4月18日#1 大都会からマウンテン

 
幸いなことに、アメリカ初野宿の場所は誰にもみつからなかったようだ。
あまり詳しくは書けないが、なかなかアヴァンギャルドな位置なのでそうそう見つかるまいよ。
 
イメージ 1
 
まだ暗いうちに移動開始。
この時間ならクルマも少なく、快適なユニサイクリングができる。
 
そう思って少々飛ばしていたら、なんとコケた!
勢いが出ていたのでハデに前に吹っ飛んで転がる。
あぶねー!!
ケガの程度やユニの損傷を確認する前に、まずは路肩に退避だ。
 
うーむ、痛いが、ケガは大したことはない。一輪車も無事。
どうやら路面の小さなコブを見逃していたようだ。
暗いとちょっとしたギャップが見えにくくなるからな。完全に油断していた。
クルマの少ない時間帯でよかったよ。
 
アメリカ初転倒にショックは受けたが、気を取り直して前進再開。
朝になるとクルマも増え始め、昨日と同じペースに戻る。
また歩きばかりになってしんどいが、やむをえまい。
ロサンゼルスはもうすぐ抜けられるだろうしな。
 
そうだよなー、そうだった。
旅の始めってのは毎回大抵、後悔するんだよ。
なんでまたこんなしんどいことを始めたのかって。
でも経験上、一週間もすれば身体ができてきて、旅を続けていける心身の状態になる。
今はそこまでの道のりを乗り越えて行くしかないのだ。
 
イメージ 2
 
これまで単調だった移動に、やっと変化が出た。
エティワンダという町のあたりから北上し、山越えルートに入る。
ケイジョンブルバードという道だ。この道もルート66の一部。
この道に入って、これまで都会だった雰囲気が一変。
ようやくロサンゼルスは脱出できたということだろう。
あー、やっとか!
 
イメージ 3
 
見よこの直線!
山越えなのでアップダウンはしんどいが、信号続きの都会を抜けられたことは嬉しい。
 
たまにある小さな町ものんびりとした様子だ。
ベビーカーを押しながらジョギングする若いお母さんや、愉快なおじさん達と立ち話をしつつ進む。
そんななか、一台のクルマがゆっくりと俺の後をつけてくる。
明らかに怪しい。
クルマはやがて俺の少し前で止まり、中から出てきたのは、なんと全身下着姿の女性。
…いや、男だ。
なんだか満面の笑みでこちらに何か言ってくるが、うわぁここはスルーだ、スルーに限る!
適当に笑顔だけ残してスーパーダッシュ!!
こういう時の俺の走りは、我ながら速い。
 
ハァ、ハァ…。
大都会をやっと出てきたと思ったら、今度はまた変なのが沸いてきたな。気をつけよう。
そんなことを考えていたら、またもやクルマが近づいてくるのだ。
ええー、またかよ!
しかし今度は、「大丈夫か?乗せてってあげようか?」という親切な申し出であった。
おお、アメリカに来て初めてクルマに乗って行くかと言われたよ。
今は元気なので丁寧にお断りするが、本当にしんどい時にはお願いしよう。
 
イメージ 4
 
アメリカの貨物列車。
これがまた、凄まじく長い。
本気で1キロぐらいあるんじゃないかというぐらい、コンテナが延々と続く。
ゆっくりとしたスピードで豪快な量の荷物を運び続ける列車。
アメリカだねぇ。
 
イメージ 5
 
あ、あれ?
ここまで調子よく続いていたケイジョンブルバード、途中で切れてやがる。
ここからはインターステート(フリーウェイとも言う。高速道路のこと)15号を走るか、
このワケのわからんダートに突入するしかないということか?
 
しかしフリーウェイの入口には、小型バイク、歩行者は禁止と書いてある。
自転車がダメとは書いていないから自転車は例外的に走っていい区間なのかもしれないが、よくわからない。
だが高速道路の路肩を一輪車で走るのは怖いので、そうなるとこのダートを行くしかないか。
 
イメージ 6
 
遠くに見える快適そうなフリーウェイを横目に、ダート突入。
アメリカまで来てダートかよーと半笑いで進み始めたが、だんだん笑えなくなってきた。
なんだこのダート、いくら進んでも全然終わらないぞ。
これはおかしい。ちゃんと道は合っているのか!?
 
イメージ 7
 
ぐああぁぁーー。
どこまで歩いてもひたすらダートの登りばかり。
ダートで登りじゃ一輪車になど乗れるわけもない。これはつらい。もはや登山だ。
 
つらいのはともかくとして、この道に出口があるかどうかが問題だ。
スマホのGPSやマップを駆使して調べたらわかった。
この道、5.5マイルも続くぞ。9キロ!
普通の道ならまだしも、山道で9キロか。それは厳しい。
夜までに脱出できるだろうか?できなきゃここで野宿になるな。
 
イメージ 8
 
峠を越えたようでもあいかわらずアップダウンは続く。
まるで進んでる気がしないし、疲れるばかりだ。
そう言いつつもアメリカ初の走行動画を撮ってみる余裕はあったりする。
ふーん、俺はこんな感じで走ってるのか。
 
さらなる登山の末、ようやく何か出口のようなものを見つけたと思ったら、
それはただの広場のようなところだった。山の頂上によくある展望広場のような場所。
ひょっとして行き止まり?
まさか俺、道を間違えたのか?
 
一瞬暗ーい気分になったが、遠く広場の中央あたりに人影らしきものが見えることに気がついた。
おお、人間だ。
まずはとにかく道を尋ねてみるか。
 
俺は人影に向かってゆっくりと近づいてゆく。