6月28日#2 ありがとう、さよなら
今回の並走男はしつこかった!!
俺と同じようなスピードでチャリを漕いできたのが面倒なので抜かせてやったら、
今度はしばらく先に止まって俺のことをジーッと見ている。
なんとか距離を置こうとしてたのに、わざわざ待ってやがるとは。
大抵の並走男は聞きたいことだけ聞いてサッサと走り去るか、
スペイン語がダメだとわかったらどっかに行ってしまうのに、今度のに限ってやたらと粘る。
キューバ人らしからぬしつこさである。
スペイン語はわからんっちゅうのに次から次へと話しかけてくるなって!
それでもしばらく併走した後に結局、
「俺はここで休んでいくよ。じゃあな!」
そう宣言して強制打ちきり。
さよなら!アリョース!
今さらだが。今回のタイヤ。
さすがに日本縦断からの使い古しはマズいだろうということで、
旅立ちの前にホームセンターで適当に買った、安いマウンテンバイク用のタイヤである。
ゴールデンボーイ!!
あまりインフラが整っていなさそうなキューバを見越してマウンテンバイク用のタイヤを選んだわけであるが、
これについてはまったくの杞憂で終わりそうである。
荒れてるとはいえメインハイウェイはずっと舗装路だもんな。
…ゴールデンボーイ!!(もう1回言いたかった)
こんなまっすぐで村もなくクルマもロクに通らない道が延々と続くんだぜ。
ほんと休憩ぐらいしか楽しみがないと言うのに、休めば休んだで今度はミクロバエにたかられる始末。
ああもう、何なのこの道。
でも、クルマがメッタに来ないおかげで、道のまんなかだって走り放題なのはいいところ。
走るだけでなく、こうやって路上にカメラを置いて撮ることすら可能だ。
本来ならこんな位置にカメラなんて怖くて置けないのだが、
ここはムダに見晴らしがいいので万一クルマが来ても遠くからわかるという寸法である。
今しかできない娯楽だ。ついでに後ろからも撮っておこう。
これ撮った後はもちろん戻ってくるんだけどな。
カメラ回収しないと。地味だ。
小さな町の入口に店があったと思ったのに、なんと俺の目の前で閉店しやがった!!
うお、17時2分か!
おのれ、こんなところだけ妙に律儀な。
諦めて進んで行くと、今度はトラックの運ちゃん達がたむろする小屋のような施設の前を通りがかる。
小屋のカウンターにはトウモロコシが置いてあるけど、これって売り物かな?
それならと思い、近くにいたシブいおっちゃんに何か飲み物はないかと聞いてみると、あっさり無いと。
やはりここは店ではないんだな。
しかしこのおっちゃん、タダモノではなかった。
「水がいるのか?何か容器はあるか?」
そんなことを聞いてくるので空の1.5リットルペットボトルを渡すと、彼は俺を連れて小屋の裏へと歩き出す。
そこには大きなタンクがあり、彼はそこのバルブを開いて豪快に水を汲んで入れてくれるのだ。
「これは飲める水だから大丈夫だ!」
みたいなことを言ってるんだと思うが、これってやっぱ雨水だよなぁ。
俺がこれを飲むと、きっと治る下痢も治らない。
よし、これは手洗いや歯磨き用としてありがたく使わせてもらおう。
これまでその用途にもちゃんとしたミネラルウォーターを使っていたのだから、それでも充分役にたつ。
シブいおっちゃんとその仲間たち。
「あ、クリスタルのトラックだ。俺このビール好きだよ!」
思わずそう口にしたが、よく見るとこのトラック、レッカーされてるじゃないか。
それでここに人が集まっていたのかな。
とにかく、ありがとう!グラシアス!
おっと、雲行きが急に怪しくなってきたぞ。
涼しいのはいいが…、降られるかな?
少し進むとうわ、やっぱりちょっと降ってきた。
でも濡れるほどじゃないし、暑さがまぎれるのはいい。
この旅では珍しい追い風気味の風が吹いている。
そんなところで、オルギンを出て初の、わりと大きな町に来た。
ここならマトモな店があるかもしれない。
まず、なにはともあれ飲み物探しだ。
飛び込みで入った店には、コーラはないがナランハはあった。
おっとどうやらオレンジのことを無意識にナランハと言ってしまうクセがついたようだ。
なんと中途半端なスペイン語脳ですこと。
3つ購入して、その場で1つ飲む。
これで手持ちはコーラ2本、オレンジ2本、ミネラルウォーター1リットルほど、そしてさっきもらった多用途水。
ちょっと重いがこれでもう今日は大丈夫だろう。
水が確保されるとテキメンに安心する。
助かったー。
店の写真を撮ろうと構えたら、ちょうどおばさんが出てきた。
俺が一輪車に乗るところを見物しようと思ったのだろう。
あれこれ会話したわけではないが、なんだか優しそうな人だったな。
さよならー。
さて、鉄橋を渡り終えると、なぜか急に路面が濡れている。
この辺は結構降ったようだな。今はもう止んでいるようでありがたい。
場所によって雨の切れ目がクッキリとあるなんて、ちょっと北海道っぽいじゃないか。
雨の心配はとりあえずなくなったようだけど、今度は陽が落ちてきた。
そろそろ寝床候補を探し始めるか。
夜中の雨に備えて慎重に選ばねばな。
バヤモまではあと、30キロほどだ。