ユニサイクルハウス

昨日は相当ハードコアな一日だったような気がするが、
安らげる環境でじっくりと眠らせていただき、朝起きたらシャッキリ再生。
よし、今日も健康だ。

朝食をご馳走になった後、えふぅさんが撮ってくれた膨大な量の画像をザックリと整理し、後のブログアップに備える。
書いておきたいことがありすぎて、その場でササッと書ける感じではないのだ。
北海道・東北でたまにあった、道の写真だけいくらか並べたようなシンプルな旅日記がもはや懐かしい…。

たった一日なのに長逗留したような錯覚を覚えるえふぅさん宅を出発。
とてもおそろしいことだが、
出がけにその家の女性が作ってくれたおにぎりを持たされることに、だんだん違和感がなくなってきた。

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えふぅさんに教わったとおり、川沿いのサイクリングロードを走る。
これはラクでいい。しかも速い。
歩いている人々に驚かれたり話しかけられたり、なごやかに進む。

今日はこれから、同じ横浜市にある、一輪車専門店に寄るつもりだ。

一輪車専門店、そんなのあるのか?
なんとあるのだ。俺だってビックリした。


前にも書いたが、アイスランド一周時のタイヤチョイスは華麗に失敗した。
2度と過ちを繰り返さないように、できれば専門家の意見を聞いてみたい。
そう思った俺は、日本縦断を考え始めた頃、このユニサイクルハウスに簡単な質問メールを送ってみたのだ。
すると翌日の早朝には、店長の土屋さんという方から、丁寧かつ詳細にわたるメールが返ってきた。
それを読んで納得して注文したタイヤがまさに今履いているモノで、その性能の素晴らしさは、以前にも延々と書いたとおり。
そんな経緯があったので、横浜を通過する時にはぜひ一度寄ってみたいと思っていたのだ。

しかし。

昨日電話して聞いたところ、なんとこのお店、ネットショップだった。
書いてある住所に実店舗はなかったのだ!
いやー実は俺も、ウスウス0.3ミリぐらいそんな気はしてたけどな。
一輪車だけが店頭にゴンゴン並んでる店なんて、冷静に考えるとちょっとありそうにない。見てみたいけど。

店舗ではない普通のお宅に俺が出現したら、意味がないどころか不審者である。
残念だがここは諦めて…と思ったら、電話で話していた店長の土屋さんであろう方が、どうぞお寄りくださいと言ってくれた。
俺としては、一輪車にまつわる話をぜひ聞きたい。質問したいことが山ほどある。
そんなわけで、失礼を承知でお邪魔させてもらうことにした。

横浜市の北端にある港北区から、ユニサイクルハウスのある泉区まで。
同じ横浜だから大した距離じゃないだろうと思ったら、これが長かった…。
最近こんなんばっかり。なぜ学習しない。しかも横浜、意外とアップダウンあるのね。
思えば昨夜、えふぅさん&たけっちさんの両アニキが「ここから泉区まで一輪車で行くなんて…」と難しい顔をしていた理由が、今やっとわかった。

それでも20キロぐらい走って、ようやく泉区。
直前で一度連絡し、普通の住宅街の中を少し迷って、ユニサイクルハウスを探し当てた。
いやー、ホントにただの素敵な一般家屋で。
ガレージに一輪車が一台ぐらい置いてあるかと思えばそれすらなく。

チャイムを押すと、ユニサイクルハウスのサイトに出ているとおりの土屋さんが登場。
メールや電話でイメージしたとおりの、物腰の柔らかーい人である。
玄関先で少し立ち話をさせてもらうぐらいのつもりだったが、
なんと昼ごはんにカツ丼を頼んでくれたとのことで、家に上げてもらうことになってしまった。

アイスランドや日本縦断のことは事前にお話しておいたので、
一輪車での旅の話について、カツ丼をいただきつつ、さっそく濃厚な話が始まった。

さすがに、『一輪車の専門家』。
こう呼べる人が、日本に何人いるだろう。
一輪車に関して何を聞いても、聞いた3倍ぐらいの質と量で明快な答えが返ってくる。
特に俺が聞きたかった、長距離をラクに走るコツについても、かなりのヒントがもらえた。
驚くべきことに、42キロのマラソンでも、選手は一度も一輪車を下りないんだそうだ。
サドルに特別な工夫はなく、両手でカラダを支えるだけでなんとかなるらしい。
これは意外だった。長距離用スペシャルサドルがあるものだとばかり。

一輪車の開発に携わってきた一方で、第一線の競技者でもある土屋さん。
ちょっと想像がつくまい、最軽量のレース用ユニサイクルなどをバンバン見せてくれる。
フレームやタイヤはもちろん、ボルト1本、スポーク1本まで軽量化にこだわるという…。ええぇぇぇ。

そしてなんと、俺がしつこく聞きまくったからか、禁断の地下室を見せていただくことに。

控えめに『一輪車博物館』と書かれたそこは、まさに小さな男の城。
筋金入りのマニアがお気に入りのギターやフィギュアなどをズラッと並べるのと同じベクトルで、各種大量の一輪車が。
これは凄すぎる。安易に写真を撮ろうという気にもならない光景だ。
いつかは真の一輪車博物館を造りたいと語るその本気度が、ヒシヒシと伝わってくる。

キチンと並んでいる一輪車は、知らない人にはどれも同じに見えるが、もちろん違う。
一輪車の奥深い世界について、素人の俺にもわかりやすく丁寧に教えてくれる土屋氏。
ハッキリ言って俺にわかるのは、彼の一輪車に対する無限の情熱だけである。
これほど一輪車を愛している人って、ほかにいるんだろうか?って思ってしまうぜ本当に。

地下の一室にてみっちりと座学を叩き込まれた後は、やはり実地研修である。
小雨のパラつく中、一流の一輪車指導者の技が炸裂。

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フフ…。
笑うしかない。

北海道で一人でセコセコ乗ってるだけでは、哺乳類が絶滅しても到達できないレベルの差である。
湧き出る水のように次々と繰り出される技が凄まじいのはもちろんのこと、乗る動作があまりにもスムーズ。
俺が100回乗ってきた間に1000000000回乗ってきたことがそれだけでうかがい知れる。

「歩くより、一輪車に乗ってたほうがラクなんですよ。」

なんてセリフ、カナダのユニサイクリスト、クリス・ホルム以外で初めて聞いたよ。

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話がとても楽しく明るい奥さんにお願いして、記念撮影。

(注)思いっきり支えてもらっている。

ほんの少しの時間を割いてもらうつもりが、気づけば3時間超。ええーっ!!
ちょうど雨も止んだことだし、ここらでワタクシは去ります!

いやー、実店舗ではないと聞いて迷ったが、本当に寄らせてもらってよかった。
こんなにも熱い一輪車乗りの話を聞けるなんて。

ユニサイクルハウス、イイと思います。


ユニサイクルハウスで予想外の時間を過ごしてしまい、もう17時。
せめて横浜市ぐらいは出ておきたい。
国道1号線を再び走り始めるが、横浜を出てしまえば、そこは旧東海道。
バイパスを通れない一輪車や歩行者は、どうしても古くて狭い旧道を通らざるをえない。
あまり進まないのがもどかしくもあるが、なぜかこのあたり、やたらと声をかけられるのである。

今日は朝から、何人もの人に声をかけられた。ただの平日なのにな。
歯医者の前で休んでたら中から歯科助手のお姉さん方が声をかけてくれたり、
ポルシェのお兄さんに激励されたり、自転車の女子高生に応援されたり、
ツイッター経由でメッセージをくれた人もいた。
そしてもう暗くなりかけた頃、藤沢市のコンビニ前をさしかかったら、おもむろにジュースを持って近づいてくる人が。

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野菜ジュースとチーズとヨーグルトをくれたライダーさん。
おもしろいことしてるねー!と、しきりに感心してくれたな。

いやぁ、神奈川県民、とても印象がいい。

バイパスの迂回路で道を間違え、国道1号をはずれて海岸沿いに出てしまった。
だがそれが良かったようで、夜の海沿いの快速ロードをスイスイとユニサイクリング。
できれば到達しておきたかった茅ヶ崎まで、21時にはあっさりと来れてしまった。
そしてたどり着いた茅ヶ崎駅前で、なぜか俺を待ちかまえて声援を送ってくれる一家。
俺が言うのもなんだが…ど、どなたですか?

駅の近くで、ネットカフェを見つけて入店。
今は…うわっ、12時間以上も居る!!先に寝て、後から書き始めたからなぁ。

しょ、しょうがないんだ。
今の俺にできることといえば、名刺を渡すことと、しっかりと旅日記を書くことぐらいなんだ…。

よ、よし。
気を取り直してそろそろ出発だ。
えーと、昨日の走行距離は49キロ。以上!