5月9日(日)その2 カラカラ

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峠の頂上で座りこんだら、根が生えて動けなくなった。

あぁ、風でグローブが転がっていく。
でもそれを追う気にもならん。
今日はそこそこ元気があったハズなのに、あの坂はそれ以上に、素晴らしく長かったのだ。

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ま、ジッとしててもしょうがないし、汗が冷えてきて寒い。
いい加減に進むとしよう。

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ここからは一気に下り!と思ったのだが、
どうやらそうでもないらしい。
この坂を下りてしまうとまたフラットな道が続く。

それになぜかクルマが増えてきた。
16時を過ぎて、日曜日のレジャーを楽しんだクルマが再び活発に動き出したのだろうか。

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ようやく川をみつけたので水を汲んできたところ。
でもあまり綺麗とはいえない感じの水で、なんとなく気に入らない。
あの4月の綺麗な雪解け水が懐かしい。
でも寒いのはもうコリゴリだし、うまくいかないもんだ。

それにしても本当にクルマが急に増えたな。
そろそろ首都レイキャヴィークが近づいてきた影響が出始めたのかも知れない。
それはいいとして、このあたりの道は路肩が思いっきりカマボコ形なのであまり隅っこは走れないんだ。
そんなに飛ばしてたら怖いって!

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18時を過ぎてこの陽射し。焼けるぅ!

さっき、ブロンドゥオスの町で俺に話しかけてきたクルマの若者2人と再会した。
おずおずという感じでポツポツと質問してきた姿が印象的だった彼ら。
これが若者というより、なんか中学生っぽい雰囲気なのだ。
本当に免許持ってるんだろうか?
ま、俺には関係ないけどな。轢かれない限りは。
お互い気をつけよう。

他には、またしてもわざわざ引き返してまで俺の写真を撮りに来た青年がいたな。
彼はボロいワゴンみたいなクルマに乗ってたので、おそらく地元民なのだろう。
日本から来たユニサイクルツーリストの生き様にいたく感動してもらえたようで、まぁ、よかったよ。

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あの右上あたりにちっちゃく写ってる橋。
何十年も前の旧道らしい。

看板の説明を読むと、当時は道が細くて特に冬期は事故が頻発したと書いてある。
真冬にあんな道走ってりゃ、そりゃあそうなるだろうよ。怖っ。

アイスランドはなーんにもないところだと再三言いまくっているが、
とりあえずこうしてマトモな舗装路が一周しているというだけでも、凄いと言えば凄いんだよな。

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前方にいるアレが何なのかと言うと、脱走ヒツジ親子だ。
どこかの牧場から逃げ出してしまったのだろう。
何かに怯えたように、ひたすら全速力で逃げ回っている。

牧場を脱走できたことがあの親子にとって良かったのか悪かったのか、俺にはわからない。

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19時半。
西日があまりにも強いので、ついにアークレイリで買ったサングラスを装着。
目が悪いせいか視界に色がつくのは苦手なのだが、こうも陽射しが強烈だとやむをえまい。

ちなみに今は西日が強いので、アタマのソーラー充電器も正面に付け替えております。
太陽の角度によって時々貼り直す必要があるのが意外とめんどくさい。

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20時を前にして、ようやくクルマが減ってきた。
サングラスの効果はまずまず。
いつのまにか人里まで下りてきていて、農家のおっちゃんが笑顔で挨拶してくれる。

優しい、いい風が吹いている。
余裕のあるこんな時。なんて素晴らしい時間なんだろう。
晴れた日の夕暮れは、いつも俺の気持ちを鮮やかに組み替えてしまう。
夕方に不思議な気分になることに、何か意味があるのだろうか?

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黙々と走って、いつしか21時を過ぎた。
今日はもう85キロも走ってるし、
そろそろ寝床を見つける頃合だなってところで、タイミングよく休憩所を発見。
今夜はここで寝ようかな。

唯一の気がかりは、水がもう無いということ。
この近くで水が調達できればいいんだが…。

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休憩所から丘の上までトレッキングコースが伸びていたので、登ってきた。
うーん、かなり向こうに川が見えるが、歩いて行くには遠いな。
太陽が山に隠れそうになっていて、昼と夜の境界がクッキリと分かれている。急がねば。

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どうもこの近くには水の気配がない。
ここはテントを張るには向いているのだが、
ただ今夜から明朝にかけて水が飲めないと思うだけで、とてもつらい気がする。

よし、大荷物をここに置いて、歩いてあたりを偵察しに行こう。

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休憩所を出て500メートルも進むと、なんとおもむろにドライブインが!!
おおっ、こんなすぐ近くにあったのかよ!!

やったー!水だー!!

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ぐわあぁぁ!!
30分前!30分前に閉まってたぁ!!

失意に打ち震える俺。
でも待てよ、さらにこの先、町っぽいものが見えるんだ。

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ほら、あれ。
地図ではほんのちいさーく人里っぽい表示しかないんだが、ひょっとしたら店ぐらいあるかもしれない。

よし、こうなったら荷物を取りに戻って、あの町に賭けてみよう。

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ここは確かに町っぽい。
なんというか、超小規模な学園都市のような感じだ。
全寮制の学校があるような学生の町なのかもしれない。

とにかく、水だ。
町の中でスーパーを発見!
しかし、19時閉店。とっくの昔かよ!!

もうこの際、誰か歩いてる人がいたら話しかけて水を貰おうかと思うぐらいだが、
そんな時に限って人っ子一人出歩いてねぇ!!

ダメか…。
町を出て、川に突き当たるまで進むしかないかなぁ。

もう22時を過ぎて、あたりはかなり暗い。
ただ水だけを求めて前に進んでいる。
水がないと思うだけで、こんなにもノドが乾く。
そしてノドが乾いただけで、こんなにも追い詰められてしまうとは。

淀んだ水でなければ、もうなんでもいい。
水が飲みたい…。

そして22時半。
水、発見。

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どこから流れてくるどんな水なのか知らないが…。
とにかく、透明な流水だ。

まずは冷静に匂いと味をチェックし、イケルと判断。
空のペットボトルに水を汲み、一気に飲む。

うまい…!

どんな素性の水なのかは知らないし、知らないほうが身のためなのかも知れない。
だがとにかく、今はこの水のおかげで助かった。

やはり水だ、水に限る。

この旅をはじめた最初の頃は、ジュースを買って持ち歩いていたこともあった。
しかし、疲れた時に濃い味のジュースばかり飲んでいると、次第に身体が受け付けなくなった。
今じゃジュースを飲むのは町にいて余裕がある時だけだ。
やっぱり、水が一番だ。
ノドの乾きを癒してくれるのは水。なんといっても水が一番うまい。
ノドが乾いたと言ってジュースを飲む人は、水ではものたりないという人は、
それはきっと本気で乾いていないんだ。

素性の怪しい水を飲みながら、そんなことを深々と思った。

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もはや23時。
水を汲んだ場所から少し進んだところで簡易パーキングのようなものを発見し、
もうこの際どこでもいいやと思ってその隅っこに速攻でテントを建てた。
手元も暗いのに、我ながらテント建てるの早くなったな。
一応クルマが来ないところを選んだので夜中にこっそり轢かれる可能性は低いと思う。

どんな場所でも、寝られれば天国だ。
とにかくもう寝る!

今日の走行は結局94キロ。走り過ぎたよ。