対馬旅 6月26日 上陸

#船が苦手なんだよ。船が。
 
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博多港から出るフェリー。

このターミナルからは対馬以外にも五島行き航路があるのでこれが対馬行きかどうかはわからないが、
俺が乗るのも大体このサイズだろう。
ちなみに博多港の各ターミナルからは、
対馬、五島、釜山以外にも、沖縄、直江津、さらに室蘭(!)など実に多方面に船が出ているらしい。
これは知らなかった。博多港って規模がデカいんだな。

いやぁそれにしても。
対馬まで、壱岐を経由して約5時間か…。
長い。実に長い。
酔わないか本当に不安である。

何を隠そう、対馬行きに際して最もというか唯一の懸念がコレだ。
ジェットフォイルという高速船なら2時間で行けるんだが、それだとバイクが運べないので泣く泣く却下。
もはやここまで来たらしょうがない。
ちょうど夜だし、バイクで雨の中を延々走って疲れてるし、寝てれば朝には着く!はず!
 
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さーて時間だ。
嗚呼、地上とお別れ。
覚悟を決めて雨の中、乗船。
そんな気がしてたがバイクは俺1台のみ。

博多港から壱岐を経由して対馬の厳原(いづはら)港まで、
人間と125cc以下の原付(3000円)で片道約8000円だ。
思ったよりは安いかな。
 
対馬近辺の地図

ほら、こうやって見ると、対馬って遠いんだよな。
博多からは約120キロ。でも韓国の釜山は約50キロという。
九州よりも大陸のほうが近いという特殊な立地。
それが対馬だ。
こんなことも今回、自分が行く気になるまではまるで知らなかった。

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船室は、1等、2等指定、2等の3種類。
2等はいわゆるザコ寝部屋で、1等は個室らしい。
俺はその中間の2等指定ってヤツにしてみたら、なんと他に客がいなくて個室状態。
これはラッキー!

どうやら2等指定というのは、ザコ寝以上個室未満の中ぐらいの部屋のことのようだ。
1等と2等指定と2等とはそれぞれ400円程度しか値段の差がないので、
雑音をさえぎって心安らかに目を閉じまくっていたい俺としてはこの差額は充分に価値がある。

まずはうるさいテレビを消し、携帯を充電し、雨に濡れたジャケット類をハンガーにかけ、
あとはもう、とにかく寝る。
ひたすら目を閉じる。
少しばかり不穏な揺れ。
これに耐えさえすれば、5時間後には対馬なんだ。
そうだ…。
俺がなぜ急に対馬に行くことにしたのか。
それを思い出す。

今年は海外も含めて特に行きたいところがなかった。
行きたいところがないのにムリに旅に出る必要もない。
そう考えていた時、たまたま遊びに行ったライダーハウスで出会った旅人。
彼との出会いが今回の行き先を決めた。
 
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美瑛のライダーハウス蜂の宿で出会った彼は、修行さんという。
変わった苗字なのだが、ちょうど冬のバイトをしていた時に表札で見かけた苗字でもあったので、
そこから話が弾んだように思う。
修行という苗字は、対馬に多いんだとか。
へー、対馬の苗字だったのか。
その流れで、彼が持参していた対馬の写真というのを見せてもらう。

おぉ、綺麗!!

対馬の海岸線はリアス式海岸でギザギザになっていて、
複雑に入り組んだ海岸と、無数に浮かぶ緑の小島。
そんな風景だった。

知らなかった。対馬とはこんなに美しい島なのか。
対馬といえば、韓国人の窃盗犯に盗まれて戻らない仏像の件もある。
これも知らなかったが、対馬は韓国がすぐそこに見える立地で、
韓国人の観光客が多くて日本人はあまり来ないという特殊な事情があるらしい。

そうか。
それなら、俺が行ってみよう。
いや、行ってみたい。行ってみたくなった。

そんな出会いから2週間。
目的の島まであともう一歩というところまで来ている。

対馬に着くまで、絶対に俺を起こさないでくれ!!


#いきなりこの展開


よく寝た。
快眠とは働き者のご褒美だそうだ。
俺は別に働いてはいないが、昨日はとにかくよく走ったので疲れてはいた。
目が覚めたら厳原(いづはら)港。
おかげで船の揺れもまったく気にならず、厳原港まで完全にワープ状態。
途中で壱岐に停泊したハズだが、それもまるで気がつかなかった。

寝起きでボンヤリしていると、「もう出られますよ!」と退船を促される始末。
厳原に着いたということは、いま午前4時40分か。
実はこの早朝に着く便に限って、希望すれば朝7時まで船内で寝ていられるとのこと。
朝の4時台に離島の町に着いてもなんにもすることないよってことだろうな。

だが俺はバイクだ。
どこでも走って行けるし、あえて苦手な船に長居することもないってことで、
7時までの延長はナシと伝えておいたのだ。
それじゃあ、さっそく対馬に向けて、クロスカブ発進!

…って、外は雨かよ!!
しかも昨夜よりもごっつい降ってる!!

今朝には止んでいる予報だったので完全に油断していた。
これはもう走り回るどころではない。
まずはフェリーターミナルに駆け込んで雨をしのがなければ!

厳原港のフェリーターミナルの駐輪場(なんと屋根つき)にバイクを停め、
急いで建物の中に走る。
ターミナル内は少し休めそうなスペースがある。
ここで8時ぐらいまで休ませてもらうか…。

対馬にバイクを持ち込むのに際して、俺が最も気になっていたのは、バイクの保管場所である。
バイクで走り回るだけなら保管する必要もないわけだが、
それでは旅がすぐに終わってしまっておもしろくない。
最近の俺の傾向からしても、やはりメインは人力でなくては!

というわけで、バイクの保管場所については、
対馬出身の修行さんと何度かメールで連絡を取り合ってよい方法を模索していた。
まず、港に置ける場所があればそれが一番簡単だ。

さっき実際に見たターミナルの駐輪場は屋根つきだったので俺としては特に問題ない。
これならバイクカバーをかぶせて駐輪場の柱にロックしておけば、
離れている日数にもよるがまあなんとかなるレベルだろう。
新車とはいえ盗難保険も入ってるしな。
ただここに来るまでそんな状況とは知らなかったし、
修行さんによると港は必ずしも安全ではないという。
こういう時は、地元の人の意見に従うべきだろう。

それじゃあ、初日と最終日はどこか宿に泊まって、その間バイクを預かってもらう話でもつけるか。
そんなプランも考えていたのだが。
なんと、修行さんの厚意で実家のガレージにバイクを置かせてもらえるという話になった。
これはありがたい!
先日知り合ったばかりで、実家の方々には会ったこともないという状況でお世話になるのも気が引けたが、
買って間もないバイクを安心して置いておけると思うと正直助かる。
ここは素直に厚意に甘えることにしたのだ。

まだ場所がわからない実家のご家族には、夜が明けて8時頃になったら電話しますと伝えてある。
あとはこのターミナルで雨宿りしつつ、朝になるのを待つのみだ。
…そう思っていた矢先。
おもむろに、女性に声をかけられた。
「修行です。」と名乗られる。
あ、もしかして、修行さんのお母さん!?

驚いたことに、このひどい雨を心配して、まだ5時という早朝にもかかわらず俺を迎えに来てくださったのだ。
まずはとにかく家に、というお誘いを受け、
バイクは港の駐輪場に置いたまま、お父さんの運転するクルマに乗って、厳原(いづはら)の町へ。

降りしきる雨のなか、初めて見る対馬の町。
厳原はおそらく対馬で一番大きな町だが、メインストリートとおぼしき道も片道1車線であまり広くはない。
あちこちで道路工事をしているようだ。

「道が狭いでしょう。今こうやって、拡幅工事をしてるんですよ。」

柔らかい物腰のお父さんから説明を受けつつ、クルマはすぐに修行さんのお宅に着いた。
バイクを置かせてもらうだけで充分ありがたいので家にお邪魔する気はなかったのだが、
この予想外の状況では、もうご厚意に甘えたおすしかない。
お宅に上げていただき、朝ごはんをご馳走になり、
 
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ついには寝床まで用意していただいた。
雨は昼には止むとのことで、それまで休んでくださいと。

うわー、初対面の方々にこれほどお世話になってしまうとは…。
申し訳ない気持ちでいっぱいだが、ここまできて変に遠慮してもしょうがない。
ここは思い切って休ませてもらうとしよう。

船の中で5時間寝たのでそんなに疲れてもいないと思っていたのに、
なんと人様の家で昼前までバッチリ熟睡してしまった。
これはおそらく、ご両親の温和な人柄と、布団を敷いてもらった部屋の畳の匂いのせいだろう。

この部屋はなぜか、大分県のかつて祖父母が住んでいた家と同じ匂いがする。
九州の古い家はどこもこういう匂いがするのだろうか?
とにかくこの匂いは、俺の記憶と相性がいい。とても落ち着く。初めて来た人の家なのに。
 
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昼すぎ。
予報どおり、見事に雨が上がった!
ふたたびクルマで港まで送ってもらってバイクを取りに行き、ガレージに停めさせていただく。
よっしゃ、修行さんご夫妻に見送られて、ようやく旅のスタートだ。

こんな物体に乗って旅ができるもんなのか!?というご両親の心配と驚きが痛いほど感じられるが、
なんといってもこれで旅ができるかどうかは俺にもわからない。
なんせ俺はこの島に、アルティメットホイールの練習をしに来たのだ。

一輪車に乗れたばかりの頃、練習のつもりで行ったアイスランド一周2000キロの旅を思い出す。
あれで別に飛躍的に上手にはならなかったのだが、それでも何かを掴んで帰ってきたような気がする。
この対馬でも、その何かが起こるのではないか。
そういう期待はあるのだ。

それでは、ちょっと行ってきます!!