6月28日 つまらん道
しかしまた、なんでこんな夢を。
社会主義者である遠い知人が、街頭演説をやるからぜひ見ていってくれと。
散々嫌がられるからそれで良ければと。
そりゃあ今いるここは社会主義国家だが。
ここにきてこんな夢。
そして、なんだかつらそうだったな。
朝起きると下痢がエネルギー充填120%状態になっているのはここ数日のもはや慣例だが、
それでも今朝はちょっと重いかな。
やはり昨日は色々と食い過ぎたせいだろうか。
おそらく、この下痢症状はキューバ滞在中はずっと続くのだろう。
帰国してもしばらくはあるかもしれない。
だとしたら気がかりは、ハバナに戻るバスと、帰りの飛行機だな。
とにかく今日は急いで出る用事はない。
次の街であるバヤモは道さえ間違えなければラストゥナス-オルギン間よりも少し短いぐらいだ。
ポコアポコでいこう。
もう少し、ゆっくりと身体を休めて。
宿の奥さん、サーラに見送られてカサを出る。
宿の家族との交流はあまりなかったが、最後まで気持ちのよい宿だった。
そして彼女は珍しく覚えやすい名前だった。
このカサ・パルティクラルなら他人にも自信をもってオススメできるな。
場所はちょっと説明しにくいけど。
朝のオルギン中心部。
昨日この街に着いたのもこのぐらいの時間だった。
たった24時間いただけなのに、この街は随分と気に入ってしまったものだ。
イイ目にはたくさん遭ったが、イヤな目にはほとんど遭ってないもんな。
さて、オルギンを出る前に、もう一度あのお気に入りのチョコレート屋に寄ってみるかな。
やった、開いてる!
さっそくホットチョコレートと、朝食がわりのケーキをいただく。
どちらも甘ーくておいしい。
ちなみに店から恥ずかしがり屋な彼女の手が伸びているが、
あれは『ピザ』と書いてある紙を張り出しているのだ。
どうやらここはピザも売っていたらしい。
ここのピザならきっとおいしいのだろうが、今はホットチョコとケーキで充分だ。
よし、これでオルギンに心残りはない。
街からの出方に少し悩んだが、結局わかりやすいようにと元に戻るルートから。
10キロも進めばどうやらバヤモへ通じるルートに繋がったようだ。
バヤモへはあと68キロらしい。急ぐとうっかり着いてしまうな。
できれば途中で野宿してセーブマネー&余り気味の日数を消化してから、
明日の明るいうちにゆっくりとバヤモに着きたいものだ。
今日は先日ほど風も強くないので、夜までずっと暑いかもしれない。
ま、ゆっくり行こうか。
久々に出現したモンタとチノ野郎はことごとく無視。
俺が休憩しているのがわからんのだろうか。
おまえらに命令されるいわれはない。
村の小さな屋台で買った、チョリソのパンとコーヒー。
頼んで初めてわかったが、チョリソってやっぱりソーセージのことか。
こうやってちょくちょく軽食なんてつまみながら旅ができるんだから、
慣れてくればキューバは一輪車旅には向いてるかもしれないな。
この店の彼女、俺が店に出現した時は、異常なぐらい緊張していたのだ。
もう顔がこわばっているのがアリアリとわかるくらい。
でも俺がこうやってチョリソパンを食っている時に、彼女と親しいらしい女の子がやって来て、
二人が楽しそうに喋っているのを俺は微笑を浮かべてなんとなく眺めていた。
そして女の子がアメを買って帰って行ったあと、
店の彼女はなぜか、俺に向かってニッコリと笑いかけてくれるのであった。
うーん、何が起こったのだろうね。
少しでも安心してくれたのなら、俺はそれでいいんだけども。
キューバの道のりは、あいかわらずアップダウンが少ないのはいいんだ。
いいんだが、ただ暑いのがなんともなぁ。
冬ならもっと走りやすいかもしれない。
キューバはヨーロッパ諸国の人々にとっては避寒地リゾートなのだから、
冬はさぞかし過ごしやすいのでしょうよ。
でもそのシーズンは航空券がやたらと高いんだぜ。俺は安いから来たのだ!
同じ理由で安い時期を狙ってアイスランドに行き、
初日からマイナス2度の中を走るハメになって夜空にオーロラが輝いていたことを俺は一生忘れない。
ところで、豪快な札束だったペソクワーノは、もう半分以上は使ってしまったらしい。
意外と使うものだ。
結果論としては、200CUCという大金を交換して札束にドン!と換えたのは正解だったかもしれない。
各都市にあるカデカ(銀行)で少しずつ換えてもいいんだが、探すのがめんどくさいし、
あの行列に並んで待つのがもっとめんどくさいんだよな。
この調子でうまく使いきれば、またカデカに行って残ったペソクワーノをCUCに戻す手間も省けるだろう。
さあ、旅も大詰めだ。
これからは、時間をゆっくりと使うことを学ぼうか。
旅をしている時の俺はどうも急ぎ過ぎる。
あー、暑いとなんでこんなに消耗するんだろう。
これは最初の頃、傘をさして陰を作って休憩してた時ぐらいの暑さかもしれない。
幸いこの辺にはときどき木陰があって助かっているが、なぜか妙に道が悪い。
そうはいっても、キューバのメイン国道にダート区間がないのは本当に助かっている。
ダートがあるとパンクの心配も増すし、何より進むペースと疲労度がまったく違う。
やはりあのアイスランドの厳しさに比べれば、暑いとはいえキューバは楽に走れるな。
もちろん、まだまだ油断はしないけど。
そして、今問題になっているのは、飲み物が思うよう手に入らないこと。
オルギンを出てすぐにあったチョリソパンの屋台以来、意外にもまったく店がないのだ。
オルギンからバヤモへと至るこの道、集落はチラホラあるが、店が思ったよりも断然少ない。
これは困った。
クルマの数も激減したし、ここは物流のメインから外れたハヤらないルートなんだろうな。
まったく、こうなるとラストゥナス-オルギン間のあの極甘ぶりは一体なんだったのかと思う。
しかしまあ舗装が悪くて苦労する。まっすぐ進めないわ。
あー暑い。早くコーラが飲みたい。
ついに、久々の集落!
店!店はないか!?
…これは、店?だと思う?
普段ならパスしそうな建物でも、乾いた俺は突撃せざるをえない!
よっし!やっと買えたコーラ!4本まとめ買い。
助かったー。
それにしてもシケた町である。
こんなところになんとなくでも開いている店があるのが不思議なぐらいだ。
まったく冷えていない常温物体だが充分充分。
今ふと気がついたが。
このあたりが、今回俺がキューバを旅する中で、最も田舎な地帯なのかもしれない。
さっきのシケた店で出会った母子の、俺に対する警戒した振る舞い。
店員のおばさんの絶対的な愛想のなさ。
よくコーラ4本も売ってくれたなというレベル。
外国人にまったく慣れていないようだ。
そりゃまあ、こんなトコに好き好んでやって来る外国人旅行者など多いはずがない。
しかも言葉通じないし。
そういえば外国人というか、アジア人を最初の空港以外でいまだに見かけたことがない。
そういえば外国人というか、アジア人を最初の空港以外でいまだに見かけたことがない。
こんな環境では、そりゃアジア系は『チノ』で統一されるわなとも思う。
まぁなんにせよコーラは手に入って生き返ったのだから、
貴重なキューバのド田舎をのんびり味わいながら行くとしましょうか。
キューバは地域によって異なる仕事をするように指導されているらしく、このへんはもっぱら酪農。
牧歌的風景ー。それにサトウキビが少し。
緑一色のつまらない平野でございます。
人が少ないから注目されないのはいいけどね。
そう、どこにいっても不満のタネは尽きないものだ。
不満といえば、今日特有のコイツ。
超ミニの、コバエ?
なんだこれ、めっちゃうっとおしい。
ちょっとでも立ち止まると、非常に小さなハエみたいな虫が大量に寄ってくるのだ。
ロクに落ち着いて休憩もできやしない。
あのサイズならテントのメッシュすらくぐり抜けそうだ。
あーもうなんだよこのエリア!休めないったらない。
それにしても、コーラやピザとはいわんが、道端でマンゴーすらも売ってないとは。
マンゴーの木も見かけないようだし、この辺では採れないのだろうか。
キューバも狭いようで、結構地域色があるものだな。
とりあえず、個人的には非常につまらんところだ。
つまらんがゆえに実は得しているということも多々あるのだろうが、やはりつまらんものはつまらん。
あーつまらん。