7月1日#3 対決カチアちゃん ほか

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はいはい。
感激度の微妙なゴールを果たしてしまえば、次は本日の宿を探さないとな。
ここでもルイスリストの世話になるとしよう。
まずは海沿いで催されている詳細不明のイベント会場を通過し、
 
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わかりづらい地図と標識を頼りに、リストにあるカサの住所を探す。
途中にあった店でペソクワーノ払いのビールを買って宿で落ち着く気マンマンなのだが、
その宿の場所が見当もつかないのには困った。
 
やっぱりこの街、ムダに広い。
オマケに海から市街地へは結構キツい上り坂だ。
そうか、サンティアゴって坂の街なんだな。
いつも思うけど、地図だけだと高低差がわからないから想像と現実が全然違ったりするんだよな。
 
ルイスリストを手に呆然と坂の街をさまよっていたそんな時、なんと女の子に声をかけられる。
彼女は褐色の少女カチアちゃん。
通りすがりに軽く挨拶したら、わざわざ引き返してきたようだ。
事情を話すと一緒にカサを探してくれるという。
おや、いい子だな。
で、あらん限りのスペイン語ボキャブラリーを駆使して話をしながら歩いていると。
 
あとで街を案内してあげる、とか。
飲みに行こうよ、とか。
ついには、部屋でマッサージもしてあげる、などなど。
あー。うーん。なるほどなぁ。
 
「ごめん、嬉しいんだけど、今日は疲れたから宿でずっと寝てると思うよ。」
 
そう言うと、俺に急速に興味をなくしたらしいカチアちゃんはあっさりとサヨナラしていくのであった。
フッ。まだまだだな。
 
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坂を上ると、ちょっと平たい場所に出る。
この小奇麗な広場はわかりにくい地図によるとおそらく、セスペデス広場。
カチアちゃんその他から集めた情報によると、目的のカサはこの広場の近くだ。
 
それはいいんだがあの教会、てっぺんにある十字架のカタチがちょっと変わっている。
…アンテナ? 
 
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うわ、せっかく上ったのにまた下りるんだな。これだから坂の街は。
ところでほら、地面に線路のようなものがあるよな。
これはサンティアゴで昔使われていた鉄道の名残りなんだそうだ。
そういう意味では風情のある街だと思えなくもないが、今はただ早く宿に落ち着いてしまいたい一心である。
 
通りの名前と番号を頼りに、どうやらカサを見つけた。
呼び鈴を押すと中からダンナが出てきて家の中に招き入れてはくれるのだが、
なんとこのカサ、今日は満室らしい。
おや、またか。満室はラストゥナスに引き続き2回目だな。
 
でもこのカサ、ちょっと豪華な雰囲気ではあるが、どうしても泊まりたいという感じでもない。
ここに来るまでもカサ・パルティクラルはたくさん見つけたので、
それなら自分で気に入ったところを探すとしようかな。
 
そんなことを考えている間に、カサのダンナが代わりを探してあげようとあちこち電話をかけてくれたようだ。
あちこちかけている様子をみると、あちこち満室なのだろうか。
何かこの街が賑わうイベントでもあるのかな。さっき海岸で見たフェスティバルみたいなのを思い出す。
そのうちやっと空いているカサがみつかったようだ。
リビングでサッカー中継を観ていた息子か親戚とおぼしき兄ちゃんに連れられ、
そこからそう遠くもない別のカサへと連れて行かれる。
 
今度はさっきと違ってこじんまりとした家だ。
そこではお爺ちゃん一歩手前の痩せたエルネストと、恰幅のいい奥さんのダーニャが迎えてくれた。
ここ、なんというか、今までで最も普通の家の雰囲気を残したカサかも。
よくいえば家庭的だ。なかなか気に入った。
ダーニャは優しくて親切。
ミキサーで作って出してくれた謎のジュースがうまい。
 
エルネストはちょっとガンコ爺さん的なオーラ。
基本はいい人っぽいが、俺に何かと正しいスペイン語を話させようとするので、
こっちも適当な受け答えができずにちょいと緊張する。
前職は教師とかだと非常にしっくりくる。
 
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でも、ここはゆっくり2泊するにはいい感じの宿だと思う。
設備も必要充分で1泊25CUCなら大都市サンティアゴではまあまあじゃないかな。
 
はぁ、やっと落ち着ける。
フレームが折れてからはとにかく長い道のりだった。
とりあえず、休もう。
 
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右がハワイで左が日本のタペストリー。
でもどちらも同じところで作ったモノのようにしか見えないので、
ハワイと京都にそれぞれ行ったことがあるようにはどうしても思えない。
なんとなく聞くのもはばかられる絶妙なオブジェである。
 
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さっき買ったビールを飲んで一服。
何本かまとめて買ったので重かった。
 
ハバナからサンティアゴまで、合計1027キロ。本日47キロ。
ついに目的地、サンティアゴ・デ・クーバに着いた。
感慨といって特にないが、昨日からの60キロぐらいはとにかくしんどかったので、
もう辛い思いをしなくていいんだと思うと気が楽である。
 
それで、これからどうするか…。
ゆっくりとリゾートを満喫すればいいんだが、そんなことが俺にできるかな。
でも一輪車は壊れたし、7月10日の帰国まではいずれにせよ何かしてるしかない。
たまには滞在型の旅行をしてみたかったわけだし、いい機会には違いないんだけどな。
時間はあるんだから、ゆっくりと思案をめぐらせればいいか。
軽く酔っ払ったことだし、まずは涼しくなる夕方まで少し眠ろう。
   
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そして夕方。
暑さが和らいでいることを確認して、晩メシ探しに出動だ。
 
カサを出てすぐ、雑貨屋のような店で番をしていたおばちゃんから手招きをされる。
何か食料を買えるかもと思って寄ってみればそこにはすぐに食べられるようなものはなく、
なぜか初対面のおばちゃんから、金にまつわる愚痴のようなものを延々と聞かされるのだった。
なんなんだ。俺に愚痴って一体何がしたいんだ。
 
愚痴おばちゃんを切り抜けて、昼間も通ったセスペデス広場に行ってみれば、
今度はいかにも怪しいヤツが、
 
「ドンウォーリー、ビーハッピー!」
 
とかいいながら、続けて
 
「素敵なディナーとガールズはどうだい?」
 
などと言い始めたので、
 
「あ、そう。じゃあな。」
 
とパス。
 
観光地は面倒だなと思ったので路地裏を歩けば、お次は歯抜け男が近寄ってきて、
 
「やあフレンド!昨日も会ったね!」
 
はぁ…。
 
「やぁこんにちは。俺は、今日!ここに来たんだよ。じゃあな。」
 
怪しい連中との連戦にいきなり疲れ、
少し休もうと屋台で3ペソクワーノって書いている肉のパン挟みを買ってペソクワーノを出したら、
なんと、ペソクワーノではなくCUCだと抜かしやがるのだ。
 
アホか!こんなもんが3CUCもするか!
キューバで3週間生きてきた俺をなめんな!
観光客相手に堂々とボリやがって。
ここでCUCを出したら負けだと思い、ペソクワーノしかないと言い張って押し付けてきた。
 
なんなんだよこの街。スレてるなー。
いきなり嫌いになった。
道ゆく人々からいつもどおりチノと呼ばれる一方で、
時々はハポン(日本人)?とも聞かれる珍しい街だと思ってたけど。
なるほどね。観光客が多いせいなんだろうな。
ここに来て、キューバのイヤーな面を見てしまった。
 
サンティアゴでこれでは、ハバナもこんな感じなんだろうか。
やはり俺は田舎にいる方がいいのかもしれん。
 
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とりあえず、セスペデス広場に戻ってムカつくパン挟みを食いながら仕切り直し。
サンティアゴ観光はこの広場を基準にするとわかりやすい。
そしてつまり、この広場の周辺には観光客を騙そうとする鬱陶しい連中がひしめいているということだ。
 
今もまた、親と散歩しているらしき年端もいかない子どもが俺に向かって、
 
「チノ!チノ!」
 
と叫び続けている。
たとえ子どもであろうと、人を不快にさせるような発言は相手にしない。
 
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広場の横にある建物。
それがどうしたという感じだが、実はこの家、キューバで最も古い建築と言われているそうな。
中は博物館になっているようで、入口にはいかにも入場料を取りそうな人物が座り込んでいる。
もちろん俺はそういうところには立ち入らない。
 
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観光といっても、この街に俺の興味をひくようなものは大して無さそうだ。
それについてはサンティアゴが悪いわけではなく、俺の興味関心がそういう方向にないのが原因。
サンティアゴ観光、速攻で終わったな…。
しょうがないので食料を求めて商店街に来てみた。
坂を滑り台がわりにして遊んでいる子どもたちがシブい。さすがは坂の街。
 
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気をとり直して、今度は屋台でチキン12ペソってのを買ってみる。
ほぅ、フライドチキンだな。
値段のわりにボリュームがあってこれは良い。
店の男が、
 
「このスープもどうだ?4ペソだ。」
 
というのでじゃあそれも、と買ってみたら、5ペソ札の釣りをよこさない。
 
「4ペソだろ?」
 
と聞くと、
 
「いや5ペソだ。」
 
おまえなぁ…。
 
はぁ。
おまえら。マジメに商売しろよ。
観光客から小銭せしめて何やってんだよ。
こんなの、この街に来て初めてだよ。
今までキューバのいろんなところで、みんなちゃんと商売してたよ。
俺が外国人でも分け隔てなく接してくれたよ。
なのに、おまえらときたら…。
 
きっとおまえらは知らないんだな。
その行為が、どれほど自分自身を貶めるか。
どれほど相手に軽蔑されるか。
もういい、この街ではもうペソクワーノは使わない。
それでいいんだろ。
おまえらはこの街で、観光客を騙しながら一生セコく生きてろ。

宿に帰ってきても、イライラはおさまらない。
1000キロの長い旅を経てようやくたどり着いた目的地、サンティアゴ・デ・クーバ。
だがゴールを喜ぶどころか、今はとても気分が重い。
これなら田舎を一輪車で走ってるほうがよほどいい。
これも旅の経験かぁ。

液体チョコは冷蔵庫で冷やすとちゃんと固まっていた。