樹林にて

イメージ 1

イメージ 2

勘違いしていた。

北海道後半にある2つの難所は、稲穂峠と黒松内の樹林地帯だと思っていたが、違った。
どうやらその樹林は黒松内ではなく、森町から七飯(ななえ)町へと至る、この樹海のことだったようだ。景色になんとなく見覚えがある。

しかし、バイクで走っていてもウンザリするほど長く、寂しい道のりだった印象のこの道は、地図で確認すると、せいぜい20キロほどしかないのであった。
しかも、しばらく何もないだろうと気合いをいれて水や食料を積んでいったのに、樹林の途中にはポツポツとコンビニやドライブインが点在し、なんとも普通な観光地状態である。
なんじゃそりゃ…と拍子抜け。

樹林の中ほど、駒ヶ岳という場所にもコンビニを発見し、とりあえずホットミルクティを買って休憩。
まさかこんなに進みやすい道とは思わなかった。何が難所だ。

この先200キロは店らしいものは無いと言われ、ただでさえ重いザックにアホみたいな量の水とビスケットを積んで一輪車でフラフラ走っていた、あのアイスランドの1コマとは明らかに状況が違ったのだ。とんだ錯誤である。

その時、コンビニに入ってきた軽のワンボックスから、犬をワラワラ連れた人々が出てきた。ブリーダーか何かだろうか。
ニコヤカに話しかけられたので受け答えしていると、どうも彼らは犬のブリーダーではなく、函館のライダーハウス『ライムライト』の関係者だった。
おー、ライムライト。聞いたことはあるなぁ。
知り合いのライダーたちが、函館に行くとよく泊まるらしい宿だ。

そんな彼らに、ライダーハウスのチラシと、北海道昆布舘の無料プレゼント引換券?らしきモノをもらう。
昆布舘…なんだそれは。
正直あまり興味もわかないが、ここにだけは万難を廃してでも行ったほうがいい、というぐらいの猛プッシュぶりである。
まぁタイミングが合えば寄るとしよう。
ライムライトのほうも、せっかくこんな場所で知り合ったのだから、北海道ラストを祝して泊まってみるのもいいかもしれないな。まあ明日になるだろうけど。
そういえば彼らは、クルマから俺を2、3度みかけてついに話しかける気になったそうだ。
アイスランドでも度々あった『俺を2度見たらつい話しかけずにはいられない法則』が日本でも発動してしまったようだな。

とにかく、進まなければ始まらない。
ライムライトの人々と別れ、また走り出す。
この道は樹林のくせに交通量が異様に多いのだが、路肩は比較的しっかりしており、走りやすい。
アップダウンも少なめで、向かい風が木々などで遮られた時を狙えば、結構走れることがわかってきた。
今日はどこまで行けるかわからないが、とりあえずこの樹林だけは抜けておきたい。
そう思うとだんだん脚に力が入ってきて、乗っている時間が多くなる。
森の中をウネウネと進むと、やがて沼が見え、さらにトンネルをくぐる。
するとそこには、長ーーい下りが。

おおっ、来たな!
ここで一気に距離を稼がねばなるまい。

勢いをつけて、漕ぎだす。
スピードが乗ってくる。
これは速い。間違いなく今回の旅での最速記録を更新中だろう。
どうだ見たか、この俺の、コマネズミも泣いて実家に帰る、凄まじいケイデンス!(一度使ってみたかった)

行ける、今の俺は乗っている!このまま一気に函館へ!
と思ったら、目前で黒いクルマから降りてきたお姉さんが、こっちに向かって手を振っているじゃないか!