6月26日 来たら選ぶ。それだけ!
昨夜はハートいっぱいのお部屋にてスマホでゲームばっかりして過ごしたのだった。
せっかくこんな遠い国まで来て何をやってるんだと思わなくもないが、
それ以外に特にやることが考えつかなくてね。
こんな状態、自分でも少し残念な気持ちはある。
さて朝だ。
このさほど印象のよくない宿はさっさと出るか。
朝8時に部屋を出ても、リビングに誰もおらず。
物音を聞いて出てきたらしいおばさんに、
自分では開けられない玄関のカギだけ開けてもらってサッサと出てきた。
最後までなんだかなーな感じの宿。
宿の人々の写真を撮る気にもならない。
行き違いも多々あったとは思うけどね。
しかしー、なんちゅうか、スペイン語はあいかわらずサッパリだが、
キューバを一輪車で旅するスキル、もしくは方法論はほぼ確立してしまった感がある。
つまり、飽き気味なのだ。
どこも似たような町、似たような風景。もうじき終わりだからいいけど。
もちろんトラブルにだけは気をつけて。油断しないように。
海外旅だからといって毎回こう劇的なドラマがあるわけではないよなあ。
なんせ今回は言葉がまるでわからんのが大きい。
ふー。
宿からしばらく歩いてラストゥナスの出口あたりに大きなバス停があり、
そこに朝から屋台がいくつか出ていたので、朝メシとしてハムサンドとコーラを買ってみた。
ついでに、「5ペソ!ピザ!」と繰り返し連呼している屋台でピザを買おうと思って5ペソ払うと、
なぜか、
こんなのを手渡された。
謎のシンプルな揚げ物が、5枚。
おい。ピザじゃないのか…。
うぅむ、こちらも何か行き違いがあったようだ。
そしてなんだコレ、ひたすら脂っこいぞ。しかも5枚!
貴重なカロリー源だと思えば食えなくもないが、それなりにキツいわ。
ああ今日も暑くなりそうだ。
おっ、バスが来た。
乗車率は320%ぐらいか?人間が押し鮨みたいになってるぞ!
このバス停には大量に人がいるがベンチはなく、みんな立ってバスを待っている。
そこで隅っこに座り込んでコーラやら揚げ物5枚やらをのんびり食っている俺はとても目立っている模様。
キューバ人はあまり地べたに座ったりはしないようだ。
これは西洋風の感覚と言えようか。
実際、彼らの長い手足からは、あぐらをかいて座り込むという体勢をイメージしづらい。
文化だけではなく生理学な意味でも彼らは平面に座らないのかもしれない。
自転車の乗車率も300%だなーってところで、おなじみの距離標識だ。
オルギン73キロ、バヤモ76キロ、そして目的地のサンティアゴ・デ・クーバが203キロとある。
だが俺は、ここである選択をしなければならない。
ラストゥナスからサンティアゴに行くルートが2種類あるのだ。
本式のルートを通るならオルギン経由で大回り。近道をしたいならバヤモに直行もできる。
オルギン経由はメインハイウェイの続きになるので途中に町も多く、補給には困らないだろう。
対してショートカットの方は地図を見ても何があるのかよくわからない。店がほとんどない可能性もある。
結局、オルギンルートを選ぶことにする。
ここまでは急いで来たが、どうやら時間はかなり余りそうだからな。
なんせ帰国日は7月11日だ。
サンティアゴをゴールとしてハバナに戻って観光とシャレこもうかとも考えたが、
いくらハバナでも1週間以上もいれば俺は飽きまくってしまうことだろう。
それに、オルギン経由のルートを選べば、まず合計1000キロはいく。
最初は1日35キロぐらいしか進めず、どうにか50キロずつぐらいはがんばらないととても間に合わない!
…なんて焦ってたもんだが、今となってはねぇ。
夜通し130キロぐらい走るなんて思わなかったし。これも成長といえば成長。
とにかく今後は急ぐ必要もない。
暑いし、ポコポコとのんびり進みましょう。
ゆるく長ーーい坂を苦労して上り終えたら、そこで陽気な女性が声をかけてくれた。
快く写真にもおさまってくれて嬉しい。
今回こういう写真ってほとんど無いからな。
実は、キューバで女性が向こうから声をかけてくれるのは結構珍しいことなのだ。
キューバの女性のイメージは、堂々としていてピンとした姿勢で颯爽と歩き、
俺のような謎の外国人ユニサイクリストなど、たとえ気になったとしてもジロジロ見つめたりせず、
ツンと興味なさげに歩き去るのがデフォルト、ってな感じだ。
キューバに来てから女性と一対一で会話したことなど、ハバナをのぞけばほとんど店や宿の人ばかりである。
俺としてもスペイン語の壁のおかげでこちらからあまり話しかけもできないのがつらいところだ。
言葉ができればもっと違った旅になるのだろうけど、今は話せないのが現実。
これもまた旅だ。
そりゃあ俺だって、魅力と迫力に満ちあふれ返るキューバ女性と色々会話してみたい。
みたいのだが、ハバナ以降はなかなかそういう展開にならない。
俺が人見知り過ぎるのか、内心ビビっているのがバレるのか、単に根が暗いのか。
いざ会話!となっても実は大して話すこともないんだけどな。
ハッキリ言って俺は女性を楽しませるような会話が苦手だ。たとえ日本語でも。
いい木陰だ。
ここでしばらく休ませてもらおう。
すっかり愛読書となっているスペイン語の辞書をめくりつつ、道を通る人々をボンヤリと眺める。
クルマやバイク、馬車。
キューバだなぁ。
そうだ、ここは外国だ。
そういえば去年の今ごろは、同じく一輪車で日本縦断をしていたんだな。
その時はまさか翌年には似たようなことをキューバでやってるとは思わなかった。
当時はキューバのキュの字も意識してなかったからな。
自分のこういうところは成長しているとは言えないような気もする。
ニワトリをブラ下げて歩いて来た兄ちゃんが、笑顔で何か呼びかけてくれた。
意味はわからないが悪い内容ではないだろう。こちらも笑顔で返す。
キューバ人は…やはり気のいい人が多いとは思う。
人心が荒んでいない。
ハバナを離れて田舎に来れば来るほどそう思うようになってきた。
ともすれば単調な旅路。
これから何か、おもしろいことでも起こってくれるのだろうか。