5月24日(月)その1 ラストラン

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今日もいい天気だ。
風は強め…いや、風はもうどうでもいいか。
もはや、風向きを気にしながら長距離を走る必要はないんだった。

今日はケプラヴィークの街でのんびりと過ごそう。
そして24時間後、俺はあの空港から飛び立っているハズだ。

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今さらながらアイスランドの地図。
俺が走ったのは、アイスランドを一周するリングロードと呼ばれる国道1号線だ。
地図のあちこちを見るだけで、その場所の光景や、そこであった出来事が浮かんでくる。

今となっては、アイスランドに来る以前の自分がどんな風だったか思い出せない。
それほどいろんな体験をし、いろんな人々に会ってしまった。
社交的でも話上手でもない俺が、ただ一輪車で走ってみたいというだけでこの島に来たのにな。

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最後のテント撤収ー。
通販で1600円ぐらいで買ったこの安テント。本当に役に立ってくれた。

アイスランド初日によっぽど捨てようかと思った重量物だったが、
これだけは手離さずに背負い続けて大正解。
夜中の強風や雨や雪や寒さは、こいつなしではとても耐えられなかった。

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ケプラヴィークの街にやって来た。
スーパーの開く10時まではもうすぐ。
このゆったりとしたベンチで、のどかに待つとしよう。

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あともう24時間もこの島にいないのかー。
それもなんだか不思議な気がする。

でも、すべては過ぎゆくもんだ。
生きてる限り、次が待ってる。

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10時を過ぎたので、街の中心部にやって来る。
でも、あれ?なんか妙に閑散としてるな。人がほとんどいない。

とりあえずスーパーに行ってみると、なんと休みだ!!
え、今日も!?
今日は月曜日でただの平日のハズなんだが…もしかして、振り替え休日とか?
おいおい、スーパーが連休なんかするなよ!!
俺はまだしも比較的大きなケプラヴィークの街にいるからいいが、
今頃はアイスランド中で旅人が困り果ててるぞ、きっと。

あーあ、つまんねー。
店が開いてないんじゃロクに土産も買えないじゃないか。
まさか帰国直前で2連休にブチ当たるとは。
適当に決めたわりにはとんだ日程を選んでしまったものだ。

はぁ、もううんざりだ。
つまんねー……。

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そんな時に、2000キロ達成。

おー。やったなぁ。
アイスランドを一輪車で走って2000キロだ。
まぁ実際のところ、全体の3割ぐらいは歩いてると思うけどな。

ここでおもむろに、2人組の男が出現。
さっきから人のいない街中でこいつらだけが怪しく徘徊してると思ったら、
彼らは宣教師だったのだ。

陽気に話しかけてきたのはフランス人宣教師のピエール。
彼はいかにも宣教師っぽい感じでツラツラと語ってくれている。
でも俺はその時、フランス人のピエールって本当にいるんだ…と一人で感心していた。

彼らはご丁寧にも、日本語版の小さな冊子を俺に手渡して去っていった。
その冊子の最初のページには、

『憂いに沈んだ人々への慰め』

と書かれてある。
思わず爆笑。
スーパーが休んでるというだけで、別に憂いに沈んでまではいない!
でも、おかげでちょっと元気が出た。
それに彼らが言うには、ひょっとすると12時には開くかも知れないよ、とのことだ。

そして12時過ぎにもう1度スーパーに行ってみたら、本当に開いていた。
祝日の次の日は昼から出勤なのか…?
よくわからんが、これもアイスランドの常識なのかも知れない。
まだまだ知らないことがいっぱいあるわけだ。

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これは何かと言うと、毎度おなじみ、羊の頭。
でも今回は眉間から左右にスパッと割られたハーフカット。スイカじゃないんだから!!
とりあえず袋に入ってるのが救いだ。
あ、でもよく見ると脳が…。

スーパーで何かチープな土産物でも探そうと思ってやって来たのだが、
あー、スーパーにアイスランドっぽいモノって、ないわ。
よくよく見ると、スーパーにあるものはほとんどが輸入品なのだ。
唯一アイスランド名物だと胸を張れるのは羊の頭だが、こんなモン持って帰って一体誰が喜ぶと言うのだ。

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妖しいTシャツを発見。
日本の新聞などから適当にチョイスした記事を、意味もわからずにプリントしたのは疑う余地もない。
それにしても『素朴な温かさに感激』って。

よっぽど買おうかと思ってカゴにまで入れたが、冷静に考えてやめた。

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買い物を済ませ、海辺のベンチに戻ってきた。
アイスランドでもう何個食ったかわからないメリーランドクッキーをダメ押しで食う。

ところで、さっき小銭を減らそうと思ってコンビニに寄ったところ、むしろ増えてしまった。
258クローナの買い物に308クローナを渡したら、
店員のイカツイ兄ちゃんは無言で8クローナを突き返し、おつりとして42クローナを渡してきた。
50クローナ硬貨を1枚返せば済むという計算がなぜできないんだ…。

たぶん引き算で計算するという習慣があまりないんだろうなぁ。
物事を引き算で考えるという思考法は、時にはすごく役に立つと俺は思うんだが。

それはそうと、財布がコインだらけで重い。
慣れてないせいもあるだろうが、アイスランドのコインはパッと見て種類の区別がつきにくいので、
レジで後ろに人がズラズラ並んでるような時には、ついつい札を使ってしまうのだ。

10クローナと100クローナが似たような大きさで色も似ているというのが特にけしからん。
じゃあ日本の小銭は、と考えてみれば、
1円はアルミで軽く、10円は茶色、50円は穴があって、100円は銀色だ。500円はデカいので間違えようもない。
紙幣の図案を見ていてもそうだが、日本人ってこういう細かいトコに凝るよなぁ、と改めて思う。

しかしここで身もフタもないことを言ってしまうと、
大抵のアイスランド人はカードで買い物をするので、現金自体が大して必要ないのであった。

芝生の上で昼寝をしたら、疲れた気分が少しはスッキリした。
まだ16時ぐらいだけど、もう空港に行ってしまうかな。
明朝のフライトは7時45分なので、3時間前の4時45分には空港に着いておくほうが安全だ。
でもそんな早朝に確実に起きる自信がない俺としては、
今のうちからもう空港に行っておくというのも1つの手ではある。

今日はインパクトのある出会いと言うのはないものの、
優しい笑顔で挨拶してくれた脚の悪い男性や、
「娘の友達が日本人なのよ!」と熱心に語ってくれた赤いクルマのおばさんには会えた。
これで充分だろう。いいものをもらった。

空港に向かって歩いていると、
背後から追い越したクルマがギャギャッと止まり、中からなんともいえないのが出てきた。

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アイスを持ったファンキーな兄ちゃんと、アイスを持ったその弟。

なんだか俺を見つけて興奮しており、凄い勢いで「写真、撮ってもいいかな!?」と頼まれる。
ハハハ、どうぞどうぞ。

彼らがアイスランドで会った最後の人々になるのかな。
愉快な出会いだったよ。

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だんだん空港が近づいてきた。

あの場所にたどり着けば、旅も終わる。
もう重いリュックを背負って走らなくてもいいのだ。

ふぅ…。
よし、ラストラン、行くぜ!!

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おっと、空港の手前で2010キロ。
ついに2010年に追いついてしまったねぇ。
正直、もはやこれ以上はいくら増えてもどうでもいいぞ。

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懐かしの空港がもう目の前だ。
ゴールまであとわずか。
このまま一気に、走り抜ける!!

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ハァ、ハァ。
着いたな。
ついに帰って来た。ケプラヴィーク空港。

長かった…。