6月17日#3 街のインパラ

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久しぶりの大きな街、サンタクララに着いた。
 
今日も暑さにやられた。さすがに疲れて、人に声をかけられても無愛想だ。
もはやおなじみのモンタ野郎はすべて無視。
おまえらに乗れと言われて誰が乗るか!
 
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サンタクララはビジャクララ州の州都。というわけで、予想通りにデカイ。
大型店舗もあるし、なんせ人がいっぱいだ。
 
実は、バラデロで泊まったミゲルの宿で、もしサンタクララに行くことがあればと、
この街にあるカサ・パルティクラルの名刺を渡されていたのだ。
だがこれだけ大きな街で、しかも地図や案内板もないとなれば、その宿を自力で探すのは難しそうである。
こうなったら人に聞くしかないな。
 
ここはちょうどバスターミナルらしくて人が集まっている。
誰かに道を尋ねよう…とするまでもなく、おっさんに声をかけられるのだ。
どうやら宿の客引きらしい。
宿の人間が向こうから声をかけてくるなんて、さすがは都会である。
しかし、余裕をもっていられたのもここまで。
俺は目をつけられていたのか、それを皮切りに続々と別の客引き連中が囲んでくるのだ。
おぉ、なんだこれは。
都会というよりはもはや江戸時代の宿場町を彷彿させるな!
 
この状況で、なぜかその場を仕切るように、俺との交渉権を独占してしまったジジイがいる。
背の低い老人。威厳があるのかないのかよくわからん風貌。
それでいて、俺を取り囲む連中を、怖い顔と意味不明な一喝でもってしりぞけてしまった。
 
「おまえは宿を探しているのか。」
 
そう言っている感じである。
なんだか怪しいなーと思いつつ、とりあえず値段を聞いてみる。
一泊20CUCだと。
うーん、微妙だが高くはないな…。
 
そう悩んでいるうちにグイグイ連れていかれ、なんと彼のクルマに乗ることになってしまった。
そのクルマがまた、エラい旧車である。よくわからないがアメ車だろうか?
果たしてコイツについていって大丈夫なのかという気もよぎりまくるのだが、
これだけ衆人環視の状況である。そう悪いこともできまいと思い、覚悟を決めた。
 
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クルマ…、インパラって書いてあるな。
とにかく俺が今まで乗ったこともないような派手な旧車は、サンタクララの裏通りをゆく。
 
やはりこの町、すごく広い。
メインストリートの裏には無数の四角い家がビッシリと軒を接して立ち並んでいる。
親父はそんな家並みの途中にある一軒の前でクルマを止めて降車し、おや、ベルを押しているな。

なるほど。
コイツは自身が宿のオーナーなのではなく、宿を斡旋している人物なのだろう。
ならばあとで手数料の請求がありそうだぞ。
だがベルを押したその宿は、なぜだかダメだったようだ。先客がいたのだろうか。
親父は諦めず、ふたたびインパラを駆って次のカサへ。
だが残念、次のカサは不在だ。
 
迷路のようなサンタクララの町並みを、インパラはさらにゆく。
親父は運転席で何やらブツブツ喋りまくっているが、俺には何を言ってるのかサッパリだ。
宿を断られるたび、狭く複雑な道のりを右に左に、時には切り替えして方向転換まで。
俺はもう現在位置がどこなのやら全然わからない。
しかしまぁこの親父、大した執念である。
 
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ついに5軒目!果敢にドアをノックしまくる親父!
 
そして、ようやくのヒット。
家から出てきたのは人の良さそうなお爺ちゃんで、しかも俺、歓迎されてるっぽい。
念のために値段を確認すると、確かに20CUCと。
この人の家なら俺もよい。決定。
 
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ついに目的を果たし、とても誇らしげなインパラ親父。2CUCくれと。
よく見りゃタクシーって書いてあるな。タクシーだったのか。
ハハハ、もう笑うしかない。
 
確かに親父はよくやってくれた。
まさか宿を5軒も巡るハメになるとは俺はもちろん親父も思わなかっただろう。
おかげでクラシックカーに乗ってサンタクララを走り回れたし、楽しかった。
2CUCぐらいは当然の代価である。
最初は何者かと思ったが、最後までキッチリと面倒を見てくれて、法外な料金をふっかけることもなかった。
きっと誠実な人物なのだろう。
この街で、さっそくいい人に出会えたよ。
ありがとうインパラ親父。
 
さあ、待望の宿だ。
宿のオーナーはルイスという、細長く優しげな老人。
なんと家の2階をまるまる宿として開放している。
 
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まずはベッドルーム。
広い!そして冷房がガンガンに効くッ!!
 
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そしてリビング。
2階にあるこの2部屋とシャワーにトイレがすべて貸し切り。なんて素晴らしい。
便座があるトイレなんてキューバで初めて見たよ。
 
この宿ならなんの問題もない。むしろ北海道のウチより住み心地がよさそうだ。
5軒目にしてやっとヒットした宿がこんなにもいいところで良かったよ、本当に。
 
今日は宿関係で22CUCを使ったので、そのぶんディナーと朝食を無しにしてもらう。
このルイス宅で出される食事ならきっとおいしいだろうが、ここはセーブマネーだ。
このへんのバランス感覚。旅では重要。
 
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それにしても、焼け過ぎである。
写真だとそれほどでもないが、鏡で見た自分の顔がもはや異様に黒い。
こんなに焼けたのはパプアニューギニア以来だろう。
手足も露出していた部分はドス赤くなっていてヒリヒリと痛い。
今日の日射しはかなり、想像以上にキツかったようだ。
カリブの太陽をなめてたぜ!
 
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19時。
2階の窓から外を眺める。
下から見る街並みと、上から見るこの街は、少しおもむきが違うな…。
 
まだ明るいが、今日はとにかく寝よう。
外出しても日曜だし、大した店は開いていないだろう。
 
どうもかなり疲れているのだ。
最高の部屋で、まずは休む。