6月23日#4 魅惑の美女も現れないし

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マニュエル宅で2時間ほど休んだかな。
ブカネロの酔いもすっかりなくなったし、さあ今度はディナーを求めて外をさすらおう。
 
ディナーと聞くと思わずタキシードでも着ないといけないような気がするが、もちろんただの晩飯である。
マニュエルに「ディナーに行って来るよ!」と告げて出てきたからディナーと言っているだけだ。
そんな彼いわく、すぐ隣にパラダール(ちょっとしたレストラン?)があるとのことだが、
こんな格好の俺様が単独でマットウなレストランになどそうそう行くわけがない。
 
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お、ここにもカサ・パルティクラル?
いや、違う。
同じマークでもカサ・パルティクラルは青く、これは赤いのだ。
前から気になっていたのでさっきマニュエルに聞いてみた。
 
「どちらも宿だよ。青いのがCUC払いで外国人可、赤いのがペソクワーノ払いでキューバ人専用だ。」
 
なるほど、やっぱりな。
大きな街では青も赤もチラホラ見かけるが、印象としては赤のほうが確実にボロい。
その分おそらく宿代も安いのだろうから、俺としては一度は赤にも泊まってみたいものだ。
キューバ人専用とはいえ交渉次第でやってやれないこともないと思うが、
スペイン語でうまいことの1つも言えない人間にはちょっとハードルが高いかな。
 
実はさっきから、メシが食える店を探している。それもペソクワーノで食える店だ。
しかし探してみるとなかなか適当なところがない。
高そうなレストランは当然パスだし、庶民的なバーなどは地元のおいちゃん達がたむろしていて面倒だ。
カーニバル前夜祭ってところか。もうすっかり出来上がっている人もチラホラ。
 
そんな中、いかにもハヤっていないバー&レストランってのを見つけてしまった。
騒々しいのが苦手な俺は、こういう人のいない寂しいついでにおいしくなさそうな店が、わりと好きなのだ。
メニューの値段がペソクワーノで表示されているのを確認し、
何度か通り過ぎて様子を窺ったのち、ここしかないと決意を固めて入ってみる。
 
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店内。まず客がいない。
そして、かなり愛想が悪い。
外に立てかけてあったメニューのとおり、わかりやすくコーヒーとナポリタンを頼んでみた。
 
客もいないのに気怠そうでいてしかも動作は緩慢。
さすがである。
やはりハヤっていない店とはこうでなくてはならない。
 
あ、来た。
 
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………?
見た目で味が予想できない。
 
食ったら、うどんだ。
もはやスパゲティとは呼べないブヨブヨした麺に強い衝撃を受ける。
茹ですぎ。茹でまくり。もはや茹できった感すらある。
あっぱれ。
ただし、これをもしイタリア人なんかに食わせたら…。
半狂乱になって店内で暴れ出しかねないし、
パスタがらみで怒らせたイタリア人を取り押さえる自信が俺にはない。
 
それにしても、全てにおいてヤル気のない店であった。
ごくたまに来た客がアジア人の俺だったことも関係があるのだろうか。
外国人がペソクワーノでメシなんか食うなってことか?
 
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へー、カマグエイには高級そうなショッピングモールもあるんだな。
これぐらいの規模なら欲しいモノはなんでも大概そろいそうだが、もうほとんどの店が閉まっている。
こんなキューバが物不足とは、とても思えない。
なんでも買えるじゃないか。CUCさえあれば。
 
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やはり俺はこっちのほうが落ち着く。
キューバの街並みもずいぶん見慣れたものだ。
キューバのお姉さんたちは、常にカッコよく歩く。
 
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さっきのことだ。
街で人力タクシーの兄ちゃんが、チノチノとあんまりうるさかったのでついに、
 
「ノーチノ、ソイハポネス!!(中国人じゃねぇ、俺は日本人だ!)」
 
そう相手を指差してにらみつけながら言ってしまった。
相手は俺が怒るとは思わなかったらしく、「ハポネス…」とだけモゴモゴとつぶやいていた。
もちろん間違いは正していいわけだが、トラブルには気をつけないとな。
しかし、不快であることを伝えねば、いつまでもわかってもらえまい。
 
大体、人を呼び止めるのにナントカ人!なんて呼び方をしていいとなぜ思うのか。
これは別にキューバ人に限ったことではないが。
仮に俺が中国人だとしても、旅行先で中国人!と呼び掛けられていい思いはまずしないだろう。
キューバは白人と黒人の間に差別がない国だなんて言ってはいるが、
アジア人との接し方はもう少し精進してほしいものである。

そういえば、さっき自転車を押してるキューバ人女性に対してキューバ人おやじがモンタ!て叫んでたな。
なんなんだおまえら。乗り物には常に乗ってないと気がすまないのか。
自転車や一輪車を押して歩いている人間にはガマンならない理由でもあるのか。
キューバ人って、やっぱりよくわからない。
 
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おっと、またこの小川に戻ってきたか。
目ぼしいところは大体歩き回ったかな。そろそろ帰ろうか。
それとも、もうちょっと腹に何か入れとくか。
 
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はーい。
こりずに今度はサンドイッチ屋。
もうじき暗くなるこんな時間にも開いていた商売熱心な店だが、客はゼロ。
 
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うーむ。普通の味。
ジュースは意味不明な味。フルーティな麦茶みたいな。
 
で、ケソってなに?
これはサンドイッチ・ケソで、以前にはピザ・ケソなどを食べたが、
ケソが何を意味しているのかいまだにわからない。
繰り返すが、イカではないのは確かだ。ゲソは日本語ですから。
 
よし、食った食った。散策を終えて帰るとするか。
家のカギが開いてるといいけど。
家主と共用の宿というのはやっぱりちょっと不便だな。
    
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今になって初登場!のマニュエル。
アパート2階にあるマニュエル宅に戻ってきたら、彼がどこからか忍者のように現れてカギを開けてくれた。
本当にどこにいたんだろう。ひょっとして1階にも部屋を借りているとか。

さて、今夜からカーニバルだ。
アパートの前の通りは通行止めになるらしく、通りを出入りするには通行許可証が必要になるそうだ。
その許可証を俺にも渡してくれようとしたが、
 
「俺はもう出ないからいいよ。」
 
そう言って断る。
ハッキリ言って、俺はお祭り体質ではなさそうだ。
自分の世界の中で誰にも煩わされず、静かにポーッとしているのが好きなのだ。
カッコつけて言うわけではなく、ただそういう性質なだけだと思う。
そんなことを悟る。
 
訪れた町が偶然カーニバルだってんなら、大抵の人は喜んで見に行くんだろうに。
ほんと、何がしたいんだろうねー。
一輪車でキューバ横断を企む時点で普通の性質ではないのを知るべきだった。
 
ところで、物知りマニュエルに聞いて、ついにわかった。
ケソの謎のことだ。
 
「ところでマニュエル、ケソって何のこと?」
 
「ああ、ケソか。それはね…。」
 
彼は立って歩き出し、冷蔵庫からタッパに入った何かを持って戻ってきた。
 
「これがケソだよ。」
 
あ、あーーーー、そうだったのか。
 
ケソって、チーズのことか!!
 
チーズ!なるほど!大納得。
確かにピザもサンドイッチもチーズだったわ。
メニューの中で安いのばかり選んでたから、トッピングもなくただチーズだけだったということだな。
 
ケソ=チーズ。わかってしまえば簡単だ。
それが俺のポケット辞書には載ってなくてねえ。
それにしてもこんなちょっとしたことを、
実際にチーズの切れ端を手渡しながら説明してくれるマニュエルはなかなかシブイ。
 
彼は自分も歯科医、妻も歯科医、娘も今年から歯科医、息子は医科大学で勉強中だそうな。
おぉ、エリート一家!?
でも今は、バイク事故で右手をケガしてリハビリ中なんだとか。
歯科医のわりには一日中ヒマそうにしているワケがやっとわかった気がする。
 
彼はこれから家族と一緒にカーニバルに出かけるんだそうだ。
俺は、もう部屋で休むことにする。

ああ。憧れの街カマグエイは、かなーり堪能した気がいたします。色んな意味で。
キューバ中部一の都市、カマグエイ。
カサは青いのも赤いのも相当たくさんあったな。
初めからココと決めてなければかなり悩んだか、もしくは最初に見つけた良さそうなところに飛び込んだか。
結果的にはルイスご推薦のマニュエル宅でよかったと思う。
 
次の大きな街であるラストゥナスもルイスご推薦カサを目指して行ってみるかなぁ。
あれこれ迷うぐらいならそれもアリかも。
ラストゥナス以降には分かれ道があって、ルートはまだ考え中。距離と相談だ。
どうせなら1000キロは走っておきたいという、ただのキリ番願望である。
あ。
ケソ、ちゃんと辞書に載ってたわ。載ってないなんて言ってゴメン。
うわー、この喧騒の気配。ついにカーニバルが始まったかな。
やっぱりうるさそー。
寝よ寝よ。
 
あ、今日の走行距離は25キロ。一応な。