一輪車クラブ潜入記

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先生のクルマで連行された先は、遠州灘海浜公園という、海辺の広大な公園であった。

この公園、なんと一輪車用の練習場がある。
そんな珍奇な区画が日本に存在するとはついぞ知らなかった。
そこでは一輪車の貸し出しもしてくれるそうで、
なるほど静岡県は一輪車が盛んだという話は真実に違いない。

肝心のクラブは公園の隅が活動の拠点であるらしい。
豪快な先生に連れられて行ってみると、顔は知らないハズなのに明らかに彼女だとわかる、しまちゃんがお出迎え。
いやー、確かに。イメージどおりのテンションだ。
本当は『しまちゃん』ではなくフルで『嗚呼っ…しまちゃんね』と表記しないとダメらしいのだが、残念ながら面倒なのでしまちゃんでヨシとする。
たぶん、一輪車に乗っていてインターネットでの発信もよくする人であれば、彼女とのサイバー遭遇はきっと避けられない事態であろう。
それぐらい彼女はネットユニサイクル界(実に狭い世界だ)では知られている存在である。

先生のおかげでタイミングよく俺と出会えたことを喜んでくれるしまちゃんだったが、
意外なことに、喜んでくれたのは彼女だけではなかった。
一輪車クラブの方々、特にお子さまたちが、突如出現した俺とマウンテンユニサイクルに興味津々のご様子である。
そしてなぜか、なぜか、クラブの子どもたちの前で、挨拶をすることに。
なんで俺がこんな目に!

「えー…。こんにちは!キケンジといいます!
今、一輪車で日本縦断してます。アイスランドって言う島も走りました。
でも俺は、前にしか走れません!(少しウケる)バックもできないので、みんなのほうが、よっぽど上手です。
だから、えー、世界に羽ばたいてください!」

よ、よし。なんとか手堅くまとめたな。さすが俺、本番に強いぜ。
そこからさらに、記念撮影に移行。
この際ハッキリ言っておくが、ここの人々は俺を有名人か何かだと勘違いしている。
ごくありふれた庶民ですよ、庶民。

とてもナチュラルな流れで、そのまま練習を見学することに。
まぁいいか、今日はもう40キロ以上走ってるし。
それにしても、すごいな。
こんなにたくさんの一輪車が並んでいるとこなんて初めて見た。
そしてみんな、うまい。
あの小さな16インチで、こんなにも熱い疾走をかます小児が実在するとは…。このケイデンスの小悪魔め!
そんな子どもたちに混じって走るしまちゃんの存在感は率直に言って異様だが、しかし速い。このケイデンスの悪魔め!(とても明るい、素敵なお姉さまです)

正直言って『競技』や『団体』と言ったコトバが非常に苦手なロンリネスな俺ではあるが、ここの練習風景には一見の価値があった。
集団での質と量を満たした練習を継続すると、みんながここまで高いレベルになるんだな。
子どもたちに引っ張られて100メートル走ぐらいは混ぜてもらったが、タイヤ乗り練習なんて俺、参加すらできんよ。

いやー、すごいねー、なんて言いながら、
子どもや大人と一輪車の話をしているぶんには、よかった。
だがこのクラブ、実は来週あたりにレースを控えているらしい。
それも、3時間耐久レース。
今はそのための特訓に余念がない状態なのだ。
ほほぅ、ガンバレよ!
俺は3時間連続で走れなんて言われたら絶対イヤだぞ!

練習の仕上げの3人1組、1人1.5キロ×3本の、いかにもしんどそうなリレーを和やかに観戦するつもりでいたら、
なんだか若いお父さんに勧誘され、大人トリオに組み込まれてしまった。
えーっ、あんなモンスター小学生たちを相手に俺のマウンテンユニで勝てる気がしないんですが…。
よし、いちおう聞いておこう。

「あのぅ、我がチームの目標はなんでしょうか。」

子どもをチギって大人げなく勝つ!とかだったらどうしよう。

「えーと…、完走すること。あと、落車しないことです。」

「素晴らしい目標です。わかりました。やりましょう。」

結果。
後ろから数えるとラクでいい順位。
先に終わった子どもたちに感動の並走をされてゴール。

速いよおまえら!!
大人げないとは思わないのか!!

あー、暑い。いい運動した。
もう2日分ぐらい走った気配がする。
これで俺もやっと、普通のユニサイクル・ツーリストに戻れるんだな…。
スポーツドリンクを飲みつつそんな感慨に耽っていたら、
なんと、子どもたちがみんなで俺にお礼を言ってくれるそうな。
おぉ、泣かせるじゃないかおまえたち…走りはシビアなのにな…。

そして最後に、トドメの演説。

「えー、今日はみんな本当にありがとう!とってもしんどかったよ!
日本縦断のほうがよっぽどラク(略)
…世界に羽ばたいてください!!」

とてもいい経験ができた。楽しかったぜ子どもたち!
何を勘違いしたのか、サインをせがまれたのにはビビったけどな。
思いっきり『キケンジです。』って書いてやったぜ。
来週の3時間耐久、ケガするなよ!
俺も、バックと片足乗りぐらいは練習しようかなぁと思った、そんなひとときであった。

ちなみに、この超フレンドリーな一輪車クラブは、『浜松フライングカイト』でございます。
ググればサイトもあるよ。リンクの設定がスマフォからはできないので、後日やっときます。

うわ、もう18時前かよ!
なんだかクラブの練習の最初から最後まで付き合った感が濃厚だが、きっと気のせいだ。
先生が俺を拾った地点まで、今度はしまちゃんカーで搬送される。
よし、仕切り直しだ。
おそらく20キロぐらい走れば、潮見坂という道の駅があるハズだ。

練習に参加して疲れていたハズだが、ここにきて久々のハイパーモード発動。
国道を突っ切り、薄暗い浜名湖には目もくれずに疾走。
大体、仙台で牛タンを食わず、宇都宮で餃子を食わず、静岡で茶すら飲まなかった俺が、浜名湖でウナギを食うわけがない。

おぉ、ペダルが軽い!箱根越えのあの痛みがウソのようだ。
クラブの子どもたちには、タイヤ乗りもできずにあえいでいる姿より、今の俺の背中を見せたかったぜ!
でも危ないからマネするなよ!

暗くなっても気合いと歩道があれば大丈夫、ライトピカピカで突撃し、20時過ぎには道の駅に到着。
我ながら速かった!そして明日は、脱け殻必至!

走行距離、72キロ。クラブ練習の5キロほどを含む。
ふぅ、やり切ったぜ!