いつもどおりの通勤なんてクリープを入れない緑茶のようなもの
メインマシンたるクロスカブが修理中の今、
先日もらわれてきたばかりのスズキTS50、愛称ハスラー50のヤツが、ヤケに吠えるんだ。
50cc7.2馬力の、おそるべき底力。
はじめは、ちょっとおもしろいオモチャがきたなぁ、ぐらいの気分だったよ。
でも正直ナメてたゴメンあやまる。
こいつは常にヤル気だ。
試しにしばらくダートを走ってみてわかった。
こいつはナンチャッテオフロードタイプの原付なんかではない。
スズキによってしっかりと造り込まれたオフロードバイクだ。
のっぺり走っていてはすぐにグズる。お前の腕はそんなもんかと乗り手を煽る。
原付のくせに。
前21、後18インチタイヤというフルサイズの車体に、2ストローク50ccの非力なエンジンを搭載。
どう考えてもミスマッチな外観は、アクセルフルオープンで乗り手の想像を軽やかに裏切る。
まだ換えて間もないであろうオフロード寄りのタイヤはダートでほどよくグリップし、
長らく忘れていた悪路の走行感覚を少しずつ甦らせてくれる。
高らかに鳴り響く2ストロークの音階を限界まで高めれば、
そこにはもう原付を越えたステージが見え隠れしている。
ハスラー50で北海道の広大なダートを駆け抜ける時、
30年前の小排気量バイクをいたわる気持ちなど、心のどこにもない。
おかげで職場の往復中、ついついダートを探してしまう。
ただの通勤なのに毎日がすっかり遠回りだ。
ほら、また知らない林道に入り込んでしまった。
この町はその気になれば無数にダートがあって、そしてありすぎて興味を失う。
オールラウンダーのカブではそれ以上の気分にはなかなかならないが、
このハスラー50は常に俺を土のある方角へと誘ってくるのが困りものだ。
そして、気持ちのいい道がまたひとつ。
スズキだから、整備性がイマイチ、設計思想が謎、でもスピードは出るんでしょ?
そんな偏見は、どうやらバッチリその通りだったようだ。
そしてそのマシンが俺を魅了している。
事実だ。
乗れるうちに乗っておくのがバイク。
乗らないバイク乗りなど、羽根のないジュディオングみたいなもの。
秋の青空を目の前にして、グダグダ考え込んでいるヒマなどない。