5月10日(月)その1 都会の影

朝の4時に日本の知人からの電話で起きる。
国際電話だとは知らずにかけてきたらしい。
数分会話して一体いくらぐらいかかったのだろう。哀れな…。

向こうは午後1時ぐらいだな。
9時間の時差もすっかり身についた。

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まだ明け方なのに、電話ですっかり目が覚めてしまった。
オマケに少し寒い。ヌードルでも作るか。
最近はわりとあったかいのでガスの出番も減っていたが、こういう時はやはり役に立つ。

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そのままの流れで、今日は早めに出発。まだ6時半。

それにしても、あーしんど。
朝から晩まで94キロ走った翌日は、やはりダルい。
ボルガルネスまではあと20キロぐらいか。ふぅ、1メートルずつ着実に進むしかないな。
食料のビスケットも今は受け付けない。吐き気すらする。

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ちょっとした景勝地のような場所を見つけたので、休憩がてら寄ってみる。
景勝地とは言っても、このあたりは道を一歩はずれると、もうずっとこんな感じだ。

世界には人のいない空間が、考えるよりもずっと途方もない量で存在するんだろうなと、今は思う。
そして町に帰ればいずれ忘れるだろう。

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ボルガルネスまであと11キロ。やれやれ、もうちょいか。
あのアークレイリからもう300キロ以上も進んで来たんだな。

思えばコペンハーゲンで25キロ歩いたぐらいで腰と膝を痛めてた俺が、今はそこそこ強くなったもんだ。
でも日本に帰って2ヶ月もすればあっさり元に戻るであろうことも知っている。
人間の身体は本当によくできている。
必要のない能力は、ちゃんと衰える。

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9時半。ボルガルネスに到着ー。
予想どおり、そこそこ大きな街だ。

面積が広いというより、長細い?
今までの街とはちょっと変わった印象を受けるな。

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なんだか、岩の間から家が生えているような光景をよく見かける。
海岸沿いの岩場にできた街なんだろうか。
この岩だらけな感じが、いかにもボル、ガル、ネス!っぽいと思うのは俺だけか。

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郵便局でハガキを書いて出し、スーパーで買い物をする。
久々にやって来た大きな街はやっぱりいいもんだ。
スーパーにはちょっと凝ったサンドイッチみたいな食べ物も売ってるしな。

スーパーのトイレを借りて水の補給をしたけど、ここの水もやっぱりイオウ風味。
飲んだ後にムワッ、オエッ、とくるのが特徴。

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海の間を渡る橋のような道を通って、ボルガルネスを出る。
ここでは結局、2時間ほど滞在しただけであった。
でもこの街、わりと嫌いじゃなかったよ。

そういえばこの街には、俺を泊めてやろうという人がいたんだったな。
ポーランド人のヤコブだったかな。
サウザルクロウクルのアニカと同様、ヴァレリオがネットで見つけてくれた1人だ。

でもそんな話を聞いたのも2週間ぐらい前のことだし、
スケジュールが本人にすらよくわからないこんな旅では、タイミングも合いにくい。
これも縁というものでしょう。

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なんて書いてあるのかはわからないが、何を言いたいのかはよくわかる。

これからはしばらく海沿いの道だからな。
俺もせいぜい一輪車ごと崖から転落しないように気をつけよう。

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ボルガルネスからもだいぶ離れた。
そして時間も12時を過ぎ。ついに怖れていた事態が起こってきたよ。

クルマ、多っ!!

ここからだともう首都レイキャヴィークまでは最短コースで100キロもない。
そりゃあクルマも多くなってくるだろうよ。
大体、前後から来るクルマが俺の近くで頻繁に交差するぐらい数が増え始めたら、
もう怖ろしくてユニサイクリングどころではないのだ。

なぜならアイスランドのクルマは、
ちょうど俺が狭い路肩にいる位置で前後のクルマが交差しようと言う時でも、
いっさいブレーキを踏まずに通り過ぎていくヤツが結構いるからだ。
つまり上から見ると、
対向車、俺を追い越すクルマ、俺、が3つ横一列に並ぶことになる。

アイスランド標準のあのスピードで、しかも狭くてボロい路肩でそれをやられると、非常に怖い。
俺を追い越す時、なんでちょっとの間ぐらいブレーキを踏んで待つことができないのか。
そんな危険な状況を怖いと思わないドライバーの感覚が何より怖い。
俺だって一応、クルマのドライバーと同じく道路の利用者の一人なんだが。

まったく、アイスランド人が、そんなに急いで一体どこに行くというんだろうね。

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ホケーッとしている。
クルマのおかげでのんびり歩き旅だ。
今日は晴天と追い風なのが救いだな。

それにしても俺、顔だけずいぶん焼けて黒くなったなぁ。
真っ白なアイスランド人からしたら、俺なんかもはや黄色だか黒色だか区別がつかないんじゃなかろうか。

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ひたすらー続くーまっすぐな道ぃー。

俺はー平和にぃー歩いてぇー

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ぐわああぁぁぁぁぁ!!!

危ねぇ!!危ねぇって!!!

これがまさに、上から見たら3者並列状態。
ほんのちょっっっぴりでいいから、交通弱者に対する優しさを見せろ!!
バスの2台連続は油断してたら本気でビビるわ!!

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今だ!
クルマがいないスキを狙って、ごくたまに乗って瞬間的に距離を稼ぐ。

クルマさえ少なければとっても爽やかな道のりなんだがな。
これが自転車だと、こんな状況でももうちょっとマトモに走れるのだろうか。

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あーやれやれ。こんな日は休憩が多い。

でも大丈夫。
あともうちょっと耐えて進めば、クルマの少ない道にたどり着けるハズなのだ。
そこまでの辛抱!

うーむ…。
顔とメットで隠れた額がツートンカラーに…。