4月18日#2 スコット
歩き続けた山道の先にあった広場。
そこに佇む人間は2人。どうやらオフロードバイクのライダーっぽい。
おおっ、趣味が合いそうだなおい!
まさに趣味が合った。
ホンダXR650に乗るスコット(右)と、新型CRF450Xを駆るウェイナー(左)の2人組。
俺もXRに乗ってたよー!と話しかければ、そこはもうバイク仲間。
趣味が同じだと言葉の壁なんか気にならない。
彼らの話によると、山道の出口はすぐそこだった。もうほとんど終わりだったんだな。
俺の一輪車旅にも大変興味を持ってくれた2人といろいろ喋っているうちに、
「毎日何を食べてるんだ?」という話に。
「これ。」とウェストバッグから俺の旅の定番たるスナック菓子を取り出す。
明らかに呆れている2人。
そしてスコットがおもむろに言う。
「そんなものばかりじゃダメだ!よし、今日はピザをご馳走してあげよう!」
え、スナック菓子がダメでピザはいいのか?
よくわからないが、スコットはどこかでピザを調達してくれるつもりらしい。
山を降りた先にあるというガスステーションで待ち合わせることにして、2人と一旦別れる。
山の出口は本当にすぐそこにあった。
たった数時間なのだが久々に思える舗装路を、ユニで激走。
今まで歩き続けだったストレスからか、やたらとペースが速い。
到ちゃーく。
妙に雰囲気のある西部劇に出てきそうなガスステーション兼売店。
スコット達には2時間ぐらいで着くだろうと言ったが、なんと15分で着いてしまった。
山道を歩いてばかりで一輪車のスピード感をすっかり忘れていたようだ。
まあいい、ここでちょっと買い物でもしつつのんびりと待とう。
どっかから出現した、これまた西部劇に出てそうな客のおっちゃん。
果敢に36インチに挑むが乗れず。そう簡単に乗れてたまるか。
「いつも何を食ってるんだ?」と聞かれる。またか。
みなさん俺の野宿旅スタイルやら痩せた身体やらを見て、まず食生活が気になるものらしい。
さっきと同じくスナック菓子を見せて「これだよ。」とやると、
「そんなんじゃダメだ!肉を食わないと!ステーキだよ!!」
そう力説し始める彼。
この調子じゃ今度はステーキまでご馳走されそうな流れだったので、
その話題にはあまり突っ込まないようにしておいた。
ふぅ、今日はなんだかんだで70キロは進んだか。
この時間からはもう走らないだろう。疲れたよほんと。
待ち合わせの時間が過ぎて、来ないのかなと思っていたスコットとウェイナーが、ちゃんと来てくれた。
巨大なピザを携えてな!!
しかもこれ、なんとスコットの手作り。ええ、わざわざ焼いてきてくれたの!?
今日はもう走らないので、うまいピザと一緒にありがたく缶ビールもいただく。
彼らが大好きな長ーい缶のビールは、アメリカではトールボーイと呼ばれて親しまれているそうだ。
その後、なぜか車内からヘビを持ち出してくるスコット。おいおいおい。
でもこれはゴーファースネークと言う種類で、無毒なんだと。
自宅で奥さんが見つけたのを捕まえたそうだ。
スコット…蛇使いだったのか…。
そしてそれを俺に持たせるのか…。
俺まで蛇使い見習いにされてしまった。
逃げようとする蛇をドジョウすくいのように手でたぐっていくのが案外難しい。
ウェイナーも余裕で蛇使い。
なんだよこの辺の住人はみんな蛇使いなのか?
ちなみにこの蛇、スコットは山へと逃がすために捕まえたそうだ。
彼はそうやって蛇を見つけるたびに山に戻してあげるんだと。
ピザをたっぷりとご馳走になり、さてこの後はどこかで適当にキャンプ…と思っていたが、
どうやらスコットは俺を自分の家に泊めてくれるつもりでいたようだ。
それは嬉しい。ありがたくお世話になろうと思う。
というわけで、スコットのクルマに乗せてもらい、彼の家へと移動。
スコット宅の庭にて。なぜか石を鑑賞。
これ、見た目はただの石なのだが、特殊な光線を当てるとこのようにカラフルな色で光る。
原理はよくわからないながらおもしろく、美しい。
こういう石をスコットは山に入ってはみつけてくるのだそうだ。変わった趣味である。
おかげで彼の庭には固有の色を放つ石があちこちに散らばっている。
ところで、今日は偶然にもウェイナーの兄弟の誕生日ということで、その誕生パーティに誘われてしまった。
うーん、せっかく知り合った人の兄弟の誕生日なのだから、おめでとうぐらいは言ってあげたいよな。
ということで、またしてもスコットのクルマに乗せられて、今度はウェイナーの兄弟、ジェームズの家に。
気のいいジェームズは、突然現れた謎の東洋人にハッピーバースデーとお祝いされて素直に喜んでくれた。
そしてパーティに少しだけ参加。
家にはジェームズの両親や恋人、友人などが集まって、まさにアメリカンホームパーティって感じ。
宴会が苦手な俺にはちょっとした修行だったが雰囲気が良く、おもしろかったよ。
そしてスコットのお宅へ帰還し、部屋で休ませてもらう。
どうやら今は家にいない娘さんの部屋のようだ。
うむ。
海外に来るたびに、毎回一度は娘さんのベッドで寝ているような気がしてならない。