彼女、俺より強いんだぜ。」

「よくわかるよ。」

そして一行は、カレのアパートから歩いて街の中心部へ。
カレと二人で静かに飲むのかと思っていたら、なぜか一行になっている…。

そしてやって来たバール『カフェ・アモール』というのがまた、とてもうるさい。
音楽がガンガン鳴り響き、皆さまが踊っておられる。
これはバーというよりディスコだろうが!!
しかも今夜は卒業パーティなので、やたらと大量の学生たちが出入りしてハシャいでいる。
中にはカトリンと同じくゲイシャルックの連中もおり、
ミッキーマウスのヤツもおり、アーミールックのヤツもおり、なぜかピングーまでも。
ハイテンションのカトリンが近づいてきて、耳元で怒鳴る。

「今夜は仮装していればドリンクが安いの!!まだ飲むなら私が買ってきてあげるわよ!!」

そんなわけで、2杯目のビールを飲むことに。
まったく凄まじい喧騒だ。うるさいわ暗いわで、落ち着いて話すどころではない。
それにしてもアークレイリにこんなに若者がいるとは知らなかった。
ちなみにアイスランドでは飲酒は18歳からだそうです。



なんのオチもない、やかましいディスコの雰囲気を伝えるためだけの動画。

そのうちどこかに行っていたオスカーが戻ってきて、

「店を変え…か!?近…にカフェ・アークレイリっ…んだ!!
 そこ…た、ズンズンと…重低音がたまん…だぜ!!」

まわりがうるさ過ぎて聴こえんわ!!
とりあえず店を変えようということらしいので、ついていく。
ここよりは静かなことを祈ろう…と思ったら、やっぱり余計にうるさかった。

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なんだこりゃ。たぶんカフェ・アークレイリの前あたり。
もう0時をとっくに過ぎているのに、皆さんのテンションはとても高い。
踊っている皆さまをよそにイスに座ってボーッとしているのは俺と、カレぐらい。
…カレ、お前もか!

「なぁカレ、こういうとこ、よく来るの?」

「来ないよ。」

来ないのかよ!!じゃあ連れて来るなよ!!

いやいや、きっと彼なりに俺を楽しませようと思って色々考えてくれたに違いない。
それにしても、アイスランドでディスコに闖入することになろうとは…。

ここでジッとしていても浮きまくるだけなので、一念発起して立ち上がり、
皆さまに混じって軽く身体を動かす。
都会なようでも人口は少ないアークレイリ、どうやら踊っている若者たちは大体が知り合いのようだ。
そんな中で一人寂しく隅っこで身体を揺すっていると、
卒業生と思われるミッキーマウスコスプレの女の子が近づいてきて、俺の耳に口を寄せて怒鳴る。

「あなた、テレビに出てたユニサイクル・ガイね!?そうでしょ!?」

「そうだよ!!」

まぁ、それだけなんだが。
しかし似たような感じで、声をかけられたり握手を求められること数回。
最後にはコワモテの警備スタッフにも笑顔で握手された。
他には、タイ人の女の子と少し踊ったり。理由はよくわからない。

そして午前4時。

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激しい音楽が終わり、パッと照明がつく。
一斉に帰り始める皆さま。

ようやく終わった…。

カレと共に店を出る。
外はもう明るい。すっかり朝だ。

さて、これからどうするかな。
カレは自分のアパートに帰るだろうし、
俺はどっか散歩でもして、8時ぐらいになったらグンラ宅に戻るとしようか。

しかしここで、おもむろに携帯で話し始めるカレ。

「今からリンダがクルマで迎えに来るよ。」

えぇ!?
リンダって、朝の4時ですよ!?
そんな時間に母親を起こして送迎を頼むのか!?

しばらくすると、本当にリンダがやって来た!
子どもの夜遊びに、母親が送り迎え!!

うわぁーーーー。
い、いや。考えるな。目の前で起こっている事実だけを感じるんだ!
広い世界には、きっとこういう文化もあるに違いない。
きっとそうに、違いないんだ!

こうして俺は、居候宅に朝帰りをするのであった。