5月2日(日) 借りてきた俺

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朝の10時過ぎ。
昨夜オトナのバールで飲んだ帰りに泊めてもらったカレのアパートを出る。
カレたち関係者全員に『ボロアパート』と称されているここ。築50年は過ぎているそうな。

日曜日のアークレイリの街は静かだ。
ブラブラと散歩しながら、遠回りにグンラ宅の方角へと歩く。

歩いている人は少ないが、クルマはやはり多い。
アイスランドを走るクルマの日本車率は、50から60%というところだろうか。
日本人があまり知らないアイスランドという島には、実は日本車が溢れていた。
パプアニューギニアにすら日本車は大量にあった。
日本という国は本当に凄いと思う。
国というか、日本企業が凄いというべきか。

一般に、日本人は質のよい製品を作ると言われる。
そしてその製品に、自国の文化や主張を織り込んで売るということがないように思う。
コーラやマクドナルドが鳴り物入りで世界に広まる一方で、
ソニーの家電は品質を頼みにじわじわと着実に世界に浸透していった。
そんなイメージが俺にはある。

そんなわけで、アイスランド人の多くは日本製のクルマに乗り、日本製のカメラを持つが、
やっぱり日本人のことはほとんど知らないのだ。

日本製品は『質のいいモノ』として知られ、
そして日本人は、
『質のいいモノを作る経済大国の住人。ときどきニンジャ。』
ぐらいの感覚でしか認識されていないのではなかろうか。
国と国との関係には、無理解という壁以前に、無知という領域が幅広くあるものだと感じる。

で、逆もまたしかりで、俺もアイスランドのことは今だによくわかってない。
だからこそ、旅のしがいもあるというものなのだろう。

もうすぐグンラ宅というところで、24時間スーパーをみつけたので入る。
普通に午前中なのだから何も値段の高い24時間スーパーじゃなくてもいいのだが、
こんなのはアイスランドじゃ滅多にお目にかかれないものなので、偵察のつもりで侵入。

中はほとんど日本のコンビニと同じようなものだった。
そこでクッキーとサンドイッチを買い、その一部を店内のテーブルで食べる。

食べ物はグンラ家で充分に与えられているのに、なぜか自分で選んで金を出して買う食料が恋しい。
自分の妙な行動の源泉が自分でわかるような気もするが、一方でやはり不思議な気もする。
腹いっぱいになったところでグンラ家に帰宅。

寝たり起きたりして過ごす。
なんにもしてないのに、どこか疲れているようだ。

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晩メシ時になるとリンダがカレを連れて来る。きっとずっとそういう習慣なのだ。
それはいいけどカレ、体積がグンラ婆さんの半分ぐらいしかないぞ。

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今日のディナーは、一昨日のやつにチーズを乗せて再加熱したもの?ようわからん。
とにかく味はおいしい。
そしてまたもやライスが付く。やっぱり俺に気を遣ってくれてるのかなぁ?

ところで。
今まではグンラやリンダの『もっと食べなさい攻撃』に対抗する有効な手段を持たなかった俺。
ついに、ついに必殺技を会得!と言うかカレから盗んだ。
一度覚えてしまえば非常に簡単。

「ネイタック!」

と言うだけでいい。ノーサンキューって意味。

今までグンラやリンダの怒涛の親切に対して、
あまり通じない英語でゴニョゴニョ…と訴えても全くわかってもらえなかったのが、
笑顔で「ネイタック!」と言うだけであっさり納得してくれた時のこの衝撃。
あらまぁ、とっても便利!!

旅のアイスランド語は「タックフィーリ(ありがとう)」と「ネイタック」だけで正直何とかなるな…。

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夕暮れ、のようで、もう20時半。

最近では22時頃まで明るい。
一日中明るいという白夜の季節が近づいているのがわかる。

この頃はグンラ家の犬猫にも慣れてきた。
家にたくさん飾ってある絵の一部がカレの作品であることも気づいたし、
最初の頃ほど「遠慮はしないで!」とリンダに叱られることもなくなった。

アークレイリといえば、以前からなんとなく名前だけは知っていた街。
今はこうして、その街の中にある一軒家で、洗濯して服まで借りて居候をしている俺。
なじんでいると言えば、なじんでる。

でも、夜中に部屋でこっそりと、スーパーで買ったケーキを食べる。