対馬旅 7月4日 その2

#来た者はいずれ帰る

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乗船ー。

船が動き出したら、俺はもう完全に目を閉ざして部屋から一歩も出ない。
対馬の風景を目に焼きつけておくなら今のうちだ。

海を見て、厳原の町並みを眺め、ふとフェリーターミナルに視線を移すと。

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おお!?
あれはもしや、修行さんのお母さん。
わざわざ見送りに来てくださったのか。

おそらくは、お父さんの運転で夫婦そろって来てくれたのだろう。
そう、俺が上陸したあの雨の朝と同じように。
直前に出会った息子さんの紹介でフラッと現れた俺のような人間のために、まさかここまで。
やばい、泣けてくるな。

さようなら!

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対馬を去る。

ほんの数週間前まで、何も知らない島だった。
でも今は違う。
これまで旅をしてきた地球上のあちこちと同じように、ここはもう俺にとって特別な島なのだ。

この島に来て、本当に良かった。

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さて船内。
行きと同じく帰りも2等指定というミドルクラスのお部屋。またしても1人。
今回は手前に何やらビニールが敷いてあるが、
これは真上にあるエアコンが故障していて時折水が降ってくるためらしい。
船員さんに気をつけてと散々言われるも、そんなまさかと思っていたが、
忘れた頃にマジでドバッと水が降ってきて感動した。

帰りの船は思ったよりも揺れないようでありがたい。
でもだからといって俺が部屋に閉じこもってひたすら目を閉じていることに変わりはない。
乗船中の私には決して話しかけないように。

前回は爆睡しているうちに厳原まで着いたものだが、今回はちゃんと途中の壱岐の港を拝むこともできた。
フェリーの料金表をよく見ると、対馬から博多に直行するのではなく、
対馬と壱岐にそれぞれ上陸してもさほど金額が変わらないことに気づく。
両方の島を一度に楽しみたい人や、俺みたいに長時間のフェリーが苦手な人は、
対馬と壱岐をハシゴしてみるのもアリかもしれない。

ちなみにこの壱岐という島に俺は上陸していないわけだが、
修行さん一家などから聞いたところによると、対馬と壱岐は隣どうしのわりにはずいぶん違うらしい。
壱岐は対馬のように激しいアップダウンもなく、メロンもよく育ち馬もいるそうだ。
日本の観光客も壱岐までは来るのにね…という話も何度か聞いた。
なんだか対馬の人が持つ壱岐に対する複雑な感情を垣間見てしまったような気分だ。
また面積が対馬よりは小さいので、自転車で日帰り一周なども余裕。
博多港からは釣り人もたくさんやって来るらしい。

壱岐・対馬。
日本人があまり観光に行かない日本の島。
この魅力を少しでも紹介できたら嬉しいと思う。

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もっぱら2等指定の船室でシーンとし続けて約5時間、やっと博多港に着いた。
誰も何も言ってくれないので適当なタイミングで車両甲板に下りてくると、バイクはやっぱり俺だけだった。
対馬に渡るバイクが行きも帰りも1台とは寂しいねぇ。
でも1台だけなせいか、乗るのも下りるのも俺が最初という異例の好待遇。

荷造りを再チェックしながらぼんやりしてると、目前のゲートがおもむろに開いてビビる。
そしてゲートが港に着岸すると同時に、一斉に交差するスタッフの皆さん!
ゾロゾロと下りていく船員たち、そしてゾロゾロと入ってくる大勢の清掃スタッフ。
大型フェリーに客として乗っている時にはなかなか見られないこの光景、なんだか圧巻である。

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降り立った夜の博多。
おぉ、予報に反して雨が降っていない。これは助かる。

そして、約10日ぶりの都会は、とにかく明るい!コンビニも掃いて捨てて腐るほどある!
対馬で育った子どもが初めてこの光景を見る時は驚くんだろうなーなんて考えてしまう。

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あ、そういえば博多にいるんだった、と急に気がついたので、通りすがりのラーメン屋に入ってみる。
博多ラーメンなのに黒いのが気になるが、そこそこうまい。
でも味付けが濃いな。
ああ、俺は、ろくべえのほうが好みだ…。

それはそれとして、このラーメン屋はライオンキングと何か関係でもあるのだろうか。

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あっさりトンネルを抜けて、山口県。
あとはもう帰るだけだ。
今夜は眠くなるまで走って、たぶん明日には神戸に着くだろう。

本来は、慣らしがてら九州も回ってクロスカブで日本縦断!みたいなこともうっすら考えていたのだが、
対馬の旅が思いのほか内容が濃く、これだけでもうすっかり満足してしまった。
今は早く帰って、対馬であったことを忘れないうちに記録しておきたいという気持ちが強い。

今夜はどこまで走れるかな…。