5月14日(金) いきなりさよなら

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予報どおりの雨だ。
行きがかり上とはいえ、雨の日に屋根のあるところにいられるのは本当に助かる。

今日は雨をしのぐためにもう1日ここに泊めてもらうつもりだ。
このビューティフルホステルはハッキリ言ってカオスな状態だが、
一方で気兼ねなく泊まれる雰囲気があって、俺としては落ち着けるいい家だ。

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ふと思いたって、アークレイリ以来2週間ぶりぐらいの洗濯をする気になる。
でもこれ。
洗濯機と乾燥機の区別がつかん!
アイスランドで見かける洗濯機ってどれもこんな感じなんよなぁ。
これは一体どうやって使うんだろう。
よし、こういう時はブッパ(8さい)に聞いてみよう。

そのへんからニョキッと出てきたブッパを捕まえて洗濯機の使い方を聞いてみると、
案の定わかりやすく的確に教えてくれる。
乾燥機はちょっと壊れていて正常には動かないようだが、ムリヤリ動かす裏ワザまで伝授された。
8歳にしてこの理解力と応用力。
やはりこの子の賢さは普通じゃない。

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外の雨は意外と大したことはない。
ひょっとしたら出発できるぐらいかも知れないが、かと言ってもう急ぐ用事もないのだ。
洗濯もしてしまったことだし、今日はやっぱりこの家でお世話になるとしよう。

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ギャラリー兼ビューティフルホステルでゴロゴロしていると、
ブッパが犬連れで遊びに来る。
どうやら彼女は今日もとてもヒマらしい。

ちなみにブッパというのは愛称で、本名はステインギャルズール・スンナ。
でも長過ぎるせいか、誰もステインギャルズールとは呼ばない。
唯一彼女のお婆さんだけが律儀にステインギャルズールと呼んでくれるそうだが、
そのお婆さんが今どこで何をしているのかはなんとなく聞けない。

兄のコルベが教えてくれたところによると、
ステインギャルズール・スンナは『石でできた太陽』と言う意味なんだそうだ。

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そしてこの犬はティッダ。7歳のメス。
ブッパと大変仲が良く、ハタから見ると1歳違いの姉妹のようにも見える。たぶん本犬もそう思っている。

ティッダはとても大人しくて飄々としており、
家の中をウロウロ歩行していようがベッドで寝ていようが、特に気にならない。
俺もだんだんアイスランド流の家庭内同居ペットに慣れてきたのだろうか…。

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今日は雨で外では遊べないため、一通りの人形遊びを終えた後はビデオ鑑賞となる。

ほぅ、アイスランドにもムーミンが。さすがはムーミン・トロール。
フィンランドの原作が日本でアニメ化されてアイスランド語に翻訳されて楽しまれているというわけで、
今さらながら、すごい時代だと思う。

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ムーミンがあっさり終わったと思ったら、次はすかさずブッパおすすめの長編映画に移行。
変な髪形で変人で発明家の女の子が父親を探して旅をするという物語なのだが、
長編映画というだけあってこれが本当に長い。そして眠い。

ブッパはブッパでホットチョコを飲んだ後は自分のカカトを齧るのに余念がない。
おいしいのだろうか。
とりあえず、そっとしておこう。

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アイスランドに来て、かつてなかったぐらいのマッタリ具合。

元はといえば、道を歩いててお茶に誘われただけなんだが。
人間どこでどう風向きが変わるかわからんものだ。

ブッパがおもむろに俺の顔をジーッと見つめて、「目が茶色。」と言う。
なるほどなぁ。
俺からすれば、ブッパの綺麗な青い目のほうが珍しいんだよ。

この子はこれからどういう人生を歩むのだろうか。なんとなく気になる。
いずれにせよ、彼女のようなちょっと特殊な子は平凡な生き方はできそうにもない。
なんでもいいから幸せな人生を送ってくれればいいが…なんて思う。

こんな感じで、今日もちょっと疲れながらもブッパと遊んで過ごすのかなーと思っていた、そんな時。

おもむろにフラフンが現れて、独特なテンションで語り出す。

「これからちょっと、出かけてくる!」

「わかったよ。いつぐらいに帰って来るの?」

「たぶん明日だ。レイキャヴィークにヒッチハイクで行く!」

「え、レイキャヴィーク?…ヒッチハイクで!?」

「そう!でもキミは、いつまででもここに居てくれていい。
 ここにあるものはなんでも好きなように使ってくれ!そう、なんでもだ!ビューティフル!!」

そして慌しく準備を始めるフラフン。
レイキャヴィークまでヒッチハイク…?
まぁ、あのフラフンなら余裕でやりそうだ。なんちゅうか、本気でフリーダムな男だからな。

しかし意外なことに、ヒッチハイク旅にはブッパも連れて行くらしい。
昨日は家に居たハズの兄のコルベはどこに行ったのやら行方不明。

ひょっとして、俺と犬と猫だけを残して旅立つつもり…とか?

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うわー、ホントに行っちゃったよ。親子ヒッチハイク旅。

木の板には『ブッパ』って書いてある。
ついさっきまで遊んでいたブッパとは、ここで突然のお別れだ。
明日彼らが帰って来る頃には俺はもうこの家に居ないだろう。
少し寂しい気もする。

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いきなり一人になってしまった。

カオスな家で茫然とする俺。

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とりあえず、なんでも好きに使えと言っていたので、パンを焼いて食う。

しかしこの家、すぐに食える食料はパンとシリアルぐらいしかない。
これで明日の朝まで生きていくのはちょっとつらいものがある。
近くに店でもあるなら買い物に行きたいところだ。

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あまりにもヒマなので、置いてあったマトリョーシカを分解して並べてみた。

一番末の娘の胴体がないことがわかった。

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家にずっといてもしょうがない。
コルベやデビットが乗り回していたスクーターを借りて、ちょこっと外を走ってみよう。

おぉ、アイスランドでバイクに乗ってるぞ!
やっぱ国際免許は常に持っとくもんだな。

それにしてもこの町はとても小さい。
そしてどうやら食料を買えそうな店もない。

えー…。明日までどうやって過ごすかな…。

途中でガソリンがなくなり、押して帰ったのはここだけの話だ。

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おい、どうするよ、ティッダにシッペ。

俺たち、この家に放置されてるぞ。

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しかし彼らは全然気にする様子もなく、いつもどおり自由に振舞うのであった。
家のドアはいつでも開きっぱなしだし。

ふーん、慣れてるのかねぇ…。

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思えば昨日、このトラックで拉致されてロウガラウスまで来たんだった。
そして今はこの家で1人と2匹。なんともいえない展開である。

そしてこのトラック、やっぱりカギはつけっぱなしだ。
どうやら無用心とかそういう領域の問題ではないらしい。

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誰もいないと広い庭もトランポリンも寂しいもんだな。

平気そうに見えたティッダもやっぱり寂しいのか、時々遠咆えをあげてるよ。

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まだ20時過ぎではあるが、もう寝るとするか。
他にやることもないし。
そして明日の朝は早く起きて出発することにしよう。

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ギャラリー兼ビューティフルホステルにはフラフンが描いた絵がいくつか飾ってある。
中でもこの絵は素晴らしいと思ったのでフラフンにそう伝えたら、
彼はなんだか無表情でポカーンとしていた。ひょっとして照れていたのだろうか。
彼に関しては一切がよくわからん。

ともかく、自称アーティストだらけのアイスランドにあって、
個人的にいいと思ったのはこれだけだ。
あれ、それはもしかすると、俺の感性がフラフンに近い…とか…?
うわー、それは困る。

さ、寝よ寝よ。