6月18日 サンタクララで、常に。

変な夢をたくさん見た。
 
すごく若い女の子と一緒にいる夢。
宇宙脱出のスピードを計測するために他人のヒゲを伸ばし続ける夢。
結婚を考える夢。
特に親しくもない好きでもないやつらが何人か出てくる夢。
 
なぜだろう。
ここ、キューバなのに。
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目覚めたら、ここはサンタクララの街。ルイスの家だ。
昨日はクルマ2台で合計20キロのワープができたおかげで、明るいうちにこの街に来られたのだった。
ありがたいことである。

さあ、今日はどうするか。
カゴの鳥を脱して街に繰り出し、せめてサングラスは買いたい。
ルイス宅は居心地がいいし、ここでもう一泊ってのもいいな。
ま、気楽にやろう。
 
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昨夜から思っていたが、ベッドルームにあるこの絵がなんともいえない。
やはり母と娘なのだろうか。
あまり見つめず、深く考えないほうが良さそうだ。
 
出かける前に、一階に住むルイスに一声かける。
ところでルイス、今さら一輪車に驚いている。
昨日は一体何だと思っていたのだろう。このへんがまたなんともいえずよい。
さあ、探索に出発だ。
 
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この街並み。古いけど快適そうに見える。
不思議なのは、社会主義国だというのに、街と田舎の生活の質に差があるように感じることだ。
 
日本の一般的な家なら、規模や外見は違っても、家の中の設備には大した差がないのが普通だろう。
しかし、キューバはどうだ。
先日泊まったカルロ宅と今回のルイス宅の違いが顕著で、明らかに住居の質が公平ではない。
社会主義の国ってのは衣食住の基本的なラインは平等に分配されるのかと思い込んでいたが、
これはどうやら俺の考え違いだったらしい。
俺は自慢じゃないけどキューバのことも社会主義というシステムのことも大して知らないからな。
 
もっとも、カスカハルでカルロが作ってくれた鶏肉料理は本当にうまかった。
あれは今でも思い出す。
生活の質に関係なく、たまたま立ち寄った町であんな良い経験ができることもあるのだ。
ほとんど毎日進んでばかりの旅路だが、ここでも少し立ち止まっていくとしよう。
旅の楽しみは、進むことばかりではないよなぁ。
 
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広い街を碁盤状に道が張り巡らされている。道幅はどこも狭い。
気を抜くと迷子になりそうなので、目印の大きな建物をいくつか覚えながら歩かないとな。
 
昨日ちらっと見かけたショッピングモールを目指して歩き続けていたら、
モールより先にこちらに行き当たってしまった。
ここには特に立ち寄るつもりもなかったのだが…。
 
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そう、サンタクララの街には、チェ・ゲバラの霊廟というものがあるのだ。
 
キューバの英雄。アルゼンチン生まれの革命家。ゲバラ。
キューバでの革命樹立後もゲリラとして戦い続け、ボリビアで捕虜となって射殺された人。
彼の遺骨がここにあるらしい。
 
キューバといえばまっ先にゲバラが思い浮かぶ人も多いだろう。
そして俺は例によって、ゲバラのこともよく知らない。
英雄とも思わないし、カッコイイとも思わない。
ただ自分の想いを追求し、そこに殉じたという点は、眩しく映る。
 
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HASTA LA VICTORIA SIEMPRE.
 
勝利に向かって、常に。
1週間もキューバを旅していれば、この言葉は覚えてしまう。
似たような標語がそこらによく書いてあるからな。
 
ゲバラ。
銅像なんかにされて、嬉しいものか。
 
霊廟は博物館ぽくなっているらしく、有料で入ることもできるが、俺はもちろん入らない。
そうなるとここは見晴らしはいいけど陽射しが強すぎる。
さあ移動だ。
今度こそショッピングモールへ!
 
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はい、サングラス買いました。
5CUC、500円相当のヘボいやつ。でも無いよりはマシだろう。
 
俺の鼻が低いせいか、やたらとズレてくるのが困る。
ユニサイクリング中は前傾姿勢が多いので、視界の上の方で固定されてくれないと意味がないのだが。
部屋に戻ったらちょっと加工してみるか。
 
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食料のついでに買ったノンアルコールビール。
甘い。甘すぎ。
ビールといいつつなぜ海苔の佃煮の風味がするのだろう。謎である。
 
ショッピングモールでは食料や雑貨の他に家電製品やインテリア用品なども売っており、
それなりの品揃えが楽しめた。
買物カゴに好きなモノを入れてレジで買うという、ススンデルスタイルだったしな。
ただ出口には人が立っていて、買った商品とレシートをイチイチ見比べつつチェックし、
チェック済みの印なのか、レシートを破って返してくれるのであった。
俺は別に構わないが、レシートを持ち帰って家計簿を付けたい人なんかは苦労するだろうなぁと思う。
キューバにそんな几帳面な人がいるかどうかは知らないが。
 
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暑い中、重い荷物を抱えつつ、モールから延々と歩いて広場まで戻ってきた。
無駄に迷って休養日なのに疲れてしまった。
 
途中で念願のピザでも買えればよかったのだが、ついに良さげな店がみつからなかった。
店があると思ったら閉まってるし。時間的にシェスタ中なんだろうな。
この手の店は午前中と夕方しか開いていないと思ったほうがいいのかもしれない。
 
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ルイス宅に帰ってきたよ。
ボロくても一戸建てが基本の田舎と違って、街ではこうして左右の家と合体している造りが普通のようだ。
これなら地震が起きても多少は持ちこたえるのだろうか。
木造でもなさそうだから火事にも強いかもしれない。
 
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この青いマークがカサ・パルティクラルの印。
外国人がおおっぴらに泊まれるルームシェアの家の証だ。
これ、実はイカリを表しているらしいが、正直言ってイカリにはちょっと見えない。
なぜか微妙に左右非対称だしな。
 
今日はルイス宅に連泊することに決めた。
この家は居心地もいいし、たまにはじっくり休むのもいいだろう。
帰ってルイスに連泊のお願いをするついでにディナーの値段を聞いてみたら、7CUCと。少し高い。
俺はあまり食えないから量を半分にして5CUCにしてくれないかと筆談もまじえてマジメに交渉し、
どうやらわかってもらえたらしい。
 
カルロ宅で食ったディナーはとてもおいしかったが、量が多かったのだ。
あれがキューバ標準だとしたら今回もそれぐらい出て来てもおかしくないと考え、こんな提案をしてみたわけ。
どうせ休養するなら、やはり栄養もとっておかねばなるまい。
 
部屋に戻り、シャワーも浴びてほっと一息。
今日は金を使ってしまったな。といっても宿代を含めて3500円なのだが。

しばらくして旅を振り返ったとき、
あの時どうしてこうしなかったのだろう、ああしなかったのだろう、と思うことがある。
でもそれは、自分が日本の落ち着いた環境にいるからだ。
旅の間は、ちゃんと日本に帰れるのか、旅を完結できるのか。そればかりが気になる。
そして極力贅沢をせず、セーブマネーに徹するわけである。
 
今回は日数的にキューバ一周はまず無理で、サンティアゴ・デ・クーバまで行けるかどうかというところだ。
となれば、サンティアゴからハバナに戻るにも何らかの交通機関を使って金がいるわけである。
無事に日本に帰るためには、まずハバナに戻らねばならない。
 
どこまで行くのかと頻繁に聞かれているうちに、なんとなくサンティアゴと答えていて、
いつしかそれがそのまま目的地と化しつつある。
ハバナからサンティアゴまで行けば、キューバ縦断、もしくは横断と表現してもそう誇張ではあるまい。
適当にやって来たキューバではあったが、どうやら目的が定まってきた。
ただ問題は日数だ。
今のペースでサンティアゴまでたどり着けるかどうかがよくわからない。
あとたぶん600キロほど。
行けそうでもあるし、何かあれば難しそうでもある。
なんせ気候や地形など、キューバではまだまだ読めないことも多い。
もし今後も向こうから声をかけてくれる乗り物があれば、素直に厚意を受けたほうが確実かもしれない。
 
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ルイス家のディナー!
半分でと頼んだのに、この量。
本来ならご飯山盛りに鶏の脚が2本もしくは鶏一羽まるごとぐらいは出てきたかもしれない。
そんな量食えるか!
アジア人は肉体が経済的でいいねー、さすがはエコノミックアニマル。懐かしい言葉。
 
アジア人といえば、今日もライスだ。
カルロの時もそうだったが、気を利かせてくれているのだろうか。素直にありがたいね。
味付けもシンプルだがおいしい。なによりサラダがありがたい。野菜食う機会がないからなー。
 
そしてこのジュースは…グァバとかなんとかそんなようなものらしいが。
うーん、スイカのジュースにひとつまみのよく冷やした生ゴミを入れたような風味というか…。
 
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膳を下げに来たルイスが部屋のあちこちにある窓を開けてくれると、風通しのいい部屋がさらに涼しくなった。
キューバは暑いけど、こうやって窓をたくさん作ることによって、快適に過ごせるようにしているわけだ。
理に適ったいい造りだと思う。

ルイスはあまり喋るほうではなさそうだが、英語とスペイン語を織り交ぜて、ゆっくりと語りかけてくれる人だ。
彼はどうやら俺の旅の行方を心配してくれていて、
行く先々の大きな街にある知り合いのカサ・パルティクラルを紹介してくれるという。
後でそのリストを作って渡してあげるとのこと。
 
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サンタクララの夕暮れ。
この窓から見える、少し寂れた街の風景が好きだ。
 
さっきからサングラスを加工しているのだが、なかなか良いセッティングが出ないな。
ゴムひもがあればなんとかなりそうなのに。あとひとつってとこだ。
外は少し雨らしい。
やはりキューバでは、天気が良くても夕方には降るものなのだろうか?
いずれにせよ、今日は屋内だから関係なし。
 
いい気分である。
部屋を吹き抜ける風も優しい。
 
今なら電気も使えるし、スマートフォンもあるのだから、好きな音楽だって聴ける。
でも、やはり聴かないものだな。ここでは。
旅の間は、不思議なほど音楽を聴きたいとは思わない。
その世界の空気から、なにか別な音でも感じているせいかもしれない。