あめふる島
夜中は見事に天気予報どおりの雨が降り続いていた。
この雨が早倒しで昼に降らなくて助かった。
朝には止んでいたのだが、やはりまだスッキリとはいかない。
この先はもう急ぐ必要もないしと、
そのまま慶佐次にあるヒルギ林の公園で昨日の旅日記を書く。
しばらくすると、北から2台の自転車がやって来た。
おや、一昨日に辺戸岬の近くで会った女の子2人組だ。
昨日は遭遇しなかったが、今朝会うとはな。
東京から来ているという彼女たち、実は姉妹だった。
先日出会った恩納村でレンタサイクル屋を営む安井さんが、
俺にメールをくれるまでは全然気づかなかったよ。
彼女たちは昨日、俺より早い時間に奥を出発し、
あの壁のような坂に同じく苦しみ、
慶佐次の手前の平良の民宿で泊まったのだという。
今回の自転車旅は今日が最終日だそうで、
微妙な天気で残念と言うべきか、
ザーザー雨じゃなくてまだ良かったねと言うべきか。
ヒルギ林の前で彼女たちの写真を撮り、先に発つ彼女たちを見送る。
朝は止んでいたのに、また時々パラパラと降る。
俺はゆっくりと昨日の旅日記を書き終え、
一昨日の晩に金城さんからもらったムーチーなどを食う。
そういやムーチーって、日持ちするんだろうか。
独特な香りの葉で巻かれているからたぶん大丈夫だろうと、
不明瞭な理由づけで自分を安心させるのであった。
もう12時前だな。
なんとなく雨だし急ぐ理由もないのだが、
やることがなくなると進みたくなるのが旅人の常か。
南国やアジアの国々では、
安宿に留まってウダウダと「沈没」する日本人が数多くいるという話だ。
俺にはそういうことはできそうもない。
目的がない人間の目は淀むような気がするのだ。
さて、俺も行こうか。
慶佐次から一山越えて、次の有銘(あるめ)の集落へ。
ワンボックスカーに満載された小学生たちに応援された直後ぐらいで、
パラパラ雨が普通の雨に変わってくる。
おっと、これは厳しい。
向こうにトンネルっぽいものが見える、とりあえずそこで休もうか。
トンネルの隅でパンなど食べながら雨宿り。
しかし、雨が止む気配はない。今日は曇りじゃなかったのか?
こんなところで夜まで待つわけにもいかない。
やむをえずトンネルを出て、雨のなかを歩き出す。
いい気分ではない。
海沿いだった道は、こんな時に内陸に入って上り坂となる。
歩道もないし足元が滑るので、危ない。
先日、国頭の道の駅の隣にあった沖縄最北のコンビニで買っておいた、
折り畳み傘の出番がやはり来たようだ。
ちょっとファンシーなデザインではあるが、
雨の路肩ではクルマに対して目立つに越したことはない。
左手に傘、右手に一輪車のスタイルで、雨の樹林の間を黙々と歩く。
沖縄の北東部が西岸に比べてなぜ開発されないのかというのは、
こうして実際に人力で進んでみるとよくわかる。
海岸線の切り立った部分が多く、平地が少ないからだ。
こんな環境は昨日の50キロで終わったと思っていたが、
どうやらまだ続くんだな…。
亜熱帯の冬の雨が、小さな傘をかわして服を溶かす。
歩くばかりだと進まず、まして坂だ。
最初の10キロが長い。
こんなことをして何が楽しいのかと、つい考える。
何かもっと別な、誰からも賞賛され、憧れられるような、
そんなことをしたいハズなのに。
結果はいつもどこか、だいぶ違ってしまうのだ。
ただ雨に降られただけで、こんな。
この雨もまた樹林には恵みであろう。
日本を縦断することで今の日本をよく見ておきたいというのなら、
この道もまた確かに日本なのだ。
眼前に長い下りが広がった。
よし、ここはもう走り下りてしまうか。
濡れたサドルに跨がり、クルマがあまり来ないうちにと一気に下りる。
行き違った郵便局のバイクの人が、驚きながら笑顔をくれた。
山地を越え、またようやく海に出てきた。
ここには大きめな集落があり、共同売店もある。
ここで一息ついて、ようやく気分も回復してきた。
どうやら、雨も少し弱まってきているらしい。
この雨が早倒しで昼に降らなくて助かった。
朝には止んでいたのだが、やはりまだスッキリとはいかない。
この先はもう急ぐ必要もないしと、
そのまま慶佐次にあるヒルギ林の公園で昨日の旅日記を書く。
しばらくすると、北から2台の自転車がやって来た。
おや、一昨日に辺戸岬の近くで会った女の子2人組だ。
昨日は遭遇しなかったが、今朝会うとはな。
東京から来ているという彼女たち、実は姉妹だった。
先日出会った恩納村でレンタサイクル屋を営む安井さんが、
俺にメールをくれるまでは全然気づかなかったよ。
彼女たちは昨日、俺より早い時間に奥を出発し、
あの壁のような坂に同じく苦しみ、
慶佐次の手前の平良の民宿で泊まったのだという。
今回の自転車旅は今日が最終日だそうで、
微妙な天気で残念と言うべきか、
ザーザー雨じゃなくてまだ良かったねと言うべきか。
ヒルギ林の前で彼女たちの写真を撮り、先に発つ彼女たちを見送る。
朝は止んでいたのに、また時々パラパラと降る。
俺はゆっくりと昨日の旅日記を書き終え、
一昨日の晩に金城さんからもらったムーチーなどを食う。
そういやムーチーって、日持ちするんだろうか。
独特な香りの葉で巻かれているからたぶん大丈夫だろうと、
不明瞭な理由づけで自分を安心させるのであった。
もう12時前だな。
なんとなく雨だし急ぐ理由もないのだが、
やることがなくなると進みたくなるのが旅人の常か。
南国やアジアの国々では、
安宿に留まってウダウダと「沈没」する日本人が数多くいるという話だ。
俺にはそういうことはできそうもない。
目的がない人間の目は淀むような気がするのだ。
さて、俺も行こうか。
慶佐次から一山越えて、次の有銘(あるめ)の集落へ。
ワンボックスカーに満載された小学生たちに応援された直後ぐらいで、
パラパラ雨が普通の雨に変わってくる。
おっと、これは厳しい。
向こうにトンネルっぽいものが見える、とりあえずそこで休もうか。
トンネルの隅でパンなど食べながら雨宿り。
しかし、雨が止む気配はない。今日は曇りじゃなかったのか?
こんなところで夜まで待つわけにもいかない。
やむをえずトンネルを出て、雨のなかを歩き出す。
いい気分ではない。
海沿いだった道は、こんな時に内陸に入って上り坂となる。
歩道もないし足元が滑るので、危ない。
先日、国頭の道の駅の隣にあった沖縄最北のコンビニで買っておいた、
折り畳み傘の出番がやはり来たようだ。
ちょっとファンシーなデザインではあるが、
雨の路肩ではクルマに対して目立つに越したことはない。
左手に傘、右手に一輪車のスタイルで、雨の樹林の間を黙々と歩く。
沖縄の北東部が西岸に比べてなぜ開発されないのかというのは、
こうして実際に人力で進んでみるとよくわかる。
海岸線の切り立った部分が多く、平地が少ないからだ。
こんな環境は昨日の50キロで終わったと思っていたが、
どうやらまだ続くんだな…。
亜熱帯の冬の雨が、小さな傘をかわして服を溶かす。
歩くばかりだと進まず、まして坂だ。
最初の10キロが長い。
こんなことをして何が楽しいのかと、つい考える。
何かもっと別な、誰からも賞賛され、憧れられるような、
そんなことをしたいハズなのに。
結果はいつもどこか、だいぶ違ってしまうのだ。
ただ雨に降られただけで、こんな。
この雨もまた樹林には恵みであろう。
日本を縦断することで今の日本をよく見ておきたいというのなら、
この道もまた確かに日本なのだ。
眼前に長い下りが広がった。
よし、ここはもう走り下りてしまうか。
濡れたサドルに跨がり、クルマがあまり来ないうちにと一気に下りる。
行き違った郵便局のバイクの人が、驚きながら笑顔をくれた。
山地を越え、またようやく海に出てきた。
ここには大きめな集落があり、共同売店もある。
ここで一息ついて、ようやく気分も回復してきた。
どうやら、雨も少し弱まってきているらしい。