6月20日 雨が、止みそうで止まない。

夜のバス停。
 
ベンチにそのまま横になっていたが、急に寒くなってきて焦る。
濡れた服のままだと風邪をひきそうだ。
しょうがない。
一念発起して起き出し、濡れたTシャツを着替え、ザックの奥から寝袋を引っ張りだして潜り込む。
 
暖かい。
 
こんな暑いところで使うことなどないと思っていた、かさばる寝袋。やはり持ってきてよかった。
寝袋の上からさらにテントをかぶり、どうにか保温は完成。
これで少しは眠れそうだ…。
 
ようやくうつらうつらとしていた、午前4時半頃。
ふと目が覚める。
おかしい。
こんな時間に、人の気配がする。
なんと、バス停に人が集まっている!
 
バス停内のベンチの上で、寝袋の上からテントをかぶっている今の俺。
そのまま寝ているフリをして様子を伺う。
 
数人の人々は何か会話を交わしているようだ。
話の内容は当然のごとくわからないが、どうやら俺のことではない、ような気がする。
その和やかそうなムードからして、早朝から出勤する労働者たちのようである。
そのうち、やって来た始発?のバスに乗って、彼らは去っていった。
 
はー、焦った。
まさかこんな時間に人がやって来ようとは。
さすがキューバ。労働者の国といったところか。
暑い国の人々は、夜は遅くて朝はダラダラしているものだという印象が俺にはある。
それがここでは、早朝からマジメに働きに出かける人が何人もいるのだ。
そう、マジメなんだろうな。おそらくは。

雨はまだ少し降っているが、さっきの一件のせいで目も覚めてしまった。
次に人が来る前に、サッサと出るしかない。
タイヤの空気はまた微妙に減っている。
これはどこかで修理するしかないだろう。なーにすぐさ。
 
バス停を後にして、薄明るい荒野を進む。
雨が、止みそうで止まない。
昨日もずっと雨だったのだ。一日以上も降り続くのはちょっと反則ではないか…。
 
次の町であるカバイグアンは意外に遠く、昨夜のうちに目指さなくてよかったと思う。
そうだ、カバイグアンといえば、その手前で高速道路と交差するハズである。
キューバに高速道路?と思うかもしれないが、
地図によると、首都ハバナから次に向かう大きな街であるサンクティスピリトゥスまでの間には、
どうも自動車専用道らしきハイウェイが伸びているようなのだ。
 
ときおり雨宿り休憩を挟みつつ、ハイウェイとの交差点らしきところまで来た。
なるほど、これがハイウェイか。
片側2車線のよく整備された自動車道。日本でいう幹線国道のようなイメージだ。
この道を走ることができれば目的地まで早く着きそうに思うが、
さすがにこの整備された道は一輪車はおろか、自転車や馬車も走行禁止なのだろう。
 
一方で俺が進む田舎国道は、ハイウェイと交差する地点で半円形の高架橋になっている。
その高架橋の頂点で、さきほど俺を追い抜いていったトラクターが停止しているのだ。
故障だろうか?
いや、あのドライバーの兄ちゃんの笑顔。
あれは、乗せてやろうって顔だよな。
 
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やはりトラクターは、俺を乗せるべく待っていてくれたのだった。
雨のそぼ降る早朝にて、トラクターの兄ちゃんが旅のユニサイクリストを乗せてくれるのだ。
これは嬉しい。
 
でも座る場所が狭い!
気を抜くと落ちそうだ。落ちたらトラクターのデカいタイヤか、あの背後の荷車に轢かれる。
必死でしがみつきつつ、やっぱり写真は撮っておく。
 
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交差するハイウェイを越えて、トラクターはゆく。
乗り心地は悪いけど馬車より速い。
5キロほど走って、あっさりとカバイグアンに到達。
ここでトラクターとはお別れだ。
少しの間でも雨が回避できて助かった。どうもありがとう!
 
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カバイグアンは、人が多い町。
休むことなく歩き抜けよう。
 
雨が止まない…止みそうでやまない。いい加減ストレスがたまってくる。
これじゃあカッパを脱げないし、服も靴も乾かないじゃないか。
 
マンゴー買いたかったけど、買いそびれた。
 
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字が、ちょっと惜しい。
 
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この町には線路があるが、クルマ以外の自転車・歩行者は線路の高架橋を渡れないらしい。
だからって、線路をダイレクトに乗り越えてくってのはどうなんだ。
踏み切りとかなくて大丈夫なのか…。
もっとも、キューバで線路は何度か目にしてきたが、列車が走ってるのを見たことはいまだにない。
ほとんど運行されていないのだろうか。
 
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サンクティスピリタスまで、あと10キロたらず。
こういう時の10キロは実に長い。
雨の合間を見計らって一輪車に乗ってみたりもするが、はかどらないよなそりゃあ。
雨だと座れるところもなく、休むのも大変だ。
 
ふぅ。
キューバにも雨が降るのだ。