ものもらう男・ゴールド

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水俣市に着いた。
昨日あたりはまだまだ先と思っていたが、来れば来られるものである。

国道の交通量以外は心なしか閑散とした水俣市街を抜ける途中、
ふと気が向いてスーパーに立ち寄る。
そこでは元気なおばあさんがなぜか秋田産というリンゴをくれて、
「事故せんごと!」
と応援してくれるのであった。今度はリンゴか…。

そろそろ日が傾きだした。
今日はどこまで行けるだろう。
水俣には道の駅があるが、寝るにはまだだいぶ早い。
ここから10キロちょい走れば出水市で、その先は阿久根市。
さらに進めば阿久根の道の駅ってのもあるみたいだが、
これはさすがに遠い。そこまではムリだ。
よし、とりあえず出水市だな。

水俣市街から軽い峠を上りきると、向こうは出水市。
そして鹿児島県だ。
なるほど、出水市からはもう鹿児島県なんだな。
4泊5日もいた長い熊本の旅もついに終幕だ。

熊本の人々は本当によく声をかけてくれて、親切にもしてもらった。
なんといっても二度も泊めてもらったしな!
俺をマラソンランナーでもあるかのように、
沿道から熱心な声援を送ってくれた農家のおばさんもいたな。
写真に残っていなくても、俺の記憶にはしっかりと残った人も多い。
熊本県、印象深いところだった。
ありがとう!

そして、こんにちはと言うかそろそろこんばんはの鹿児島県。
ついにここまで来たねー。
峠を下れば出水市街。
暗くなりかけの歩道をスパッと走り、一気に市街を抜ける。

さてどうしよう、次の阿久根までは20キロちょいかな。
行けるといえば行ける。
もう暗くなったが、歩道さえしっかりしていれば走行は可能だ。
一輪車に付けた頼りないLEDライトと、
ときどきクルマが照らしてくれる明るい視界を組み合わせて、
路面をイメージで補足しながら走る。

こんなナイトランにもずいぶんと慣れたものだ。
春夏の日本縦断前半ではほとんどやろうとも思わなかったことだが、
日照時間の短い冬だと、夜の移動なしではロクに進めないからな。

出水から阿久根まではほぼ直線、夜でもそこそこ走れる道が続く。
昨夜のキツイ寂しい暗い+恐怖トンネルのスリラー峠とはワケが違う。
これなら距離も稼げそうだ。

少し暗いエリアを抜けて明るい場所に出た時、
前方にバスでも待っているような若い女性を発見。
しかし彼女はなんと、俺を待っていた!

クルマで俺を追い抜いて驚いたという彼女、
格好はキラキラだが落ち着いていて物腰も優しく、
たまたまクルマにあったというチョコバット…
によく似たロングヒットというお菓子を2本くれるのであった。

しかし今日は凄い。
俺のものもらいライフもここに極まった感じだ。
朝の缶コーヒーに始まり、パンとミカン、フランスパン、リンゴ、
そしてチョコバットではないロングヒット。
一体全体何がどうなってしまったのか。
それなりにバランスも取れていて、栄養満点!

そんなロングヒットな彼女は、
俺の知りたかったこの先の道のりについても的確な情報をくれた。
そうか、それなら阿久根まではこの調子で行けそうだ。

彼女にお礼を言い、再び走り出す。
5キロもいけば阿久根市街に到着だ。
もう21時だが…今夜はなんだか調子がいい。
俺の中でまた何かが組み変わりつつあるのを感じる。
ここで止まるなんてできるはずがないよな!

キラキラな彼女に教わったとおり、
阿久根市街を抜けると道は急速に寂しくなった。
だがあともうちょい走れば道の駅があることはわかっている。
道が細く暗くなったので歩くことも多くなるが、
熱く走りすぎた汗をゆるやかにクールダウンさせるには、ちょうどいい。

最後はついに歩道もなくなった中、
どうにかこうにか阿久根の道の駅に到着。
さすがにもう22時過ぎか。
阿久根市でもほとんど次の薩摩川内市に近いこの場所に、
よもや今日のうちに来られるとは、昼にはとても思えなかった。
ここまでの走行距離は72キロだ。

しかし、走りまくってせっかくやって来たこの道の駅、
残念ながらあまりアーバン野宿に適していない。
国道と海岸に挟まれていて敷地が狭いし、なにより海風が強いのだ。

とはいえ、もちろん文句を言える筋合いでもない。
微妙な位置取りでダブルシュラフにもぐりこむ。
まだあまり汗が乾いていないのが気になるが、
旅日記も書き始めであっさり力尽き、すぐに眠ってしまった。