見えざる壁

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早朝、バス停を出たら、風が変わっていた。
昨日は追い風だったものが、完全に向かい風になっている。
これは一輪車で旅をしていると、よくあることだ。

長距離のユニサイクリングにとって、風向きはものすごく重要な意味を持つ。
風向き次第で一日の走行距離はいかようにも変わってしまう。
だからこういう旅をしていると、自然と風の変化に敏感になる。

まずはバス停から鶴沼の道の駅まで5キロほど走ってみるが、やっぱりダメだ。
強い向かい風だと、一輪車を漕ぐのがとてもしんどい。バランス取るので精一杯。
そのうち乗る気にもならなくなって、ほとんど徒歩旅になる。

実際今日は、全行程のうち9割方は歩いた。
道はいいのに、透明な壁のせいでまったく進まないのだ。
今日は一気に札幌まで行けるかもという計画は、午前中にあっさり取り消した。

強い向かい風の中を、延々と歩くのもまた、疲れる。
だがこれを気にしだすと心身ともに弱っていくので、
こんな時はもう休養日と割りきって、マメに休みながらチマチマ行くのがまだしもな方法ではないだろうか。
さらに思いきって昼寝でもすると、意外なほどスッキリしていい。

今日は向かい風が強い。
これほどのアゲインストは、今回の旅では初めてだ。
だが、いくら風が強いと言っても、アイスランドよりはマシだ。
アイスランドは一般に『火と氷の島』と表現されることが多いが、
俺からすればあの島は、まぎれもなく『風の島』だった。

毎日のように強烈に吹きつける風が、もし向かい風ならもう手の打ちようがない。
日本のように樹木や建物や、ましてやコンビニなどない荒涼とした世界に立ち、あの透明な圧力を防ぐ手立てはなかった。
あれに比べれば、こんな風がどうだというのか。

同じ一輪車での長旅ということで、俺の中では何かと日本とアイスランドが比較されるのである。
今のところは、環境、装備、設備、どれを取っても日本はあの島よりはるかに走りやすい。
これは意外とも言えるほどだが、北海道を出ればまた変わるかもしれない。
こんな話は今後もまた出てくると思う。

今日の行程は、鶴沼の道の駅がある浦臼町、月形町、当別町と、始めから終わりまで向かい風続きだった。
ただ単に、国道275線を風に逆らって歩いただけの一日か…。

と、思ったら。

18時過ぎ、当別町でまたそろそろ寝床を探さないとなーという時間になって、なんと雨が。
すぐに止むだろうと思っていたら、すぐに本降り。
カッパを引っ張り出して着る余裕もなく、あわてて折り畳み傘だけを開いて先を急いだ。
当別市街に、寝られる場所のアテはない。
強い雨脚の中、服を端からじわじわと濡らしつつ、国道沿いを歩く。
大型トラックの停まった、食堂兼ゲームセンターみたいな、古い小さな建物がある。
その建物の軒先を借りて雨宿りしつつ、当別市街で雨を凌げそうな場所を探す。
そのうち一人のトラッカーらしい兄ちゃんが店内に入り、
無人とおぼしき店内で、おもむろに蕎麦を食いはじめた。

この店は、一体なんなんだろう。

その時はじめて興味がわき、俺も店内に侵入してみるのだった。