4月19日#1 ワイルドアメリカ
スコット宅に泊めてもらった翌朝。
お約束で36インチにトライしてみるスコット。
それにしてもデカいクルマだな。しかしこれがアメリカじゃ普通に見かける標準的なサイズだ。
素敵なスコット邸と夫婦。
クルマで来たのでこの家が地図上のどのあたりにあるのかよくわからないのだが、
とにかくこの周辺のお宅はどれも土地と家がやたらと広いのは確かだ。
たとえば豪邸が並んでる一画があるなーと思ったら、
「これらはただのガレージで、住居は別にあるんだよ。」なんて聞いて驚くというぐらい。
土地も安いんだろうけど、比較的裕福な人たちが住むエリアであることも間違いないだろう。
この家を出発する間際、どういうわけか、夫婦は俺に携帯電話をプレゼントしてくれた。
プリペイド型の簡易携帯で、電話とショートメールが使える代物らしい。
これと言って用途は思いつかないものの、緊急用に電話が使えるのはいいかもしれない。
きっと俺のスマホが日本専用でWIFI頼みというところを心配してくれたんだな。
どうしても持っていけと強く勧めてくれるので、ありがたくいただいておこう。
さて、一輪車旅再開の前に、スコットはどうやら俺をどこかに連れて行きたいようである。
友人がやっている動物園のようなところだと言うが…。
またしてもスコットカーに乗り、どこにいるんだかさっぱりわからないダートを走ること数十分。
こんなトコにやって来た。リクガメがお出迎え。
話どおり、小さな動物園という感じ。
アメリカに生息しているものやいないもの、いろんな動物がいるっぽい。
屋内のヘビコーナーでは、各種デンジャラススネークがそろい踏み。
その中からアメリカにいるものをピックアップして、それぞれの特徴を詳しく説明してくれるスコット。
なるほど、アメリカの危険な動物に関する知識をつけさせようと思って俺を連れてきてくれたのか。
砂漠の砂に潜むサイドワインダーなんか特に怖いなぁ。サソリもいるらしいし。
野宿する時は相当気をつけよう。
ちなみにアメリカで蛇に咬まれたら、とにかく救急(911)に電話してヘリを呼べとのこと。
そういえばロサンゼルスで会ったランスも、
一輪車で走る時は蛇に咬まれた時用に毒を吸い出す注射器のようなものを携帯していた。
かなり本気で危険性があるらしい。
この存在感のある女性がスコットの友人で、ここの管理人のような立場の人。
やたら陽気で気さくな彼女、おもむろに俺を一般客禁止のエリア内に呼び込むのだ。
「今からこのトラに肉をあげてもらうわよ!この線から前には絶対に近づかないでね!」
えええええーーーー。
いや、もう、怖いよ!
生肉を先端に付けた棒をおそるおそる檻の中に突っ込み、トラさんに食べていただく儀式。
それをニヤニヤしながら撮影するスコット。
なんでこんなことに。
「次はクロヒョウよ!ヒョウはできるだけ高いところからエサをあげるのよ!」
は、はいーーー。
なかなかできない貴重な体験なんだとは思うが、
まさか一輪車の旅の途中でトラとヒョウに生肉を提供するハメになるとは…。
実はワニもいる。
「ワニはこの辺にはいないが、フロリダなどの南部に行けばいるだろうな。」
わかった。
南部では川の近くで絶対に野宿しないことを誓います。
アメリカの危険動物を知るという大変有意義な実習を終え、ふたたびクルマに乗る。
「ニードルズまで送ってあげよう!」
そう言ってくれるスコットだが、ニードルズってこれから挑もうとしているモハベ砂漠の終点じゃないか。
最初にしておそらく最大の難関であろうモハベ砂漠をクルマで越えてしまってどうするよ。
「いや、それじゃ意味がない。モハベ砂漠手前にあるバーストーまででいいよ!」
そう言った後で、地図を確認したらこの辺からバーストーまで60kmぐらいはあることに気づいた。
うわ、かなりのワープだよ。
まーいっかー。
フリーウェイ15号をひた走るスコットカー。
100キロ超のスピードでクルマもオートバイもバンバン飛ばしている。
彼もまたライダーではあるが、「フリーウェイをバイクで走るなんて危険なことは絶対にやらない」と言う。
このフリーウェイの路肩を自転車(もしくは一輪車)で走っていいのかどうかはスコットにもよくわからないらしい。
州によって法律が違うし、同じカリフォルニアでも区間によって違うかもしれないとのこと。
この点については、日本で事前に調べた時にも最後までよくわからなかった。
アメリカを走ったチャリダーのブログなどを見ても、
部分的にOKなところは走ったという話から、警察に怒られてもフリーウェイを突き抜けたという話まで各種ある。
俺としては実際に見てから方向性を決めようと考えていたが、
日本の高速よりも速いこのスピードの路肩を一輪車で走るのはやはり怖いと感じる。
どうしようもない時以外はできるだけ他の道を走ることにしよう。
バーストーでフリーウェイを降り、ルート66に復帰。
ここからまたユニサイクルツーリングの再開だ。
山の中でたまたま出会っただけのスコットには本当にお世話になってしまった。
食事をご馳走になり、宿泊し、携帯電話をもらい、危険な動物に関する知識までつけてもらった。
さらにはお金もくれようとしたが、そこはお断りする。
予想外のトラブルに見舞われた時には人に助けを求めることもあるだろう。
しかし、一人だけで旅を貫徹するために、最低限必要な準備はしてきたつもりだ。
ともかく、ありがとうスコット。
おかげでこれから思い切って砂漠越えに挑むことができるよ。
では、行ってきます!