5月18日(火) ピエロなんかいない

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今日は、マリアと会う日だ。

ロウガラウスで出会った彼女とレイキャヴィークで再会。いいねぇ。
この前はあまり聞けなかった、日本留学時の話などで盛り上がれることを期待する。
それと、彼女には1つ頼みたいこともあるんだった。

待ち合わせは1時なので、まだ時間はある。
そこで、ダウンタウンにある図書館に行って、新聞のバックナンバーが閲覧できないか聞いてみた。
新聞に自分が出てるかも知れないと思うと、やっぱり気になるよな。

しかし、ここではバックナンバーは置いていない言われ、
街はずれにあるもっと大きな図書館を紹介される。
テクテクと歩いてやって来たその図書館は、確かにデカくて本格的だ。

もはや時間が止まったような顔をして佇んでいた司書のおばさんに頼んで、
アイスランドで発行されている3誌の新聞のバックナンバーを見せてもらう。
大体4月末から5月の初めにかけて。
つぶさに見ていったつもりだが…どうも見つからない。
おかしいな。俺の聞き間違いだったんだろうか。

もっとじっくり調べたいところだが、おっと時間がない。
待ち合わせ場所の教会に急がなければ。

またひたすら歩いて、レイキャヴィークのとある教会に到着。
しばらく待っていると、マリアが現れた。
おや、ロウガラウスで見た時とはだいぶ印象が違う。メガネもかけてないし。

「やぁマリア、ひさしぶり!」

「ひさしぶり。あの後は、本当にブッパの家に泊まったの?」

「泊まったよ。2連泊した。しかも途中で一家はレイキャヴィークにヒッチハイクで行ってしまった。」

「ハハハ、楽しい家族でしょ。
 ところで。
 今日はボーイフレンドがクルマでどこにでも連れて行ってくれるわ。どこか行きたいところはある?」

………。

マリアとの再会は、彼氏付きでした。

まぁ、そんなもん。そんなもん。

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行きたいところなんか、特にないのだ。
そんなに広くもないレイキャヴィークの観光エリアは大体見てしまったからな。

というわけで、ここはダウンタウンから少し離れた、ペルトランという謎の建造物の展望台だ。
ここはなんだろう、博物館なんだろうか。
でも最上階には床が回転するという妙なレストランもあるというし。

とりあえず、あの背の高い教会は本当にどこにいてもよく見えるな。街のシンボルであると思われる。

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マリアと彼氏のアレックス。

アレックスは中国系アイスランド人だそうな。
中国系スイス人のサイクリストには先日会ったが、中国系アイスランド人なんてのもいるんだな。
さすがは世界中にあまねく存在する中華民族である。

うーむ。なんというか。
この2人と一緒に行動していると、俺が2人のデートのジャマをしているような気すらしてくる。
あぁ、もてなされているハズなのに、もはや気疲れしてきた。

ランチは何が食べたいかと聞かれたが、
粗食で少食な俺にそんなことを聞くだけムダだということを彼らは知らない。
全然なんにも思い浮かばないけどしょうがないので、

「キミたちが昨日の昼に食べたようなものがいい。」

と言うと、アレックスがしばらく考えて、こう言った。

「じゃあ、メトロはどう?マクドナルドが撤退した後にできた店。」

何!?マクドナルドが撤退した後にできたハンバーガー屋…だと…!?

「…アレックス!それは素晴らしいアイデアだ。そこに行こう。そこしかない!」

そんなわけで、やって来ましたよ、メトロ。

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はい、メトロ。いかにも張り替えたような看板のロゴがシブい!

そうだった。
アイスランドは、世界征服をもくろむあのマクドナルドが唯一おそれをなして逃げ出した国!
その跡地に建つ、このよくわからんハンバーガー屋!
今までなんで思いつかなかったんだ。
教会や記念碑を見てるヒマがあったら、まずここに来るべきだった!

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主力製品はこのヘイムスボルガリ。
アレックスいわく、ワールドバーガーという意味らしい。
マクドナルドが撤退した跡地でワールドバーガーと名づけるセンスが実に素晴らしい。

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マクドナルドが裸足で逃げ出しても平気な顔でのさばるコカコーラ。
やはり世界を征服するのはこっちのほうらしい。

さあ!楽しみ過ぎて震えがくるぐらいの味は!!

…やばい、フツーだ。

もっとこう、冷めまくったハンバーガーとか、溶けまくったシェイクとかを期待してたんだが。
あまりにも普通…。どこかで食べたような…。
オラ!あの黄色い服を着た赤毛のピエロはどこだ!と思わず叫んでしまったぐらいだ。

冷静に考えると、たぶん名前が変わっただけで、部分的な中身の供給はまだ続いているんだと思う。
いやぁ、残念残念。
でも来る価値はあった。一瞬なぜかものすごく興奮したもんな。

メトロでヘイムスボルガリをおいしく食べた後、2人に次はどこに行きたいかと聞かれたので、
前からマリアにお願いしようと思っていたことを話す。

「アイスランド語の発音を録音させてくれないかな?」

どこか公園のような静かな場所に行ってくれと指定すると、本当に公園に連れてきてくれた。
公園内にあるスイミングプールのテーブルに座って、
地図を見ながらマリアに1つ1つ、俺がこれまでに通ってきた町の名前を発音してもらう。

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思わず長いインタビューになってしまった。
アレックスは大変ヒマそうで申し訳なかったが、
おかげでハッキリしなかった発音や、知りたかった単語の意味が一通りわかった。

耳慣れないアイスランド語の発音は、正確にはどうやってもカタカナに置き換えることはできない。
でも日本に帰って旅日記を書く際には、
アイスランド語よりもカタカナで書いたほうがやっぱりわかりやすいだろう。
と言うわけで、誰か1人のアイスランド人に全ての町の名前をゆっくりと発音してもらって、
それを俺が聞こえたままにカタカナに直し、それで旅日記に書く表記を統一したかったのだ。

これで目的は果たせた。2人ともご協力ありがとう。

あ、数日前に見た『何回も言ってたらそのうちバケラッタと聞こえるかもしれない名前』。
ついでにこれも発音してもらったら、全然バケラッタじゃなかった…。

キャンプ場までクルマで送ってくれるという2人の申し出を断り、
マリアの家の前で彼女と一緒にクルマを下りて、そこからは一人で歩いて帰る。

やれやれ。なんとも言えない一日だったな。
まぁ、そんなもんだ。

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これは…。
ホテルと空手道場が一緒になっている。
空手家以外でこんなところに泊まりたいと思う人なんかいるんだろうか。
ちなみに俺はイヤだ。

さて、キャンプ場に帰ってきた。
なんの運動もしていないが今日は疲れた。
もう寝て過ごすかーと思ってたところに、なんとまたしてもジェイソンが出現!!
今夜ダウンタウンの店で開かれるライブを聴きに行かないかと言うのだが…。

「いや、夜遊びはもういいよ。しかし、なんでそんなにあれこれ誘ってくれるんだ?」

「キミを、もっと良い人に会わせたいんだ。」

ん?『良い人』って何だ?
俺にとっては、昨日会ったマーティンもシグリオンも充分にいいヤツらだった。
出会った人間が『良い人』かどうかなんて、俺が自分で決める。

昨夜はジェイソンも含めてみんなで遊べたのが結構楽しかったんだがなぁ。
本当に、彼は一体俺に何を望んでいるのだろうね。

「ともかく、今日の夜遊びはお断りするよ。ほら、雨も降ってきたし。」

そう言うと、ジェイソンはバスに乗ってマーティン宅に帰って行った。

そういえば今日マーティンは深夜までバイトだと言ってたな。
そうなるとジェイソンも今夜は一人でヒマなんだろうが、それはそれ。
同じ旅行者同士、自分の孤独は自分でなんとかするしかない。

雨は明日も続きそうだ。

明日は何をして過ごそうかな…。