かぼそい夜
雨も止み、光が戻ってきた。
暑い。
あーあの橋は、瀬底島が見えてきたな。
本部半島に近い瀬底島という小島には、
瀬底大橋という名の美しいアーチの橋が架かっている。
瀬底島に特に用はないが、ここに来たらやはり橋は渡っておくか。
橋の真ん中、アーチの頂上からの眺め。
遠くに伊江島が見える。
ここで恒例のユニサイクリング写真でも撮ろうかと思って準備していると、
本島側から自転車で上ってくる青年がいる。
彼はマツエ君という沖縄のイケメン大学生で、
正月休みを利用して沖縄を回っているそうだ。
先輩から借りたらしいガタガタの自転車で旅というのがまたいい。
せっかくこんなところで彼と出会ったので、記念撮影に参加してもらおう。
瀬底大橋を一気に走り下りて、本島側にあるスーパーの駐車場へ。
記憶よりも狭い気がする。
この駐車場でバイクの横に寝転んで倒れていた俺に、
買い物帰りのお婆さんが、ヨーゴと言う沖縄の乳製飲料をくれたんだよな。
そんな本部町を今回は軽快に走り抜けたら、
次は今帰仁村(なきじんそん)だ。
え、本部半島と言えば、美ら海水族館?行かないよ。
今帰仁村を突っ切る道はアップダウンが多く、
歩道は相当な歴史を感じさせるガタガタな石造りのところもあり、
マウンテンユニサイクルで駆け抜けるにはテクニカルでおもしろい。
しかし、相当に疲れる。
上り坂や荒れたギャップをイチイチ相手にし過ぎた。
久々に見つけた下り坂のコンビニで座り込むと、
中年の夫婦がパンを、
後にイケメンな青年がスポーツドリンクを差し入れてくれるのだった。
あらら、コンビニの脇に座っただけで、一連の食事が完成。
本部半島以降はさすがに声をかけられることも減っていたので、嬉しい。
それでもコンビニの軒先で休ませてもらうショバ代がわりに、
やっぱり別に飲み物ぐらいは買うのだった。
ところで、旅をしている俺に声をかけてくる若い青年には、
なぜかナイスガイなイケメンが多い。これは本当だ。
俺が女性ならウハウハなのになぁ。不思議なもんだ。
こんなことなら最初からちゃんと写真を撮って、
日本イケメン図鑑でも作ればよかったぜ。
あぁ、なんだかキツかった今帰仁村、ようやく突破か。
そんな時にホーンを鳴らして俺を追い抜いて行くのは、
またしてもオレンジ色のハーレーに乗ったエージさんであった。
よく会うなぁ。向こうもそう思ってることだろう。
本部半島めぐりのラストは、近道のつもりで屋我地(やがじ)島を通る。
ここはあまり観光客の来ない島なのか、
橋を渡って島に入った途端に人の気配がなくなり、
あたりはまるで時間が止まったようだ。
沖縄だからといって、どこでも明るく賑やかなわけではない。
大きな道を一歩外れれば、
島にはこんな静かなところがたくさんあるのだろう。
俺も今日は一輪車に乗り過ぎている気がする。
クルマも少ないこのあたりぐらいは、
のんびりと歩いてマタと筋肉を休ませなくては。
次の橋を渡って島を出て、
さあやっと国道58号線に復帰!というすぐ手前で、
俺にゼリー飲料を手渡そうとしている男性に遭遇。
伊平屋(いへや)島という島に用があって行って来た帰りという彼。
なんでも伊平屋島は琉球王朝のルーツがある島だとかで、
彼もまたその血を引いており、ある行事に参加して来たのだと言う。
へー、そんな歴史的な行事が今もあるんだな。
そう言われてみると彼の顔がなんだか高貴な人のように見えてくるのは、
琉球王朝の威光なのか、俺が単純なせいなのか。
よし、本部半島はこれでクリアだ。
元の国道58号線に戻り、ひたすら北上。
もう16時過ぎになってしまっているが、
目標の国頭村(くにがみそん)の道の駅にはたどり着けるだろう。
まだこの辺りは大宜味村(おおぎみそん)。
それにしても今日は海風が強い。
左前方あたりから強力な風圧がかかり、走りにくいったらない。
しかし、沖縄に来て以来の俺は、
上り坂も向かい風も激しいギャップも、
わりと一輪車を下りずにトライしてしまうのが習慣化している。
走りやすい道路状況と、先日の大注目が俺をそうさせているのかもしれない。
途中にある大宜味の道の駅はあまり寝るには適していないのでパス。
さらに風に押し返されつつ10キロも進めば、国頭村だ。
18時、もはや暗い。
道の駅までもうあと2キロぐらいのところを歩いていると、
背後からきたママチャリのおっちゃんに声をかけられ、
そのまま歩きながら話す流れに。
しかしこのおっちゃん、方言が凄まじい。
しかも早口でまくしたてられ、本当に3割ぐらいしか理解できない。
主に北海道の話題だったので、
地名を頼りになんとか話を繋ぐことはできたようだが。
ようやく道の駅に着き、上機嫌なおっちゃんはまた自転車に乗って去る。
外国で話しているかのような緊張からやっと解放されたよ。
道の駅、国頭村。
ここにも思い出があるんだ。
バイクからノートパソコンを落として壊したり。
今みたいに旅日記を書いていたら、
泡盛で酒盛りをする女子中学年たちに酒を振る舞われたり。
彼女らは途中で見回りにきたパトカーを見るとトイレに逃げ込んだりして、
なんというか慣れてるというか堂々としているというか。
俺はそんな彼女たちから、
沖縄の中学年たちが狭い島の中で荒れているって話を聞いたんだよな。
さて今回はというと。
うまく風を遮断できる場所を見つけて寝ていたら、
深夜にやっぱりやってきた少年たちの話し声がやかましく、
ヨソモノの俺としてはサッサと寝床を放棄して、
道の駅の裏側の、ここならジャマされまい、てとこで寝直した。
しかし深夜の3時頃かな、
なぜかそこを大量にぞろぞろと歩いてくる少年少女たちの喧騒で、
またしても起こされる。
なんなんだおまえら、新年会か?肝だめしか?
頼むからこんなトコまで来るなよ!
もうめんどうなので起きたりしなかったけど。
彼らは攻撃的な感じはしなかったので俺もおとなしくしておられたが、
本来宿泊施設でもない道の駅で寝たりするというのは、
こういうリスクもたまにはあると言うことなのだ。
沖縄一周の道のりでは、もうこの先に道の駅はほとんど無いのだけども。
明日は少し気合いを入れなければならんのだが…どうなるかな。
風は強いし、少し雨も降っているようだ。
今日は70キロ走っていた。
暑い。
あーあの橋は、瀬底島が見えてきたな。
本部半島に近い瀬底島という小島には、
瀬底大橋という名の美しいアーチの橋が架かっている。
瀬底島に特に用はないが、ここに来たらやはり橋は渡っておくか。
橋の真ん中、アーチの頂上からの眺め。
遠くに伊江島が見える。
ここで恒例のユニサイクリング写真でも撮ろうかと思って準備していると、
本島側から自転車で上ってくる青年がいる。
彼はマツエ君という沖縄のイケメン大学生で、
正月休みを利用して沖縄を回っているそうだ。
先輩から借りたらしいガタガタの自転車で旅というのがまたいい。
せっかくこんなところで彼と出会ったので、記念撮影に参加してもらおう。
瀬底大橋を一気に走り下りて、本島側にあるスーパーの駐車場へ。
記憶よりも狭い気がする。
この駐車場でバイクの横に寝転んで倒れていた俺に、
買い物帰りのお婆さんが、ヨーゴと言う沖縄の乳製飲料をくれたんだよな。
そんな本部町を今回は軽快に走り抜けたら、
次は今帰仁村(なきじんそん)だ。
え、本部半島と言えば、美ら海水族館?行かないよ。
今帰仁村を突っ切る道はアップダウンが多く、
歩道は相当な歴史を感じさせるガタガタな石造りのところもあり、
マウンテンユニサイクルで駆け抜けるにはテクニカルでおもしろい。
しかし、相当に疲れる。
上り坂や荒れたギャップをイチイチ相手にし過ぎた。
久々に見つけた下り坂のコンビニで座り込むと、
中年の夫婦がパンを、
後にイケメンな青年がスポーツドリンクを差し入れてくれるのだった。
あらら、コンビニの脇に座っただけで、一連の食事が完成。
本部半島以降はさすがに声をかけられることも減っていたので、嬉しい。
それでもコンビニの軒先で休ませてもらうショバ代がわりに、
やっぱり別に飲み物ぐらいは買うのだった。
ところで、旅をしている俺に声をかけてくる若い青年には、
なぜかナイスガイなイケメンが多い。これは本当だ。
俺が女性ならウハウハなのになぁ。不思議なもんだ。
こんなことなら最初からちゃんと写真を撮って、
日本イケメン図鑑でも作ればよかったぜ。
あぁ、なんだかキツかった今帰仁村、ようやく突破か。
そんな時にホーンを鳴らして俺を追い抜いて行くのは、
またしてもオレンジ色のハーレーに乗ったエージさんであった。
よく会うなぁ。向こうもそう思ってることだろう。
本部半島めぐりのラストは、近道のつもりで屋我地(やがじ)島を通る。
ここはあまり観光客の来ない島なのか、
橋を渡って島に入った途端に人の気配がなくなり、
あたりはまるで時間が止まったようだ。
沖縄だからといって、どこでも明るく賑やかなわけではない。
大きな道を一歩外れれば、
島にはこんな静かなところがたくさんあるのだろう。
俺も今日は一輪車に乗り過ぎている気がする。
クルマも少ないこのあたりぐらいは、
のんびりと歩いてマタと筋肉を休ませなくては。
次の橋を渡って島を出て、
さあやっと国道58号線に復帰!というすぐ手前で、
俺にゼリー飲料を手渡そうとしている男性に遭遇。
伊平屋(いへや)島という島に用があって行って来た帰りという彼。
なんでも伊平屋島は琉球王朝のルーツがある島だとかで、
彼もまたその血を引いており、ある行事に参加して来たのだと言う。
へー、そんな歴史的な行事が今もあるんだな。
そう言われてみると彼の顔がなんだか高貴な人のように見えてくるのは、
琉球王朝の威光なのか、俺が単純なせいなのか。
よし、本部半島はこれでクリアだ。
元の国道58号線に戻り、ひたすら北上。
もう16時過ぎになってしまっているが、
目標の国頭村(くにがみそん)の道の駅にはたどり着けるだろう。
まだこの辺りは大宜味村(おおぎみそん)。
それにしても今日は海風が強い。
左前方あたりから強力な風圧がかかり、走りにくいったらない。
しかし、沖縄に来て以来の俺は、
上り坂も向かい風も激しいギャップも、
わりと一輪車を下りずにトライしてしまうのが習慣化している。
走りやすい道路状況と、先日の大注目が俺をそうさせているのかもしれない。
途中にある大宜味の道の駅はあまり寝るには適していないのでパス。
さらに風に押し返されつつ10キロも進めば、国頭村だ。
18時、もはや暗い。
道の駅までもうあと2キロぐらいのところを歩いていると、
背後からきたママチャリのおっちゃんに声をかけられ、
そのまま歩きながら話す流れに。
しかしこのおっちゃん、方言が凄まじい。
しかも早口でまくしたてられ、本当に3割ぐらいしか理解できない。
主に北海道の話題だったので、
地名を頼りになんとか話を繋ぐことはできたようだが。
ようやく道の駅に着き、上機嫌なおっちゃんはまた自転車に乗って去る。
外国で話しているかのような緊張からやっと解放されたよ。
道の駅、国頭村。
ここにも思い出があるんだ。
バイクからノートパソコンを落として壊したり。
今みたいに旅日記を書いていたら、
泡盛で酒盛りをする女子中学年たちに酒を振る舞われたり。
彼女らは途中で見回りにきたパトカーを見るとトイレに逃げ込んだりして、
なんというか慣れてるというか堂々としているというか。
俺はそんな彼女たちから、
沖縄の中学年たちが狭い島の中で荒れているって話を聞いたんだよな。
さて今回はというと。
うまく風を遮断できる場所を見つけて寝ていたら、
深夜にやっぱりやってきた少年たちの話し声がやかましく、
ヨソモノの俺としてはサッサと寝床を放棄して、
道の駅の裏側の、ここならジャマされまい、てとこで寝直した。
しかし深夜の3時頃かな、
なぜかそこを大量にぞろぞろと歩いてくる少年少女たちの喧騒で、
またしても起こされる。
なんなんだおまえら、新年会か?肝だめしか?
頼むからこんなトコまで来るなよ!
もうめんどうなので起きたりしなかったけど。
彼らは攻撃的な感じはしなかったので俺もおとなしくしておられたが、
本来宿泊施設でもない道の駅で寝たりするというのは、
こういうリスクもたまにはあると言うことなのだ。
沖縄一周の道のりでは、もうこの先に道の駅はほとんど無いのだけども。
明日は少し気合いを入れなければならんのだが…どうなるかな。
風は強いし、少し雨も降っているようだ。
今日は70キロ走っていた。