デリシャスケイデンス35

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いい風だ。
普段なら寒風吹き荒ぶと表現したくなるような北風だが、
ユニサイクリングには最高の追風。
道もいい。
国道10号線、小倉から行橋までの20キロほどは、
この旅でもまれに見る超快適歩道区間である。

こうなるともう、走らざるをえないよな。
あまりにもよくできた道だと、
走りすぎて疲れても降りて歩いてはいけないような気がする。
これまで日本のあちこちで、
やれ歩道がないだの路肩が狭いだのとギャーギャーわめいてきたが、
こう条件が良いとそれはそれでまたなんともいえない複雑な味わいだ。
距離だけはスルスルッと進むけどな。
走りすぎて暑くなるぶん、止まった時の汗の冷えが心配になるほどだ。

快速バイパスをようやく抜けたところにコンビニがある。
よかった、やっと休める。
いつものように店の前に一輪車とザックを固めて置き、
店内に入ろうとすると、
コンビニに駐車中のクルマから人が出てきた。
なんだか上品そうなおばさまが二人。

彼女たちは突如現れた一輪車の旅人にえらく驚いたようで、
あれこれとインタビューなみに質問され、かつ誉められまくる。
誉められるのはもちろんイヤではないのだが、
これがまた近年まれに見る、もはや世界が認めたレベルの賛辞であって、
俺はむしろもういたたまれない心地になってしまうのだ。
その絶賛ぶりを要約するとこんな感じ。

こんな凄いことをやる高い理想を持ったあなたは
35歳にはとても見えない若くていい顔をしてらっしゃるし
とても健康そうで知的な雰囲気も感じられるから
ゆくゆくは何か大きなことを成し遂げる人なんじゃないかと思うの!

…史上空前の賛辞、おそれいります。
でも実態はそんないいもんじゃないんですよ。
ああもう、日頃の自堕落な俺を全てさらけ出したい気分になってきた。

しかしともかく、誉められて嬉しくないわけがない。
記念にお二人の写真を撮らせてもらい、
走る様子を見たいというので猛ダッシュで走り去る。
我ながら単純である。
このやりとりで疲れが気にならなくなってしまうところが、特に。

それにしてもだ。
35歳というのは、そんなに落ち着くべき年齢なのだろうか。
たしかに世の中の一般的な35歳は、
そろそろ責任がありヒマはなく、
こんなことなんかしている場合じゃないというのはわかる。
だがそれをのぞけば、
今ぐらいは体力も気力もあり、知識や経験もそこそこあり、
実り豊かな旅をするにはベストな年代じゃないかとも思う。

今回は特にエネルギーのいる人力の旅ではあるが、
俺は自分の身体が昔より衰えているという実感が、今のところない。
むしろ今が最も身体能力的にバランスが取れているかもしれない。
もともと子どもの頃から筋力も運動能力も大したことがないので、
その気になって鍛えればある程度はすぐに伸びる、
というショボい事情もあるとは思うが。

それと、俺が若く見えるというのは怪しい。
10年前に撮ったパスポートの写真なんか、
なんだかポワンとしてボヤッとしていかにも若く頼りなく、
少なくとも今の自分の顔とはだいぶ違う。

でもそういえば、
俺の回りにいるような連中には妙に若く見える人が多いな。
これはまぁ同類が集まっているということなんだろうが、
何より好きなことを率先してやっているという点が似ている。
あ、わかった。
若さの秘訣は、無責任だ!

国道の舗装が古くなった。
歩道も細くなりギャップも増えたが、あるだけでありがたい。
曇り空のなか、強い追風を受けてガタゴト走っていると、
さっきから航空機の轟音が凄い。あの爆音は戦闘機だろう。
やがて航空自衛隊の基地の横にさしかかったので、なるほどと納得。
いつもこんな調子なのか、今は有事に備えて特に飛び回っているのか。

基地の敷地内から一人の隊員が、
「がんばれー!」と輝かしい笑顔で応援してくれた。
いま大変なのは俺じゃなくそっちだろうに。
俺が能天気にこんなことをしていられるのも、
日本がまだしも平和だからだ。
戦争ほどバカバカしいものはない。
こんなバカなことができなくなるなんて、
そんなバカなことはないだろう。

その後もユニサイクリングは順調に進み、
今日が冬至の18時を過ぎてもうすっかり暗くなった頃、
豊前市の道の駅「おこしかけ」に到着。
なかなかいい感じなのでここで寝るのはまったく問題ないのだが、
なぜかこのエリアは数キロ先にもう1つ道の駅がある。
時間もあるし、どうせならもうちょい進んでおくか。

と、ここで。
まさかのミスコース!
何を思ったか道の駅から自動車専用道へと向かう、
まるで反対方向の道を進んでしまった。
往復で6キロほどのロスだ。ちなみに一輪車の6キロはデカい。
暗くて標識も見えにくかったとはいえ、
逆走とはまたハジけたことをやらかしたものだ。
ちょびっとだけ落ちこんだぜ。
しかしその頃、クルマから俺をみかけたという人が、
わざわざブログにコメントを書いてくれていたのだった。
嬉しいね、こういうのはやっぱり!

元来た道を引き返し(これが何より嫌いだ)、気を取り直してスタート。
それでも21時前には次の道の駅「しんよしとみ」に着いた。
ここは遺跡の真横にあるという俺好みな物件だ。
ま、暗くてなんにも見えんけどな。
さあ寝よう。ブログは…起きたら書く。

…。

で、起きた。
昨日はさすがに疲れていたようで、
意識がヤル気になるまで時間がかかった。
風にひたすら一輪車を漕がされて参るって体験、
キミも人生がやたらとヒマになったらやってみるといいよ。

昨日の走行は63キロ。
おっともう9時前か!
居心地のいいこの道の駅もいい加減に出ないとな。
古代人にGood Luck!と言われるのは俺も初めてだ。

あ、出発しようと思ったら電話が。
国際電話??
怪しみながら出てみたら、なんと山口で会った韓国人チャリダーのキム君だよ。
もう神戸に着いたらしい。
28日の帰国までは、京都や奈良を走って観光するそうだ。
いいな、楽しんでるなー。
よっしゃ、俺も行くか!