対馬旅 6月30日 その2

 
#ちょっとドキドキ、下島へ。

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ようやく出発できるまで気分が盛り上がってきたのは、昼を過ぎて夕方近くの時間帯であった。

このまままっすぐ進めば厳原に戻れるけど、俺は右に曲がる。
いよいよ下島の旅のスタートだ。

This is 下島

対馬の南側である下島は、上島に比べるとだいぶ小さい。半分ぐらいか。
先に上島を一周してきた俺にとっては余裕のようにも思えるが、地図をよく見るとだんだん不安になる。
国道を離れて地方道24号線という道に変わるこのルートは、どこを見てもやたらとグネグネしているのだ。
これはもちろん道のりが険しいことを意味している。
そして対馬の場合、この道が峠越えの連発であろうことはもはや疑う余地もない。

一見小さい下島、今のペースで歩いて一体どれぐらいで一周できるのだろう。
まるで予想がつかない。
 
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町の賑わいを感じていたのも鶏知の市街まで。
そこを抜けるともう思ったとおりの下島ツアーが始まっている。

道はやはり、対馬の交通のメインである上島ほどは整備されていないようだ。
自転車の人々も下島の西海岸にまではそれほど来ないのかもしれない。
 
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荒々しくも雄大な岩肌でできた山々。
このあたりは大きな岩が多い。
これまで歩いてきた対馬の風景とは少し違うな。

地方道に入ってから、クルマの数もグッと減った。
静かなのはいいんだが、こんなところにある下島の集落は一体どんな感じなのだろう。
集落ごとに自販機と、たまにでいいから食料を買えると嬉しい。
 
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田んぼの中にも大きな岩。
しかもおそらく、ご神体として祀っている。
大昔からこの地に鎮座する由緒ある大岩なのだろうか。
そして大昔から「正直、田植えしにくいよなぁこの岩。」と代々思われ続けているのだろうか。
これもまた歴史か。
 
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箕形と書いてミカタと読む漁港。
ここでそろそろ夕暮れ。

下島に来るという目的は果たしたから今日はもうどこで止まってもいいのだが、
問題は野宿に適した場所があるかどうかなのだよ。
毎日毎日、ここからが結構長い。
 
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自販機は心と身体のオアシス。
俺にとっての対馬とは、まず集落。上り。トンネル。下り。集落、そして自販機1つ。
この繰り返しの過程にほかならないような気がする。

しかし、静かだ。
ここにあるのは、鳥の声と風の音だけ。

夕焼けはいつも人を不思議な気持ちにさせる。
この現象になんの意味があるのだろう、と旅の間はよく考える。
でも今は、この現象のおかげで少し気分がいい。
とりあえずもうちょい進んでみるかという気になった。
 
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次の集落であった吹崎(ふくざき)というところも通過してしまう。
もう止まっても問題ない時間で、ここには民宿もあったのだが。

昼間はあんなに足が痛かったのに、今はそこまで苦痛ではない。
ショッピングエリアで長々と休んだのがよかったのか。よくわからない。
自分の身体のことは熟知しているようでいて、実は知らないことだらけだ。
なんであんなに痛いのかも、なんで今はスタスタ歩けるのかもわからない。
自分というのは、案外全部じゃなくて、身体のごく一部なんだな。

#夜の人

そろそろ止まってもいいかな、と思ったのがさっきの吹崎という集落。
次はそこから海沿いの峠を越えて5キロぐらいのところにある、今里。
すでにかなり暗いし、いい加減この辺でいいだろう。

ラッキーなことに、集落を入ってすぐのところにまたもやドア付き箱型バス停が!
いやー素晴らしいなぁ対馬。
2日続けて快適野宿かよーと思ってドアを開けようとしたその瞬間。

中で爺さんが酒飲んでる!!

これは予想外。まったくの予想外。
一瞬しか見ていないが、あれはほぼ間違いなく『バス停内で缶ビールを飲むお爺さま』であった。
なんであんなとこで飲んでるんだろう。
何か家に居づらい事情でもあったのか。それとも一人で気楽にやりたかったのか。
とにかく、これでは寝るどころの話ではない。

はあ、しょうがない。この際だ、次の集落まで行くか!
次って言うとちょっっと長そうなんだけどな。
ハハハ、苦笑と驚きと本笑いと足の痛みがないまぜになった、一種独特な気分だ。
 
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すっかり夜。
なんだかんだ言って毎日のように夜中まで歩いてるよなぁ。
でも大丈夫!
こんなこともあろうかと、昼間の鶏知のホームセンターで自転車用のLEDライトを買っておいたのだ。
そいつをザックに付けて点滅させていれば、クルマに対するアピール度はまあまあだろう。
この辺ってほとんどクルマ通らないけどな。

ところで、写真は人の気配のまるでない夜中のトンネルである。
どういうわけか、今夜はこんなトンネルも怖く感じない。
以前の俺ならこのクラスのトンネルなんて怖くてしょうがなかったのに。なぜだろう。
勢いとかテンションとかの話だけではないような気がする。

トンネルを抜けたあとは、2日前の夜と同じような、細いグネグネまっくら山道だ。
でもやっぱり大して怖さを感じない。
おかしいな。何かをキッカケにして急に図太くなったのか?
イマイチ自覚がないだけに不思議だ。
こうやってちょっとずつ、人は変わっていくのだろうか。

対馬に来てもう何本目か数える気もおきない峠を乗り越えて、阿連(あれ)の集落へ。
ここのバス停は…あらあ、屋根はあるが、見慣れた箱型に比べればちょっと今ひとつかも。
ベンチが細くて短いから地面で寝るしかないな。
でも文句を言える筋合いじゃないし、さすがにこれ以上歩く気にもならない。足がもうダメだー。
今日も結局、よく歩いてしまった。

ひとたび地下足袋を脱いで横になってしまうと、もう朝まで起き上がるのが億劫になる。
近くの自販機まで行って夜中に喉の渇きで目覚めた時用の水を買って戻り、コンクリの上に寝転ぶ。
ああ、冷えたコンクリートが気持ちいい。
でも身体の熱がひいて深夜になれば、今度はきっと寒くなる。
防寒用のグッズを手元に置き、ちょっとムリのある体勢で、今日はおやすみ、と。