5月22日(土)その2 そんな今さら…

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また5キロ戻って、グリンダヴィークの街に帰還。
昨日閉まってた因縁のスーパーは今日はちゃんと開いててくれた。
ここで水と食料を補充して、半島一周の寄り道旅に出るとしよう。
しかしいつのまにかすっかり晴れて暑くなった。あれなんかもう夏の雲じゃないか?

街を走っていると、昨日のチャリンコ小僧3人組にまた会った。
この街には子どもが多い気がする。そしてみんな楽しそうだ。

さらに街を走っていると、今度は庭先に出ていた2人の女性から呼び止められた。
「ちょっとカメラを持ってくるから待ってて!!」とのこと。
なんじゃそりゃ。

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うーん。
アイスランド人の持っているカメラが日本製である確率が高いのはいいとしても、
俺に話しかけてくる女性の妊婦率が地味に高いというのはどういうことだろう。

ところで彼女は昨夜、俺が一輪車に乗って街を怪しく徘徊する様を目撃したそうだ。
なるほど。妊婦率のほうはよくわからんが、
俺に2度遭遇した人がつい話しかけてしまうという確率はやはり高いようだな。

そんな彼女たちは、

「明日は祝日だから店は開いてないわよ。気をつけなさい!」

という情報を教えてくれた。
また祝日かー、めんどくさい。ともかく貴重な情報だ。教えてもらって助かったよ。

グリンダヴィークの街をとっとと出たいのに、あれ、行き止まりだ。
うわー道を間違えたらしい。
かなり戻らないといかんっぽいな…。

「おや、キミはユニサイクルガイじゃないか。道を間違えたんだね。」

たまたま家から出てきた40代ぐらいの夫婦の夫のほうが話しかけてきた。

「それならウチの裏の牧場を通って行くといい。近道だよ。ほら、こっちだ!」

お言葉に甘えて彼らのウチの庭を通り、裏の牧場へ。
牧場には動物はいないようだが、そのかわり生き物が放つバイオ地雷が大量に…。

彼が有刺鉄線をプロレスのロープのように持ち上げてくれたおかげで、牧場にスルッとイン。

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そして牧場。まさに地雷原だ。
慎重に歩を進めつつ、どうにか牧場の端まで到達。向こうには渡りたかった道が!

しかし道にたどり着くためには、またしても有刺鉄線を越えなくてはならない。
今度は持ち上げてくれる人がいないのでちょっと大変だ。
かなり気をつけて乗り越えたつもりが、やっぱり服をひっかけて何ヶ所か破れた。
あちゃー。
この服ももうすでにボロボロなのでいいと言えばいいんだけどな。

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近道完了!
俺を助けてくれた人の家は右から2番目だったかな?
ちゃんと渡り終えるまで心配そうにこっちを見ていた彼が印象的だった。

それにしてもグリンダヴィークの人々はやけにフレンドリーに話しかけてきたな。
アイスランドの中でも街によって地域性ってのがあるんだろうか。
この街ではなぜかアジア人=タイ人という図式になってるっぽいのもなんだか謎だったが。

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さらばグリンダヴィーク。
なかなかいい街だったよー。

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街を出たのはいいが、さっそく休憩。
もう16時。
大して走ってないけどすでに疲れたなぁ。
ブルーラグーンに2時間半もいて湯治しまくったのになぁ。

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さっきの彼いわく、この先にうっすらと煙が見えるレイキャネスという岬があるそうだ。
当面の目的地はそこかねー。
果てしねー。

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17時。
はぁ、しんどい。
どうにもしんどい。
そして暑い。雨がやんだのは嬉しいが、今度はまた極端な暑さだ。
街で補給した水がどんどんなくなっていく。

休憩する時は近くの標的に向かって石を投げるのが半ば習慣になりつつあるのだが、
その命中率がいつのまにか向上していることに気づく。
こんなことでも続けてりゃあうまくなるもんだな。

また1つゆるい峠を上りきり、今度は下りでラクができる。
いつものパターンだと思って一輪車に乗ったところ、なぜかまっすぐに走れない。
あれ、俺、急にヘタになった?
それとも路面が微妙に傾いてるのか?

いや…これはひょっとして…。
やっぱり。空気が極端に抜けてる。

パ、パンク?
今さら?
今まで2ヶ月なんともなかったのに、あと3日で旅が終わるという今になって、パンク?

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認めたくない。
とりあえず空気を入れて様子を見ることに決定。

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18時。
おぉー、煙がすごい。いや、湯気かな?
レイキャネスの岬に到達したようだ。

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山の裏に回ると、煙は煙突から出ていた。
なんだ、天然じゃなかったのか…。
でも地熱を応用した発電所か工場の類ではあると思う。

まったく、アイスランドなら煙を出してればいいってもんじゃない!!
深い意味もなく憤慨。

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18時半。
やっぱダメだ。抜けてる…。
だがパンクしてるにしても穴は小さいようで、抜け方は遅い。

ここでパンク修理をしてもいいが、あと40キロも走ればアレがある。
アイスランドに来た初日に、余計な重量物をまとめて隠したあの赤いコンテナ。
騙し騙しであそこまでたどりつければ、隠した中にはスペアのチューブがあったハズだ。
荷物がまだ残っていればの話だが…。

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空気を入れて、また走り出す。
なんとかもってくれー。
こんな何もないトコでパンク修理なんて、めんどくさいじゃないかー。

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パンクとは関係ないけど、
この辺はなーーんにもなくて岩ばかりなのはあいかわらずだが、
じゃあここの岩場にコケが生えてないのはなぜなんだろう。
場所によってコケが生えたり生えなかったり。不思議だ。
湿気とか湧き水なんかが関係するのかねぇ。

アイスランドも長く走ってると、だんだん地域ごとの違いみたいなのがわかるようになってくるよ。
だからどうってこともないけどな。

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19時40分。
あーもう、やっぱダメだ。
気合い入れてパンパンに空気を入れても1時間しかもたない。

こうなったら、ここで直すしかないな。

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一抹の虚しさが漂う作業場の光景。

まぁたまにはこんなアクシデントもないとねー。
それではこのマウンテンユニサイクルで初のパンク修理、開始ー!

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一輪車のパンク修理なんてバイクに較べりゃラクなもんだ。
子どもの頃は自転車のパンク修理ができなくて悔し涙を流したもんだが、俺も成長したなぁ。

それにしてもパンク修理セットをちゃんと持ってて良かった。
実は100均で買ったんだが。
100均でも意外とマトモに使えるもんだなぁ。

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よし復活!
でももう20時だ。今日はどこまで行ってどこで寝るかな。
あぁ、レイキャネスの煙がもうあんなに遠くに。

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21時。
レイキャネスから北上すること10キロちょい。
ハフニールという町に到着。
でもここ、店もなんにもない。ラッツィから聞いたとおりだ。

何かおもしろいことないかなーと思って町を通過してみたが、見事に空振り。
大体、期待してると何も起こらない。

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淡々と走るのに疲れたので、気分転換に走りながら自画撮り。

なかなかいい感じで茫然としている。

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22時…。
西海岸を離れ、遠くにケプラヴィーク空港の光を眺めつつ、
ついに半島の東側へ出てきてしまった。
ここは41号線。
俺がアイスランドを最初に走りはじめた道だ。
この道をまっすぐ行けば、じきに空港に着く。

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アイスランドに降り立った初めての日は、
荷物があまりにも重くてフラフラして、
とても一輪車で一周なんかできるもんじゃないと不安でしょうがなかった。

でも今は、楽勝というほどでもないが、わりと普通に走れてしまっている。
荷物はあの頃よりむしろちょっと重くなってるぐらいなんだがなぁ。

おや、遠くに、何か見えて来たぞ。
ひょっとすると、あれは。

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懐かしのコンテナだ…。

久しぶり。また会えたな。
そうか、こんなところにあったのか。

ユニサイクルを脇に置き、歩いてコンテナに近づく。
少し緊張しながらコンテナを開けると、
そこには俺があの日に置いた箱が…

なかった。

そうか。甘かったか。やはり。

さすがにしばらく沈んでいたが、今はそうでもない。
元々、スカンジナビア航空に言われてわざわざデカい箱を用意しただけだ。
箱がなくても、ユニサイクルを持って帰れる方法は他にもあるはず。

それに箱の中に入れておいた小物類は、今となっては何を入れたか詳しく思い出せないぐらいだ。
ボロボロの冬用グローブとか、スペアチューブとか、重い工具類とか、文庫本とか。
これといって惜しいものはない。
むしろ帰国用の荷物が軽量化されてありがたいぐらいだ。
さらに、実はこんなこともあろうかと、
コンパクトに折りたためる輪行バッグだけはちゃっかりとリュックにしまってあるのだ。
ちゃんとした箱じゃないけど、帰りは輪行バッグに入れて空港に出してみるのもいい。
なんとなーく、それでも許可されそうな気がする。
ダメだと言われたらその場でなんとか対策すればいいんだ。中に段ボールを入れてサンドするとか。

まぁ、なんとかなる。
箱がないということが、帰国日まで余裕のある今日中にわかってよかった。

いつのまにか、もう23時半じゃないか。
それにしては明るいな。日がだいぶ伸びた…。
今日はもはやここにテントを張ってしまおう。

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今日の走行は60キロ。全走行距離は1912キロ。
2000キロまでは…ちょっと難しいところだ。