ウィング・ノー・クライ

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茅ヶ崎のネットカフェでブログ書きに手間取り、出発は10時過ぎ。
しかし、今日は結構久しぶりに、予定というものがない。
首都圏に入ってからは毎日なんだかんだと忙しかったが、ようやく元の一輪車旅のペースに戻れるのかな。

茅ヶ崎から平塚、大磯と、国道1号線は海に沿って進む。
途中で海沿いにサイクリングロードがあるらしいと気づいたが、行った地点がちょうど工事中。
もういいやと思って、国道の細い歩道を走る。
こっちのほうが、人に目撃される機会が多くて楽しいじゃないか。

ところで、今日は暑い。
梅雨の晴れ間は貴重なものだが、蒸し暑いというのもやはり少し疲れる。
汗はダラダラ流れるし、また日焼けもしそうだ。

大磯町を走っている時にふと、『島崎藤村の家』という小さな看板を見つけた。
対向車線側だったので一度は通り過ぎたが、少し気になって引き返す。
こんなところに気軽に寄れるのも、人力旅のうちだけだろう。

その家は、歴史ありげな住宅街の奥にあった。
昭和18年だったかな、藤村が70代で亡くなるまで住んだ家だそうな。
正直、島崎藤村の著作をちゃんと読んだことはないから、ただ古い家見たさに来たようなところがある。

入場無料。しかし、立ち入るとチャイムが鳴り、中から妙齢の女性が出てきて説明をしてくれる。
彼女もたまに来た客がエライ格好をしているのに驚いたようであるが、説明を聞きつつ少しずつ自分の話もすると、わりと興味をもってもらえた様子だ。
そして、いいタイミングで現れた、近所の人であるという女性と共に、藤村邸をバックに写真に収まってもらったというわけだ。
ほら、やっぱり来てよかった。

このあたりの歩道は、なんだかいい感じに起伏がある。
細くて凹凸があるものの、人が少ないので走れなくはない。
しばらく長距離を走ってなかったので元気があり、天気は良すぎるほどいい。
こんなコンディションなら、少々走りにくいぐらいの道のりは楽しんでしまえるのだ。
ただ、この区間はクルマが多い上によく渋滞しているため、人の目が非常に多い。
あえてサイクリングロードではなく国道の歩道を走っている俺としては、ここはおいそれと歩いたりはできない場面である。
結局、時々しかないコンビニ以外では休憩が許されないような状況を、自分で作りだしてしまった。アホやねぇ。
でもいいじゃないか。たまには俺の熱走を背中で表現しまくるというのも。
やはり神奈川県、異様に声援が多いしな。
歩行者や自転車、そしていつものクルマからはもちろん、なぜか対向車からも写真を撮られつつ激励される。
前からじゃ俺が日本縦断してるなんてわからんだろうにな。嬉しいけど不思議だ。
おっと、キメキメチャリの初老の男性が路肩に停まり、
「写真を撮ってもいいですか。」と聞いてきてくれた。
いいなぁそういうの。もちろん大歓迎だ。
「私も一輪車に乗りたかったんだけど乗れなくてね。」
「いや、乗れますよ!大人が子供用に乗るから難しいんです。大人用ならすぐ乗れます!」
何をこんなことを淀みなくツルンと口走ったのかと思って考えたら、
昨日の土屋さんの受け売りだった。

道は大磯を過ぎ、凸凹歩道をクネクネと進むうちに、小田原へ。
まだ明るい時間だが、ここからが問題だ。
小田原から西の方向にはもう、青々とした山脈がそびえているのが見える。
箱根の峠は、すぐそこだ。
だがこの時間から峠にかかれば、ちょっとマズイことになる可能性はある。
悩みつつも、とりあえず微速で進む。
いつからか、向かい風が強烈になってきた。突風と言ってもいいぐらいの瞬間すらある。
暑くてノドが渇き、コンビニで休もうとすると、そこにいた工員風のおじさんが、飲み物ぐらい買ってあげると言ってくれた。
ありがたくミネラルウォーターをいただく。白い営業バンでシブく去っていく彼であった。

少しのぼり坂になってきた。
おや、もう峠にかかり始めたか?さぁどうしよう…と考えていると、横の自転車屋から俺を呼ぶような声が。
あー、あれはさっきの写真を撮った自転車の男性。
一服していきませんかということで、道を渡ってその自転車屋へ。
缶コーヒーをふるまわれ、店主とおぼしき白髪の男性を加えた3人で、しばしおしゃべり。
コシミズという自転車屋さんらしい。
自転車は詳しくないのでよくわからないが、スポーティなキメキメがたくさん並べてある。
横浜から小田原まではよくキメキメチャリダーを見たし、自転車屋も多かった気がする。そういう場所なのかもしれない。

自転車屋で話したおかげで、ちょうどよい時間になった。
これから箱根越えはムリ。頂上付近の道の駅まで行くのも厳しいだろう。
そうなれば、峠の入口にあたるこの箱根湯本までが頃合いだ。
横目に猿たちをチラチラ見ながら、箱根湯本の町に到着。
今日の走行は35キロか。
気合いを入れて走ったわりには、報われてない数字な気がするな。